MIU404 3話が面白かった話

面白いドラマがあると、その放送期間中は週ごとの楽しみができていいなと思う。在宅勤務で土日以外の平日が一貫して味気ないものになりがちな今、そういう小さな楽しみがありがたい。私が今楽しみにしているのは、毎週金曜のMIU404だ。

そもそも気合の入り方がすごいドラマである。野木亜紀子脚本、塚原あゆ子演出の「アンナチュラル」コンビに、綾野剛と星野源のW主演で、主題歌が米津玄師。そりゃ面白いだろうなと思って観たらやっぱり面白かった。個人的に1話は綾野剛扮する伊吹について行くのに精一杯であまりハマりきれなかったのだが、2話からすっかりハマってしまった。そして今週の3話は、これこれ〜こういうのが観たかったの!とうずうずしてしまうようなエピソードだった。

「分岐点」というタイトルがY字路の上に表示されて始まる3話のターゲットは、実在する猥褻犯による被害を装ったいたずら通報で、警察相手に鬼ごっこをする高校生。最初はただの悪質な暇つぶしと思われていたが、捜査を進めると影には高校生の間で流通しているドラックが潜んでいて、最後には猥褻藩ご本人の登場と、1時間ながら盛り沢山。そんな盛り沢山な中でも印象的だったのが、クールでちょっと融通の効かない「イマドキの若者」枠、九重になぜ破天荒な伊吹を外さないのか、と問われた星野源演じる志摩が、台所にあるものを使ってピタゴラ装置(初めて知ったが正式にはループ・ゴールドバーグ・マシンというらしい)を作るシーン。坂を下り始めたボールはコップやメモ帳に道を阻まれて、どんどん道を逸れて最終的にカウンターから落ちる。それを寝ていたはずの伊吹が、野生の勘で?見事にキャッチする。

このシーンの通り、伊吹は事件中に対峙した高校生(まえだまえだの弟くん、おおきくなりましたね)がさらに足を踏み外すことを防ぐことになるのだが、一方ピタゴラ装置の話をしている志摩に、「でも結局最終的にどの道を選ぶのか決めるのは自分なんだから自己責任じゃないですか」とたてついていた九重が対峙したのはよりにもよって一番闇が深そうな主犯の高校生、成川だった。あと一歩のところで確保できず、九重は「成川!」と怒鳴ることしかできないまま、成川は夜の街に消えてしまい、行方不明となってしまう。普通のドラマだったら高校生を全員捕まえて改心させてチャンチャン、となりそうなところをそうさせないところが野木脚本である。

断っておくと、九重をディスっている訳ではない。志摩は「自己評価が高い」と評しているが、私は評価の高い自分しか受け入れられないタイプなのではと思っている。お父さんは警視庁の人で、自分も努力してなりたかった職業に就いている訳だから他人にも自分にも厳しくなるのも無理はない。雰囲気をフインキと読むのを許せないくだりは、彼の人となりが立体的になって個人的にとても好きだった。最後、彼が机を片付けていると志摩がピタゴラ装置で使ったボールが床に落ちるシーンがあるが、逃した成川が行方不明となってしまったことが、彼の分岐点にもなるのかもしれない。

2話を見ているときも「この人が犯人じゃありませんように」と思いながら逃げる加々見を見ていたが、今回も「これ以上バカな真似をしないように今回きっちり捕まってくれ」と思いながら逃げる高校生たちを見ていた。陸上部が廃部になっていなければ、校長がもう少し理解のある人だったら、止めてくれる大人がいたら、こうはならなかったはずなのにと思うと同時に、今回のコロナ禍で彼らのように大会や演奏会などの機会を奪われた学生がたくさんいるのだと思うと胸が痛くなった。脚本を書いた時点ではこのような事態になるなんて予想すらされなかったのかもしれないが、若い人たちが不条理な状況への怒りに飲み込まれて、道を踏みはずさないでほしいという祈りにも見える。

と、ここまで長々と書いたが、言いたいのはMIU404面白いので皆さんもぜひ見てくださいということ。金曜日を楽しみに明日から頑張るぞ…

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