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【百物語】不知火

はじめに

不知火の背景ストーリーです。

不知火伝説

陰陽師不知火絵巻初探

東に位置する杏原城では、大妖怪不知火に関する伝説がある。
とある新月の夜、杏原城外の湾岸に、大妖怪が急に現れた。
まずは、二三の火光が現れ、そして分裂し、どんどん増えていった。最終的に数千の火光が海面を覆い、天に繋ぐ光景となった。
あの光景を見た者は、一生忘れないだろう。
船に降り立つ大妖怪の容姿、桁外れの美しさで、身に纏う服がその美しさ増幅させる。
彼は振り返り、後ろにいる陰陽師に意味深くこう言った。
「でも、ここではもう一つ不知火に関する伝説がある」
直後、近くの海面に上昇する炎が現れた。炎の光は、船にいる人々の顔を照らし、長い月日を沈黙したままの離島も照らした。

陰陽師不知火絵巻初探
式神不知火

海と空の境界線。天地を繋ぐ灯火。私はその中にいる。

不知火は人々に恩恵、あるいは災難をもたらした。
しかし、これはあくまで伝説で、実際に不知火を見た人はごく僅かだ。
私はいつの間にか、この神秘的で縁起の悪い名前で呼ばれるようになった。
私は物心ついたころから、この離島で暮らしている。
その前の記憶は無く、頭の中では、曖昧な断片しかなく、それは海面にある天まで繋ぐ、たくさんの火光だ。
島にある離人閣の女将に育てられ、「離」と呼ばれている。
私は恩返しのため、離人閣の皆の期待に応えるため、一所懸命に歌と舞の稽古をした。

陰陽師不知火伝記1
陰陽師不知火絵巻初舞
不夜の舞

私なら、立派な舞姫になれるはず。

毎日夜になると、私は一歩、また一歩、海面の上に佇む舞台へと歩き進める。海面を進むと、遠くにきらめく火光が見えてくる。あれは船の上の漁灯だ。夜が深くなると、その火光も広がっていき、まるで伝説の大妖怪不知火のように見えた。
歌姫不知火。あの伝説は、私のことを語っているのかもしれない。

陰陽師不知火伝記2
初会の舞

私は皆の言う歌姫…不知火よ。

時は、無意識のうちに流れて行くだけのものだった。一人のそそっかしい陰陽師が私の生活に入ってくるまで。
彼はまるで、暗い部屋の中に差し込んだ一束の光のように、眩しく熱烈だった。

陰陽師不知火伝記3
真意の歌

霞む月夜を共に見上げる夜。永遠に続いて…。

公演で、私の歌声の中の虚しさを感じ取ったと言った。
私を連れて海に出て、外の美しい世界のことを話して聞かせてくれた。
私は、彼の作った和歌を聞きながら、初めて自由に踊った。

陰陽師不知火伝記3
自由の歌

いつか蝶のように…自由に飛べるかな…。

また、火光が一杯の日。しかし、今日は船の漁灯ではなく、たくさんの火箭だ。離人閣に向けられ、私を殺すために。
「あの歌姫は、やっぱり妖だ。」
「だから、いつものなにかが違うって見えるのか」
悪意と誹謗中傷が蔓延し、嫉妬と独占欲が人々の心を蝕む。
杏原城主の要求を断ったため、恨みを買った。
私は怖くない。
隣にいる彼を見て、心の底に力を感じた。この力は十数年の記憶の中に現れた。
彼は教えてくれた。その力は「自由」というのだ。
私の胸を矢が貫いた。

陰陽師不知火伝記4
陰陽師不知火絵巻終舞
覚醒・不知火

私は…特別な存在になったの。

羽が付いている矢を抜く時、数え切れない炎の蝶が私の胸から空に飛び上がった。
彼らは飛び出し、無限に増え、海面を覆う火光となった。あの伝説の大妖怪のように。
そう、不知火だ。
あれが本当の自由なのか?私は感慨せずにいられない。彼たちが暗闇を照らす勇気に。
星空の下で、離人閣の炎は汚い噂を、囚われた昔の夢を全て灰燼へと焼き尽くした。
あの灰燼の中で、私が手に入れたのは死ではなく、新たな誕生なのだ。
私は人間ではないが、「離」であることだけは確かなものだ。
離人閣の歌姫離は、伝説の大妖怪不知火は、いつだって、自由と言う名の舞を舞い踊る。

陰陽師不知火伝記4
陰陽師不知火絵巻終舞
星火の夜

空を覆う灯火の絶景を目に焼き付けなさい!

真夏の最後の夜、蛍の光を灯にして、私は離人閣の一番高いところに登り、新たな和歌を書いた。
かつての私は籠に囚われた鳥、頼りにならないか弱い漁火だけど、今は星空の下で夢に入り、神出鬼没の歌姫不知火になった。
海風に攫われ、手の中にあった詩歌の本は全部天に昇った頃、私はかつての踊りを思い出した。
私は炎を纏い、高楼から水面に落ちて、その焼き払われた廃墟の中で一人で踊った。鳥か花を銜えて見に来、浪が律動に合わせて押し寄せて来た。
夜明けが訪れる時、霧が立ち込め、私の扇子に止まっていた蝶が光を辿って、金色の光玉を撒きながら羽ばたいた。

陰陽師不知火伝記5
驚鴻の舞

私の歌と踊り、皆の心に一体何を残せの。

伝説に伝わる数十年に一度の盛大な景色は間もなく舞い戻る。
夜の帳が下りる時、私は星火を点し、静かによい知らせを待つ。
「お久しぶり、まだ私の歌声を覚えている?」

陰陽師不知火伝記5
別れの舞

波に浮かぶあなた。私を忘れないで。生きて…。

海面一面の火光が再度離島に現れた。晴明と玉藻前の目的はもう目の前だ。
そして、華麗な服装を纏った大妖怪は気づいた。彼らを運んで来た老いた陰陽師はもう、そこにいない。
船は暗い海面へと戻っていく、離島の光はもう、老いた陰陽師の行く方向を照らすことが出来ない。
彼は数十年間この離島を往来しているのは、「彼女」が伝説のように、とある日突然現れることを信じているからだ。
そう、もう一回あの歌を聞くために。
後ろから歌が聞こえる。あの夜、「離」の舞に合わせて詠んだ物だ。切ない思いが湧き出る。
「不知火か?言い伝えでは、十年に一度は会えるかどうかと聞くが」と銀髪の陰陽師が言った先の言葉が脳裏に浮かび上がる。
「不知火ではない。離じゃ。」
一羽の火蝶が離島から飛び立つ、海面を横切り、老いた陰陽師と一緒に霧の中へと消えてゆく。

陰陽師不知火絵巻永恒

不知火テーマソング「離島の歌」

参考文献

1.不知火伝記、不知火絵巻

2.不知火PV

おしまい

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