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『何事もデビューは突然でしかるべきであろうよ』の回

何か新しいことを始めたときに、「急にどうしたん!?」と言ってくる人がいる。いや、逆に言いたい。そりゃあ何かを始めるときはだいたい急やろ。

こういう人たちは、例えばサングラスをかけ始めたときにそれを見て「急にサングラスかけてどうしたん!?」などと言ってくる。いや、そりゃあ急にかけることになるやろ。なんや、最初はメガネの状態からスタートして、徐々にレンズの色を濃くしていったらいいんか? そうしたら、急にどうしたもこうしたもなくなるんか? んなことしても、徐々に濃くしていくどっかの段階で『あれ? なんか色付いてる?』ってなる瞬間あるやろ。そんな自然にサングラスまで行き着くことはないやろ。アハ体験かなんかか? ほんで、裸眼の人がこの手法でサングラスデビューしようと思ったら、出発段階のメガネでまず急にメガネ状態、いわゆるサドンリーメガネになるやん。絶対「急にメガネかけてどうしたん!?」って言ってくるやん、馬鹿の一つ覚えみたいに。なんや、じゃあ裸眼の人がサングラスに至るまでには、まずはコンタクトデビューして、コンタクトデビューは目に見えて変化に気づかれにくいからわざわざ自分から「おれ、最近コンタクトにしてん」って言って、『あっ、こいつ目が悪いねんな』ってある日急にメガネをかけても受け入れられるような土壌をあらかじめある程度作っておいて、そんでメガネをかけてからやっと徐々にレンズの色を濃くしていかなあかんのか? 手順多すぎるわ。だいたいコンタクトデビューっていうのは、先にメガネデビューしてからするもんであり、メガネを経ずに直でコンタクトデビューしようもんなら、目医者さんに「急にコンタクトにしてどうしたん!? メガネは?」って言われるんだわ。分かる?っていうかそもそも急の何が嫌やねん。

ってな風にありえもしない謎の状況に対して謎の怒りをぶちまけたが、なんせ人の変化を見てはこんなことを言ってくる人がいるっちゃいる。っていうか、オカンがそうだ。今まで全く化粧っ気のなかった女子スポーツ選手がある日化粧をし始めたら「この人、急に化粧し出してどうしたん!? 彼氏でも出来たんか?」と言う。野暮過ぎてイヤんなる。いいやん別に化粧しても。さらにはわたしが中学生のとき、小学生のころからの友達が家に遊びに来てワックスを付けているのを目にしたら「〇〇くん、知らん間に髪型カッコよくなったやん」なんてことを本人に向かっていちいち言う。YABO。Y、A、B、O、YABO。思春期やから、おれらは。ほっといてくれ。「知らん間に」って、なんでいちいちオカンに「ワックス始めました」って報連相を徹底せなあかんねん。それに「カッコよくなった」とか感想を言ってこんでいいから。オカンからの評価なんかホンマに一切いらんから。同級生の女子からの評価のみがほしいから。向こう行っといて。

ただ逆説的にこうも言える。たかだかオカンからの一言にくじけているようじゃ、人間何も成し遂げられないぞと。世の中には、人のやることなすことにいちいち口出ししてくる人が沢山いる。オカンなんて悪口を言ってこない分、まだマシな方だ。自分のやりたいことを成し遂げるためには、頼んでもいないのに余計なことを言ってくる人たちに負けずに、自分を貫き通すパワーが必要なのだ。そういう意味ではオカンは格好の練習相手。ワックスをつけ始めて「アンタ、えらいオシャレし出してどうしたんや急に?」と言われた際には、「うっさいねん。なんでもいいやろ。ほっといて」とキレるも良し、『フンッ、いちいちオカンごときの相手をするなんて時間の無駄だ。無視無視』とスルーするも良し、『くっ! オカンに言われたらなんか途端に恥ずかしくなってきた。今回はやっぱやめよう』と一から出直すも良し。そんな風にして経験を積み、まずは自分のオカンに打ち勝ち、次はオカンのオカン、オトンのオカン、友達のオカン、隣町のオカン、見知らぬオカン、名もなきオカン、とあらゆるオカンを乗り越えていき、最後には世間に打ち勝てるように自分を鍛えていこうぞ。少年よ、大志を抱け。


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