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モリゼミ オープンレクチャーVol.3 オランダから学ぶ気候変動との付き合い方~私たちは地球のために何ができるのか~

オランダ?

オープンレク第3弾は、"オランダ"
テーマは、「オランダから学ぶ気候変動との付き合い方~私たちは地球のために何ができるのか~」
ベースが、環境屋の私としては、実に刺激的なタイトル。

まずは、概要から、オランダについては、多様性をテーマとしてゼミの研究が進んでいるけど、無宗教その他がなんと53.8%!!そして、イスラム、ヒンズー、仏教も一定数。移民を積極的に受けれている国とはいえ、凄い数字、そりゃ、文化が多様なはずだ。

オランダといえば、風車。これは、狭い国土を干拓によって広げてきた事の歴史の象徴でもある(排水のために利用)。国土の約30%が海面下、つまり、この土地は、自分たちで広げてきた、つくり上げた土地。
「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」との名言もある。
当然、土木技術も発達していて、明治後の日本でもその技術は大いに活かされた。土木をかじった人なら聞いたことがあるかもしれないが、内務省勅任官技術顧問として活躍した”ヨハニス・デ・レーケ”もその一人

それと、もう一つ余談だが、私的には、仕事で関わったこともあり、オランダといえば、”ジーンズ” 一人で7本は持っているとも言われるくらいオランダはジーンズ大国、世界的なジーンズの展示会である”KINGPINS SHOW”は、アムステルダムで開かれている。

話を戻すと、やはり、オランダにとって、干拓の影響は大きい。単に土木的な面だけでなく、その維持保全のためには、あらゆる住民の協力が不可欠なことから、階層を越えた協力や話し合いを重視する気風が生まれ、オランダ独自の政治・経済システムに進化。干拓(ボルダー)の名前を取って、「ボルダーシステム」と呼ばれている。この独自のシステムが、環境政策を市民の間に浸透させ、円滑に進めている容易かもしれない。

サーキュラーエコノミー?

ゼミでは、10の事例を紹介されたが、強く印象に残ったキーワードは、”サーキュラーエコノミー”

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのこと

そのための取り組みをオランダ3大銀行の一つABN AMRO(エービーエヌ・アムロ)が、行っている。本社前のCIRCLは、リサイクルされた木材やコンクリート、さらには履かれなくなったジーンズを素材とした断熱材まで多用されるだけでなく、解体も前提して建造されたサーキュラーエコノミーな複合施設。市民と銀行との距離を縮め、もっと自由に出入りできる場所を、ということで作られたらしい。オシャレな建物内には会議室やイベントホールの他、カフェやレストラン、エシカル商品のセレクトショップまで併設されて、廃材を利用したアートも多数展示されている。こんな場所を市民が気軽に利用できるのだ。そりゃ、潜在意識にも影響するって。
SDGsなど持続可能な社会の実現に向けた投資家の要求は、ヨーロッパでは非常に高く、この様な取り組みがESG投資を呼び込むにも一役買っているとは思うが、経済の中心であるメガバンクが率先して運営とは流石としか言いようがない。

De Ceuvel(デ・クーベル)

アムステルダムの北区では、かつての造船城下町。造船業は廃れてしまったが、再生に向けいくつかのプロジェクトが進んでいるようで、中でも注目されているのDe Ceuvel(デ・クーベル)。アーティストやクリエーターの活動拠点にもなっている。造船のまちがアートに変わると言えば、大阪の北加賀屋みたい。

でも、ここが大きく違うのは、「土壌汚染された土地を10年間で再生し、土地の価格を上げて、移住可能な地域にするのが最終目的。」というかなり野心的なコンペで選ばれた計画により事業が進められていること。2012年から始まったプロジェクトは、土壌浄化やアートだけでなく、ハウスボートをアップサイクルしオフィス&コワーキングスペース、研究ラボ、イベントスペース、ホテル、カフェなどに活用、他にもコンポストトイレ、太陽光発電、塩水ろ過システム、アクアポニックスグリーンハウスと言われる野菜と魚類を共存させながら生産するシステムなどなど、まさにサーキュラーエコノミーの壮大なラボとなっている。
そして、肝心の土壌浄化は、ファイトリメディテーション、すなわち植物によって汚染土壌を浄化するシステム(風の谷のナウシカで腐海を菌たちが浄化していたような感じかな。)を事業者が大学と共同で研究開発し、実装を目指している。

オランダと日本

これだけテンコ盛りなのはもちろんすごいのだが、こんな、夢はあるが、無謀とも思える(そもそも10年で土壌浄化し移住できることがミッションという無茶振り)内容の行政コンペは、今の日本だと実施すらかなり難しいし、その上、土壌浄化法にファイトリメディテーションが選択されたのにも驚かされる(日本だと封じ込めが一般的なのでは?)。そして、これらの取り組みが、単なる個別の実証実験だけでなく、有機的に組み合わされ一つのシステムとしてしかも成り立っている。さらに、事業者たちは、この循環型都市モデルを実験区だけでなく、オランダ全土に、さらには世界に広げたいと考え、この実験区の日常の営みやワークショップを通じて市民や世界の人々をを巻き込もうとしているし、実際、多くの人が参加している。
彼らの戦略は、まずは体験してもらう、使ってもらってなんぼ。
楽しいイベントなど、たくさんの体験を提供していて、子供たちが対象のものも多く、そこからその親世代を巻き込んでいる。
でも、こんな戦略は、日本で環境教育が取り上げられだした20数年間から同じように行われてきているが、環境に配慮したサスティナブルな社会を目指すと言う方向性が、日本に根付いているとは言い難い。企業もSDGs賛美を謳い、調達元の海外などでの環境配慮へは目が向いているが、各社差はあるけど足元の国内はちょっとおぼつかない感じ。

一方、オランダでは、当たり前のように社会全体が興味関心を持っていて、自分事になっている感じ。
企業の環境配慮といっても、単なるCSRではなく、社会を上手く巻き込み事業につなげている。メガバンクが運営するのCIRCLなんかその典型。身近なところに簡単に触れられるたくさんのコンテンツがあり、知らぬ間に自分事として環境に意識が向いていく。ただ、こういった事業は、単なる(短期的な)経済合理性じゃ成立しない。なのに企業が取り組む。そう、近視的な経済合理性じゃなく、未来志向の経済合理性を追求してるからじゃないだろうか。日本と戦略が異なり、やり方も上手い。例えば、地域で生産した再生可能エネルギーの余剰を地域通貨で流通させる、これだけなら日本でも取り組まれているけど、それをブロックチェーンなど近い将来主流になるかもしれない技術を選択し、取り込んでいるらしい。
少し先を見通すことを社会が許容し、社会的課題の解決と経済発展をうまく両立させている。

なぜ?
小国故の危機感?移民国家宗教多様な懐の広さ?イエナプランのようなフラットな仕組みで、哲学的で個を大切にする教育?

日本は、歴史的にみると、これまでも多くのことをオランダから学んできた。未来を考えるうえで、もう一度改めてオランダに学んでみる必要があるのかもしれない。

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