「乙女ゲーム」がこの先生きのこるには ~クラウドファンディング編~

さめじまです。

この間初めて記事を書いてから、長文を書くことの楽しさに久しぶりに触れて早速2件目の投稿です。すぐハマるのはヲタクの性ですね。

さて、つい先日、我々乙女ゲーマーにとって悲しい出来事が起こった。

「絶対階級学園」のファンディスク制作というクラウドファンディングを募集中だったDaisy2(デイジーデイジー)の公式Twitterにて、特定のキャラクターを貶すような表現があり炎上、ライターさんまで巻き込んだ騒動となったのだ。今現在はブログで謝罪の上に該当ツイートは削除されているが、ライターさん側はまだ抗議のツイートをし続けており、完全な鎮火はしていない様子だ。

騒動自体については、私は絶対階級学園をやっておらずライターさんの良し悪しをまったく存じ上げないことと、このメーカーについては色々な噂は聞くものの、今は特定の企業を批判したいわけではないという理由で、発言は控えさせていただく。

じゃあなぜこの記事を書いているのか、というと。私は

この先乙女ゲームが販売され続けるには、クラウドファンディング以外に道はない

とずっと思っていたからである。

本当に(ファンの方には悪い言い方になるが)こんなお粗末なことで炎上して、この先の業界の可能性がまた未知数に戻ってしまったことが、私は悲しくて仕方がないのだ。このクラウドファンディングが成功するか否かは、どん底状態だった業界にわずかに差した希望の光だったというのに。

これ以外に道はないのか?もうここから再浮上することは有り得ないのか?がんばってファンで買い支えればなんとか持ちこたえるのではないか?

そんな希望的観測をお持ちの方も多いだろうが、私は残念ながら、既存のビジネスモデルでの展開はもう無理だと断言したい。今から、昨今のヒットコンテンツの仕組みと、それにあわせてなぜ乙女ゲームが衰退したのか、そしてなぜクラウドファンディングが希望の光なのか、を説明したいと思う。

尚、BLやキャラゲーやらこれは乙女ゲームか?といった曖昧な議論になってしまうと論点がずれてしまうので、この話での定義としては広く取って「①スマホアプリではなくPCまたはゲーム機で使用する」「②買い切りで購入する」「③中高生以上の女性をターゲットにした」ゲームを、便宜上「乙女ゲーム」と言うことにする。BLゲーム好きな人には申し訳ないが今は一緒くたで語らせてほしい。

昨今、乙女ゲームに変わり女性向けでもっとも大きな市場になっているものとしたらやはりスマホアプリだろう。(当初はブラウザのみだったが)刀剣乱舞の爆発的ヒットに始まり、あんスタやA3!などの、明確に恋愛することを目的としていないキャラクター推しの作品が、腐女子夢女子を問わず世論を獲得するようになった。またキラーコンテンツとしては「ヒプノシスマイク」の存在は大きい。CDというゲーム同様の斜陽コンテンツながら、計算された展開で一大ジャンルに躍り出た。

これらの作品たちと乙女ゲームの明確な違いは、大きく分けて2つある。

①無料で手間もほとんどなくはじめられること
②拡散が容易にできること

この2点がヒットの法則であり、また、乙女ゲームが今の時代に奮わないもっとも大きな原因でもあると考えている。

今回語りたい①について、これはわりと誰でも想像がつくだろう。アプリは基本的に最初は無料で始めることが可能で、ガチャで課金を促す仕組みになっている。沼に落ちた人だけが金銭を支払い、そこまででもない人は無料で楽しむもしくはアンインストールをする。ヒプマイも仕組みは同様で、初期からずっと、作品導入的なキャラ紹介ソングをフルでyoutubeに無料公開している。このような展開のポイントは、ユーザーはたとえ駄作を掴まされても懐がいたまないというところだ。

「超情報化社会」と言われる今、コンテンツは毎月、否、毎週のように新作で溢れ返っており、そしてそれにあわせて我々は、常に面白いものがないかを探している。しかし、お金と時間は有限だ。我々には今、失敗している余裕などない

今目の前に「8000円する新作ゲーム」と「無料で読める新作アプリ」があったら。選ぶのはどちらだろうか。言わなくても明らかだろう。8000円で博打をするくらいなら、その8000円は今いる推しに使うのだ。推しが一人の時代は、もう終わったのだから。

そう。このままのやり方では、新規ユーザーがまったく獲得できない。

昔からの乙女ゲームファンしかゲームを買うことがなくなるとどうなるか。会社は販売本数を増やすためには一人に複数買わせるしかなくなり、現在の過剰な特典商法がはじまる。わずかなファンが複数買いをして支えるが、いつか糸が切れてファンが離れる、そして売り上げが下がるからまた複数買いを煽る、もしくはソフトの金額を上げる…といった、最悪の循環が今まさに起きていることであり、この地獄のスパイラルはいつか限界を迎えて終わるだろう。そう遠くない未来に。

しかし、悲観しないでほしい。こう書くと無敵のように見えるアプリだが、アプリではできなくて乙女ゲームではできることがひとつだけある。それこそが、クラウドファンディングでのゲーム発売なのだ。

なぜアプリではできずゲームでできるのか。それは、企業としてのお金の回収方法の差につながっている。

ゲームは当然ながら、最初に大金をかけて開発をして、製造する。作ったあとは販売本数分だけ儲けになる。開発費をまかなえる本数が売れないと赤字になるが、そこさえ突破できれば、あとは細々と売り続けることでソフトの追加製造やライセンス管理などだけでほぼリスクなく運用ができる。

一方アプリはどうだろうか。最初に開発コストがかかることはゲームと同じだが、アプリの場合はローンチ後も莫大なランニングコストがかかり続ける。毎週のようにイベントを実施し、新規イラストのカードを上げて、新しいストーリーを作り続ける必要がある。確かにガチャで設ける金額も大きいが、アプリには「開発の終わり」というものが存在しない。アプリが稼動している以上、費用はかかり続ける。

つまり、ゲームの唯一にして最大のアプリに勝る利点は「初期費用さえ回収できればあとはほぼ丸儲け」な性質の商品ということである。今までは、その「初期費用の回収」及び「黒字化」というのが、蓋をあけてみないと分からない博打であり、そして業界が下火になるに従って複数買いなどの不健康な購買方法を促す根源であった。それならば、その初期費用をクラウドファンディングでファン自体が提供してしまえばいいのだ。

ゲームメーカーは、開発費用がもうもらえているので、あとは純粋にゲームを販売した分だけが設けになる。
ファンは、作品のリリースに直接関与できると同時にリターン品ももらえる
(寄付形の場合はリターンはないので注意)

数万円で何本も同じゲームを買って買い支えても、それは原価や輸送費も鑑みるとメーカーに入る利益はそこまで大きくない。今は1本3万円するような豪華版も出ていることから、おそらくひとつのソフト販売に際して10万円以上つぎ込んでいるようなファンの方も少なくないだろう。それであれば、はじめからメーカーに直接10万円を振り込んでそっくりそのまま開発費にしてもらうのが、お互いにとって最善であると考えるのは自然だろう。

過去「葉」「鍵」「型月」と略され繁栄を尽くしたた美少女ゲームメーカーとその業界は、乙女ゲームよりも一足先に終わりを迎えた。コンテンツの形を変え繁栄し続けているところもあるが「美少女ゲーム」というジャンル自体は衰退し、そして乙女ゲームもそれに順ずるだろうと予想されていた。今のところは、そっくりそのまま同じ轍を歩んでいる。ここから抜け出すには、美少女メーカーの衰退期にはまだあまり存在していなかった「クラウドファンディング」というツールを活用するしかない、否、それをしないと、先輩である彼らといずれ同じ結果になる、と私は踏んでいる。

今回のDaisy2のクラウドファンディングはFDであること、PCゲームであることから最終目標が1500万円と比較的届きやすい金額になっている。これが完全新作であったり、CSゲームでの製作になるとまた金額も変わってくるのであろうが、それでも、今までの乙女ゲーム業界の流れを大きく変える一手になることは事実だろう。

これを参考に他の企業も参戦してほしい、と願いつつも、まずはこのクラウドファンディングが成功することを祈る。もう余計な炎上はしませんように、とも。

長くなったが、①についての打開策は以上である。

そして、まるでまわしもののようにクラウドファンディングをごり押しした私だが、ここまで書いておいてひっくり返すが実はこれだけではまだ足りないとも思っている。

「生き残る」ことはできても「生き返る」には、あとひとつ、前述の「拡散性」についての解決策も考えなくてはならない。現代の超情報化社会に適応する乙女ゲームの拡散の仕方を。

その話は、また後日。


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