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【百物語】茨木童子

はじめに

茨木童子の背景ストーリーです。

最強の鬼

式神 茨木童子

三千大千世界にあって六道衆生、
万物生霊はまことにちっぽけなものだが、
それは妖怪とて同じこと。

気を抜けば他の種族から虐げられ、
弄ばれ、やがては殺される。

だからこそ誰かが教えてやらねばならんのだ。
生き残るため、強き者の元に集うことを!

陰陽師茨木童子伝記1
豪拳

我が豪拳!味わうがいい!

「この山の上には邪悪な鬼が住まわっている、なんでも食べてしまうらしい。だから、暗くなったら絶対にこの山に登ってはいけません。」
僧侶の目には恐怖が満ち、完全に腰が抜けた様子だった。

全てを食べ尽くす鬼だと?
この茨木童子様はそんなもの、恐れをなすはずがあるまい。

僧侶の話は嘘ではなかった。

月明かりの下に、巨大な鬼が身を潜めていた洞窟から姿を現した。
その姿は膨れ上がった巨大な蟲のようで、
強烈な瘴気が皮膚から滲みだし、一体を悪臭に染めた。

「私は茨木童子、ケガしたくなけりゃ、さっさと失せろ!」
やつが「ヴゥ…ヴゥ」の音を発しながら、私のほうに近づいてきた。

妖力が右手に漲る。

陰陽師煉獄茨木童子物語
黒炎の腕

地獄の炎!

「私とやるつもりか?なら、覚悟をしておけ!」
鬼の屍骸が森の中で横たわり、まるで丘のようだ。
周りの悪臭も少しずつ消えてゆく。

だが、青紫色で粘性のある血はどう洗おうが、
私の手からは落とせない。
そのせいで私の右手が炎に焼かれたかのように痛み、
その強さも少しずつ増していく…。


クソ…。

こんな屈辱を受けるのは初めてだ。
そして、次第に痛みの中で意識を失った。

目が醒めた時は、月明かりは雲に隠れ、
周りは漆黒の闇になっていた。
暗闇の中、何かの囁きを聞こえた。

無意識に右手を伸ばすと、紫色に輝いていた、
そうだ!これはあいつの血の跡だ。

ようやく囁きの内容が聞き取れた。

「主が君を必要としている。」

陰陽師煉獄茨木童子物語
地獄の腕

鬼手よ。血を欲しているのか。

「主?バカを言うな、私の主はたった一人、それはこの私自身だ!」
「暗闇に潜む魑魅魍魎どもよ、私の拳を食らうがよい!」

声の元に向かい、右手を振り下ろすと
膨大な妖力が森を照らした。

目の前は灰燼と化した煉獄のようだ。
妖しい鬼火が四方八方に残留していた。

私の右手も、燃盛る鬼手と化した…。
そして、この鬼手が私の支配から離れようとしているのを感じる。
なんとかして抑えないと、何をやらかすかわからない。


解決策が見つかるまで、とりあえずこの山にでも残るとしよう。
気が付くと、蟲みたいやつの代わりにこの山の鬼となっていた。

陰陽師煉獄茨木童子物語
覚醒・茨木童子

驚嘆せよ!私の強さに!

恐れを知らない茨木童子が、
ある死闘の中で、不意に悪鬼の血に染まってしまった。

彼の右手が制御の効かない鬼の手と成り、
常に彼の体を飲み込もうとしている。

遠くから来た陰陽師が暫くその手を封印したものの、
この手をコントロールするには、
茨木童子自身が強くなるしか方法はなかった。

陰陽師煉獄茨木童子式神図鑑
八つ当たり

全員死ぬがいい!雑兵どもめ!

三千大千世界にあって六道衆生、
万物生霊はまことにちっぽけなものだが、
それは妖怪とて同じこと。

気を抜けば他の種族から虐げられ、
弄ばれ、やがては殺される。

だからこそ誰かが教えてやらねばならんのだ。
生き残るため、強き者の元に集うことを!

奴は混沌の海に立つ灯台のようなものだ。

圧倒的な力と明晰な頭脳、
そして恐ろしいほどの冷静さを持っている。

それこそが酒呑童子!
妖怪の頂点に君臨する男よ!

だが…腹ただしいことにやつは
今二つのものに溺れている。
女と酒だ!

陰陽師茨木童子伝記1
陰陽師茨木童子伝記2

「私は茨木童子、お前の親友だ。」
大江山の鬼王…酒呑童子はようやく目が覚めたが、
記憶を失ってしまったようだ。
お前は誰だと、彼は聞いた。

己がどれほど強い鬼王だったかを思い出してもらい、
あの頂点に立つあやかしにもう一度挑みたいと思った。
だから、「私はお前の親友だ」と、こう教えたのだ。

半信半疑ではあったものの、彼は何一つ反論しなかった。

なんてことだ…あやかしの世界を睥睨すべきやつが、
このまま舞台を降りられては困る。
昔の力を取り戻すまで、ちゃんと近くで待たねばならんようだ。

いつも足首の鈴の音で、俺がまた来たことに気づく。
酒を飲む頃に訪れてくることに、彼もだんだん慣れてきた。

一日中酒に明け暮れている酒呑童子には、
鬼王の面影の欠片もなく、最初は苛立った。

だが、よく考えれば…
これほど酒を愛でるということは、
彼が本物の酒呑童子で、何一つ変わっていない
ということではないか。

「何だ、また俺と戦いに来たのか。」
「いや…」
「戦いではなかれば、何をしに来た?」
「今日は、共に心ゆくまで飲もうではないか。わが友よ。」

陰陽師茨木童子伝記4
陰陽師茨木童子伝記5
腕切

この腕を切られた恨み…決して忘れぬ!

ー 鬼切 ー
源家一族は、鬼王の首を取るために、
総出で大江山に攻め込んだ。
圧倒的な兵力を投入したにも関わらず、
戦いは何日も続いていた。

ご主人様は、鬼王の首を討ち取った。

俺はご主人様の命令で、
その首を都に届けに向かった。

羅生門を通った時、俺は道端に
美しい女性が立っている事に気付いた。

俺は息を飲み彼女を見つめた。

そして考える暇もなく、俺は刀を抜いた!
肉体を切り裂く音が、
静まり返った夜空に響き渡った!

陰陽師鬼切絵巻断壊
鬼の腕

お前も戦を望むのか。

ー 鬼切 ー
その瞬間、女の鬼手の断面から
大量の毒気が放たれ、
俺に襲いかかってきた。

陰陽師鬼切絵巻断壊
羅生門の鬼

友を救うためなら!どんな犠牲でも厭わぬ!

大江山に戻ると、すべてが変わっていた…。
酒呑童子が人間になどに負けるわけがない!

今まで私に勝てる妖怪など一匹もいなかったが、
大江山の鬼王は私よりも遥かに強かった。

今まで何度もあいつに挑戦してきたが、
負けてばかりだった。

納得がいかず、この前もまた戦いを挑んだが、
彼は一笑して私を座らせ、酒に付きあわせた。

「親友はお互い切磋琢磨していければ、
それで十分だ。」
「お前が親友だと言った覚えはないぞ。」

彼は笑い、手に握っていたものを私に投げて寄越した。
「まあまあ、また戦いたくなったら、
この鈴を鳴らして俺様のところに来ればいい。」

私は心に誓った…こいつは絶対に死なせない…と。

陰陽師鬼切絵巻故交

黒衣の侍の追撃を逃れ、必死に走った。
首の入った鉄箱がとてつもなく重い。

私は敵を見くびってしまい、油断した。
あれほど強い妖怪が、源家の犬になるとは、
思っていなかった。

右腕は、相手の刀に切りつけられ痛んでいるが、
鬼王の首を取り戻すためなら、
別に大したことではない…。

この首に、私の妖力を与えれば…。
酒呑童子、絶対に君を死なせない!

私の妖陣の中で、酒呑童子が目を覚ました。
近づくと、彼の足首の鈴が鳴った。

「だれ…だ…?」
「私は茨木童子…君の親友だ。」

陰陽師鬼切絵巻友達

参考

おしまい

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