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『文在寅とは何者か』を読んで

南北首脳会談の開催が決まった頃、この見た目穏やかな文在寅大統領に急に興味がわき、アマゾンでポチった本です。文氏が大統領に就任した翌月の2017年6月に出版されています。

筆者は毎日新聞の特派員ですが、韓国駐在が2015年までだったためか、主役のはずの文大統領の影は薄く、本の主眼は、開発独裁から民主化、朴槿恵政権に至る韓国現代史に置かれています。よって、『文在寅とは何者か』の答えは、得られなかったに等しく、その点は残念です。

ただ、長い取材経験から得られる、韓国の人々の思考を熟知した分析には新しい視点が多く、戦後の韓国史を振り返り、見つめ直すヒントを与えてくれました。

例えば、韓国では、儒教の影響から、政治に携わる人は「知性と徳」を兼ね備えるべきだと考えられています。

朴槿恵前大統領の友人、崔順実氏による国政介入事件では、20万人が参加したともいわれる「ろうそくデモ」や、罷免後、逮捕、起訴、有罪判決と一気に奈落の底へ落とすような壮絶処分に、国民と司法の並々ならぬ怒りを感じたわけですが、それも、大統領はこうあるべきだという儒教的価値観に加えて、ムーダン(巫堂、シャーマン)という崔氏のステータスを考えると、国民はどうしても許せなかったのだと筆者は指摘し、なるほどと腑に落ちました。

今、韓国国内で、文大統領の評価はぐんぐん上がっているようですが、米韓、米朝会談を経た後、その評価がどう変化するのかも見ものですね。