「上流工程」というやつ

私はIT業界に長く身を置いています。かつてはプログラマーをやっていました。今は開発会社へ発注する側です。

IT業界では上流工程が企画、下流がシステム開発とされています。
下流のシステム開発をSIerとすると、企画する発注元が上流工程。
そして設計は開発会社がやるもの。自分たちの開発体制で最善のものを設計するためにこうなるのは、そりゃそうだよねと思ってきました。

そんな中、先日、製造業界の人へ相談する機会がありました。
その時に言われたのが
『設計をするのは依頼する側。製造を請け負う会社は設計しない』
という言葉です。
業界でそんな慣習さえも違うんだと驚きました。

その時に調べて初めて知ったのですが、製造業の上流工程は製品の元となる素材を作る工程だそうです。鉄やガラス、紙などを作るメーカーですね。
そして下流工程が素材や部品を加工したり組み立てたりする自動車メーカーなど。
ホンダもトヨタも下流工程のメーカーなんだ!というのが驚きです。自動車の企画や設計は、製造業全体で見るとあくまで下流工程内での企画や設計なわけです。
鉄を作るメーカーは、下流工程のメーカーから「こうで、こういう品質のものをくれ」と言われて言われたものを作る。
(厳密には中流工程の部品メーカーがあって、そこが下流からのオーダーを受けて上流メーカーに依頼する)

より下流のメーカーが発注し設計をし、上流に依頼する。関係性がちょっと違うなぁと感じます。

「上流」というのが、「そこがキモ」だとしたとき、製造業の工程はまさしくその通りだと思います。鉄が無いと車は作れない。

さて、ではIT業界。
『システム会社と発注元』という関係性で製造業の工程と同様に考えると、システム会社の方が上流になる気がします。
そこが作ってくれないと発注元はサービスを使えない。
そして、開発を子会社に委託すると子会社はさらに上流になる。開発会社の依頼を受けて子会社が動く。どんどん上流が増えていき、発注元は究極の最下流へ。。

正しさはさておき、なんとなく、この考え方をしたほうが開発者が幸せになる気がしませんか?

これは自分が元開発者だったからというのが多分にありそうです。
「下流工程で、来たものを受け入れるしかない」
そう思ってしまったときに不幸が始まる。
だから、
「私は最上流工程にいて、依頼があったから作ってあげるのだ」
そう思えると気持ちが違うのではないかな、と考えた次第です。
屁理屈かもしれませんが。

個人的にはコーディング・実装が全ての最上流だと思います。
過去に発注側で開発会社から「そんな仕様のもの、作りません!!」と言われて途方に暮れた経験があります。
強烈でしたがそこで真理だとも感じました。

作ってもらわないとサービスはリリース出来ないし、お客さんに触ってもらうことも出来ないのです。
金を払ったものが神なのではなく、作っていただいたことに感謝して金を払うのです。

私は今日も、発注側で開発者が幸せになる発注の仕方を考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?