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Malicetic Lolita 1stアルバム「時計じかけのワンダーランド」

時計じかけのワンダーランド」はMalicetic Lolitaの1stアルバムで、2013年12月31日のコミックマーケット85で発売されました。

前作「狂いかけのラブリーワールド」のリリースから2ヶ月後で、あまり間が空いていなかったため、作業効率を考えて2枚同時進行で制作しました。分かりやすく言うと、「時計じかけ~」の先行シングルが「狂いかけ~」という形です。

アルバムとはいえ7曲しか入っていないのでミニアルバムですが、曲のバリエーションが豊富で、しかもどの曲も個性的でマリロリらしさが出せているのではないかと自負しています。

1.色楽園

新宿JAMのお披露目ライブでは演奏しませんでしたが、実はマリロリとして最初に出来た曲です。この曲でマリロリの方向性が決まったと言っても過言ではありません。

ネタばらしをしてしまうと、dip in the poolの「黒いドレスの女~Ritual~」という曲(原田知世主演の同名映画の主題歌)を何年かぶりに聴いていたら自然に出来ました。dipの影響は強く受けていますが、パクってはいません(笑)。

仕事でテンポが速くて音符の数が多い曲ばかり作っていたので、その反動で「なるべく隙間の多い音楽が作りたい」と思いながら作りました。

変則的なドラムのパターンにギターのアルペジオ、忙しく動き回るフレットレスベース、YMOっぽいビブラートのかかったシンセの音。当時のサウンドを知っている人は、いきなり心が80年代にタイムトリップすると思います。

2.すてねこのぼく。

この曲はマリロリとして2曲目に出来ました。べつに曲の完成の順番とアルバムの曲順を合わせたわけではないのですが、頭2曲は偶然一致しました。

前の曲が暗めだったのでバランスを取って明るい曲にしたつもりだったのですが…。詞が上がってきてびっくりしました(笑)。残酷な歌詞ですよね。

6/8拍子なのは、誰が聴いても分かるように上野洋子さん在籍時のZABADAKの影響です。意識したわけではないのですが、コード感やメロディーラインがどことなく「遠い音楽」の頃に似ているような気がします。

この曲もそうなのですが、マリロリの曲はわりとアコースティックギターの登場頻度が高いです。その辺もポップスの文法からいうと、ちょっと異端かもしれません。

3.何でもない或る一日

この曲も3拍子系です。ドラムレスの幻想的な曲を作ろうと思っていたら、自然に3拍子になりました。この曲以降は何曲目に出来たかはもう忘れました…。

ジブリ作品のテーマ曲っぽい雰囲気なので、制作中は作曲家の久石譲さんにあやかって「久石」というコードネームで呼んでいました。恐れ多いですが。

ペンタトニックっぽい音使いのせいか和風な感じがするのが面白いです。確かキックの音がドアを閉める音でスネアの音が何かを叩いた音のサンプルです(失念)。Producer Loopsというイギリスのサイトで買いました。

音色的に工夫したところを一つ挙げると、OSC AとBのPWの位相をずらしてLFOでモジュレーションをかけることでトレモロに似た効果を出しています。Prophet-5はVCAにLFOをかけることが出来ないので、こんな裏技もあります。モジュラーシンセじゃなくても十分奥が深いです。

4.脳内メルヘン

この曲は新宿JAMのお披露目ライブの1曲目に演奏しました。記念すべきデビュー曲(?)です。初めて聴く曲にみんなキョトンとしていたのを今でもはっきり覚えています。

ライブ時はもっとシンプルなアレンジだったのですが、歌詞を見ていたら「メンヘラの脳内お花畑」みたいな内容だったんで、アレンジ的にもそうしてみようかと遊び心が芽生えまして。

おそらくマリロリの全曲の中で一番音色的に凝っています。定番の金属的な音数種類とか、ノイジーな笛の音とか…Prophet-5にはオシレーター用のエンベロープはないのですが、ポリモジュレーションでOSC AにVCFのEGをかけられるので、それでピッチを変調した変態な音とか…てんこ盛り状態です。ある意味Prophet-5の音色カタログみたいになってしまいました。

5.DiCE CREAM

世界名作劇場の中では「母をたずねて三千里」が一番好きだったのですが、そのイメージで作ってみました。基盤にあるのはフラメンコです。よくサンバと勘違いされますが、そんなに能天気ではないです。

この曲もアコギが入っていまして、むしろシンセよりもメインな感じがします。実はギタリストの後藤さんを初めて知ったのが「エースコンバットZERO」だったので、いつかこういうフラメンコっぽいのをやってみたくて。

曲の構成がちょっと特殊でEメロまであります。通常のサビはCメロなのですが、その後にDメロがあって大サビはEメロなんです。Dメロは1番にはなくて2番から登場し、ラストで2倍の尺になります。個人的にはこのDメロを「サビ'」と呼んでいます。お気付きの方もいると思いますが、アイマスの「THE 愛」にもサビ’があります。

フラメンコがベースにあるものの、ちゃんとマリロリサウンドに昇華出来ているのではないでしょうか。ライブの時、サポートドラマーのハッチャキさんからこの曲は足がつる(キックが16分音符で細かく刻んでいるので)と不評ですが、マリロリとしては気に入っているのでライブで演奏する頻度が高いです。

ハッチャキさん、ごめんなさい。

6.狂いかけのラブリーワールド

説明するまでもなく1stシングルのタイトル曲です。

録音やミックスはシングル盤と同じ音源なのですが、マスタリングの違いで若干印象が違って聴こえます。こちらの方がクリアな感じと言いますか。個人的にはシングルの太い音が好きです。

この曲に限らずProphet-5で作る音で多用しているのが、フィルターのレゾナンスです。他のシンセでレゾナンスを上げると下品な音になりがちなのですが、なぜかProphetは上品に変な音になるんです。って、意味不明なこと書いてすみません。教授の特徴的な音なんかも実はこのレゾナンスを上手く使った音が多いです。

自画自賛ですが、Bメロのコード感とかサビのメロディーが自分らしくて好きです。

7.漫ろ唄

このアルバムの曲を作っていて最後に出来た曲です。マリロリの曲はどれも安産なのですが、その中でも一番楽に出てきました。

実は収録曲の倍近い数のデモを作ったのですが、蓋を開けてみたらラストを飾るにふさわしい曲がなくて。急遽作ったのがこの曲でした。なんとなく「THE IDOLM@STER」と似たような境遇の曲です。

YMOの「Perspective」みたいに淡々としているのに切なさが伝わってくる感じを狙ってみました。それとZABADAKの「水のソルティレージュ」を足したようなイメージです。なぜかいつもBメロで吉良さんのオクターブ下のユニゾンが脳内再生されます。

イントロの笛の音は単純に矩形波をユニゾンモードで鳴らしているだけなのですが、10VCOが重なっているので、とても迫力があって美しいです。純粋にProphet-5の音っていいなと思いました(小並感)。

エンディング感が凄いですよね。って、自分で言うのもなんですが、誰も言ってくれないので言ってみました。ちなみにこの曲の仮想タイアップ先は「いいちこ」です。ビリー・バンバンじゃないんで無理ですが。

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