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Malicetic Lolita 1stシングル「狂いかけのラブリーワールド」

狂いかけのラブリーワールド」はMalicetic Lolitaの記念すべき1stシングルで、2013年10月27日のM3-2013秋で発売されました。

自主制作でCDを作るのが久しぶりで、要領を忘れていていろいろ手間取ったのと、スケジューリングが綱渡り状態でかなり大変だった記憶が強く残っています。皆さんの本業が忙しい中、隙間を縫うように作業してもらったため、間に合わないかと思ったことも何度かありました。リリースの延期も考えたほどです。

制作にあたってはゲストミュージシャンとして、アイドルマスターをはじめとして長年付き合いのあるギタリスト、後藤貴徳さんに参加してもらいました。またエンジニアは同じくアイマスでよくお世話になっているMacoteau Tさんにお願いしました。

たぶんこの人選でなければスケジュール通りに終わらなかった思います。さすがに勝手が分かっている人たちなのでとても作業がしやすく、以後このメンバーで固定化されました。

なお、このCDのために30年来愛用しているProphet-5をメンテに出したのですが、良心的な料金でとても調子が良くなってびっくりしました。

そうそう、ちょっと変わったタイトルについて…。ジャケットデザイン担当の加藤カルマさんに「『狂いかけ』っていう言葉は不適切じゃないですか?」と指摘されたのですが、自分は言葉狩りみたいなのが大嫌いで、多少汚い言葉も理由があって存在していると考えているので、強引に押し切りました。メジャーではこういうわがままは難しいかもしれません。インディーズならではですね。

1.狂いかけのラブリーワールド

実はレコーディングに先立って同年7月14日に新宿JAMで行われた「なんちゃらキカク」という、魔ゼルな規犬さん主催のライブイベントに出演したのですが、その時に演奏した3曲のラストがこの曲でした。

とくに何かコンセプトがあって作ったわけではなく、たまたま思いついたメロディーなのですが、とても強くて気に入りました。一般的な感覚ではB面(カップリング)っぽい曲調だと思うのですが、こういう曲をA面に持ってきてしまうのがマリロリらしさと言いましょうか。

シンセサイザーを使った音楽というと、ピコピコしたイメージがありますが、あえてそういう分かりやすいのは避けて、倍音の複雑な音や歪んだ音、音程感の希薄な音などを積極的に使い、耽美な路線を突き進むことにしました。おかげで売れなくなりましたが…自業自得です。

変則的な16ビートのドラム、打ち込みのフレットレスベース、アコースティックギターがサウンドの核になっていて、その上でProphet-5を中心としたシンセサウンドで彩りを添えています。

仮想タイアップ先は、退廃的な世界観のアニメです。バッドエンドで誰も幸せになれない、救いようのないストーリー。

2.少女ごっこ

この曲もなんちゃらキカクで演奏しました。2曲目です。

狂いかけのラブリーワールド」が自分の中でヨーロッパっぽいイメージだったので、この曲はバランスを取る感じで日本というかアジアというか…中東もひっくるめて漠然と東洋的な雰囲気にしてみました。

自分はYMOから強く影響を受けていて、Japanが大好きということは昔から公言しているのですが、その辺の好みを包み隠さずに出してみました。勝手に「錻力の太鼓」の続編を作ってみた感じです。テンポがちょっと速いですが…。

たまに気づいている人がいて指摘されるのですが、マリロリの曲でマリンバの音をよく使っているのは初期YMOと後期Japanの影響です。あとZABADAKも。

ライブの時はラストに演奏することが多く、最後のMCに被せるようにオケをスタートさせるのですが、いつもそのタイミングの見極めに迷います。緊張感の希薄なマリロリのライブで一番緊張する瞬間です。この曲のオケ出しをした時点でライブが終わった気持ちになっています。

3.狂いかけのラブリーワールド(instrumental)

インストで聴いてもらうとよく分かると思うのですが、結構いろんな音が入っています。

ドラムはEZ DRUMMER(他にもBFDとか持っているのですが、聴き比べてこれが一番しっくりきました)の拡張パックの音で、ベースはTrilianです。パーカッション系のサンプルはCult Samplerというライブラリーを使っています。これは廃版商品ですが、リンドラムなどの古いリズムマシンの音やフェアライトやイーミュレーターの音がいっぱい入った優れものです。

オーケストラ系の音はVIENNA INSTRUMENTSを使っていますが、それ以外のシンセサイザーの音は全部Prophet-5です。DAW(Studio One)で曲を作っている時はArturiaのProphet-Vで代用しているのですが、レコーディングの時に全部実機に差し替えています。

ちなみに録音にはプリアンプは通していなくてRMEのMultiface AEに直結なのですが、それが逆にいいみたいです。エンジニアのMacoteau Tさんから「音がいい」と褒められました。

間奏やアウトロで出てくるリードの音は、SYNCで作っていますが、OSC AのFREQをリアルタイムに動かして音色を変化させています。つまみを動かすとダイナミックに音色が変わるのは、アナログシンセの醍醐味ですね。

4.少女ごっこ(instrumental)

他の曲もそうなのですが、この曲はとくにポリモジュレーションをきつめにかけた、ピッチ感の希薄な音を多用しています。

ビブラートなんかもProphet-5はデプスをメモリーする機能がなくてモジュレーションホイールを上げておかないといけないので、裏技的にポリモジュレーションを使い、OSC Bを「LO FREQ」にして、キーフォローを外してOSC Aを変調することによってビブラートとして使ったりしています。

マリロリの曲はビートの再構築みたいなのが裏テーマにあり、スネアが2拍4拍にない変則的なパターンが多いため、いわゆる「ノリ」の悪い曲が多いのですが、この曲はドラムがシンプルな分ノリが良くてライブ受けがいいです。

この曲は地味なところでベースのフレーズが気に入っています。マリロリにしては自己主張の弱いシンプルなベースラインなんですが、縁の下の力持ち的に上手くはまっている気がします。ついでにライブの時にコロムビア貝塚さんが弾いている、オリジナルを完全に無視したベースも格好良くて好きです。

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