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元戦略コンサルのパートナーがUbieで得心したテックベンチャーの本質

Ubie株式会社の"SAM"こと、大原聡です。

私は、30年あまりにわたるキャリアの大半をグローバル戦略コンサルティングファームで過ごした後、ヘルステックベンチャーのUbieに参画しました。
前職の後半は、幹部パートナーとして多数のプロジェクトを統括し、幅広い経営テーマに取り組んできました。
経験という意味では、「戦略のオタク」と言えるのではないかと思います。

主な経歴:
ベイン・アンド・カンパニー、ローランド・ベルガー、シグマクシス、アーサー・ディ・リトル(ADL)においてパートナー/マネージングディレクターを歴任。
直近はADLで、日本におけるHealthcare/Life Science、およびStrategy&Organizationのプラクティスを統括。
他にも、投資銀行勤務(ゴールドマン・サックス)や金融ベンチャー設立(不動産投資ファンド)の経験を有する。

ここでは、入社前の認識と入社後の気づきを振り返り、Ubieの特異性とテックベンチャーの経営の要素について所感をお話します。

読者には、戦略コンサルや大企業で新規事業開発の経験をもち、将来は我々のような企業への転職を考えられている方もおられるでしょう。
この記事が、皆さんがUbieに来て何が面白いのかを理解し、飛び込んで頂くきっかけになれば嬉しいです。

#入社前に考えたこと

転職に当たって、今更なぜテックベンチャーに行くことにしたのか、そしてなぜUbieを選んだのか、よく聞かれました。

目的は、全く異なる環境に身をおいて、自分自身の潜在能力をもう一段進化させるためです。
しかしながら、人生で残された時間を考えると失敗はしたくないのも本音。このため、「戦略のオタク」なりの見立てで、Ubieを選びました。

<勝ち組のビジネスモデル>
外からみたUbieの魅力は、巨大な成長ポテンシャル事業モデルの成功要件を明確に意識していることでした。

1.医療システムで深刻化しつつある「生産性」の課題に着眼し、本質的な解決を提供する
2.複層的な医療エコシステムの「プラットフォーム」として、幅広いステークホルダーが利用し、多彩なマネタイズの機会がある

UbieのAI問診は、診断や治療そのものの代替手段ではなく、患者や医師のケアプロセスの効率健全性を高めるものです。
また、患者を最適な医療機関に導き、患者と医師が疾患に向き合う場面へのアクセスを製薬企業や保険者に提供します。
マッチングメディアとしての役割を果たすことで、単体顧客からの収益に頼らず、相乗効果を高めることもできます。

<イノベーティブな組織>
加えて、イノベーション創造型フラットな組織を志向し、Googleなどを積極的にベンチマーキングしていることにも関心を持ちました。
前職でもこうしたスタディをやっていたので意味は理解しましたが、どこまで具体化されているのかはまだ実感がありませんでした。

Ubieが目指している社会的な意義や、ビジネスモデルと組織・人財のセンスの良さに惹かれました。
一方で、壮大な構想の実現に時間がかかるリスクは、覚悟する必要があるだろうと正直思いました。


#入社後に見たもの

Ubieに参加してみて、ビジネスモデルは想像どおりの内容でした。
しかし、事業展開や組織運営の仕方については、新しい発見の連続です。
従来の戦略セオリーにはない発想もあり、違和感を覚えたこともあります。

今後3年間で構想を実現すると豪語する背景には、裏付けのある方法論と具体的な取り組みがあることを知りました。

(1)垂直的な事業の立上げ

<ドリル式の仮説検証>
イノベーションに試行錯誤は付きものですが、大半の企業の新規事業・製品開発では、このコントロールに失敗しています。
やはり十分に戦略方針と製品企画・設計を作り込んでから開発と検証を始める方が、成功確度が高いというのがこれまでの経験則でした。

Ubieでも初期仮説は作りますが、検討に時間をかけすぎず、高速で開発検証して軌道修正をかけるサイクルを回します。
当たり前にも聞こえますが、鍵となるのは合理的なプロセスの徹底です。

1.途中で他オプションを平行して検討したり議論を遡ることは避け、対象をフォーカスして検証を行う
2.初期の段階では、競合環境や提携などの要素は、明確な前提の設定と有効性の判断を妨げるので取り上げない
3.ROIとリスクが最大にみえる機会を選択し、たたみかけるように実効性のブレークスルーを追求する

Ubieの運営思想である"Giant Leap"や"Lauch & Launch"とは、発散的なアイデア議論ではなく、本質的解決に絞った深堀り検証の連続です。

<検証ステージの明確化>
デジタルの事業開発における、プロダクト検証のツボも理解が進みました。
例えば、革新的なものでは、CPF(顧客ニーズ検証)やPSF(ソリューション検証)よりPMF(市場適合検証)の重要性や負荷が高い。

新奇性が高いので顧客の食いつきは良いのですが、いざ導入や利用となると、慣習とのずれも起こり成果をだすことが難しい。
PMFをやり切れるかが成否を分けると言っても過言ではありません。

企画~PoC獲得~本格展開で描かれるロードマップでは、検証段階の解像度が低く、PMFが不十分なままスケール化に移行して失敗が起こります。
Ubieでは、既にPMFの構成要素の整理とアプローチの型化が行わています。

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(2)同時多発的な事業の推進

<総合的な系の構築>
構想の実現に時間がかかると思ったのには、2つの理由があります。
まず、ヘルスケア業界は複雑で、全体の構造や体質を変えるには、ステークホルダー間相互の調整が必要なこと。
加えて、スタートアップの体力では、コア事業を確立しないまま、次の事業に進めるのは、財務的にリスクが高いことです。

通常なら、シークエンシャルな事業展開にならざるを得ない。
しかし、実際にUbieは、患者、病院・診療所、製薬・保険向けの事業を同時に開始し、バランスを取りながら成長させています。
海外事業も早期から着手し、フルスコープでの事業拡大を目指しています。

一見すると、選択と集中の原則に反する無謀な展開方針です。
しかし、事業を行う側に立つことで、同時多発的な推進こそが、シナジーと全体のROIを最大化するやり方だと再認識しました。

1.エコシステムを変革し、プラットフォームリーダーとなるには、同時に要所を押さえて一気呵成に展開する必要がある
2.全体収益を安定化させることができ、各領域での施策の自由度が高まり、機動的な投資が可能である
3.ステークホルダー間のマッチングの拡大に伴う包括的なデータ集積により、事業価値を二次曲線的に伸ばせる

局所的な戦いをすると、追随する競合との差別化に終始し、ニッチなポジションに追い込まれる恐れがあります。
また、コア事業で地位を築けても、他領域への展開は提携に頼ることになり、収益プールを浸食され、推進の不確実性が高まります。

<整合化された目標管理>
UbieにおけるOKR(目標と鍵となる成果)は、短期的な事業収益の獲得ではなく、中長期的な事業成長に向けたアセットの強化です。
全社OKRは、事業毎のOKRに分解されますが、それぞれが全体成果の最大化に向けて整合化され、全体の事業基盤に資する項目が優先されます。

各事業の方向性や進捗の足並みが揃わず、バランスが崩れて個別最適を追求し始めることが、最大の問題だと捉えています。
これを防止するために、週次でOKRの達成状況や課題がメンバー全員に共有され、解決に向けた施策が各分野で検討されます。

全体最適に向けた、横串での共通管理が仕組みとして整備されています。

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(3)『超』アジャイル型の組織づくり

<組織図のないチーム構造>
事業の垂直的立上げや同時多発的な推進を行うには、チーム内およびチーム間の密な連携性とリソースの流動性が不可欠です。

Ubieの組織(開発職能)は、サークルとロールで構成されています。
サークルはOKRの実現のために組成されたチーム、ロールはサークルを機能させるための役割です。
通常企業での部門・部署のようにも見えますが、主旨と運営が異なります。

1.サークルは目的やテーマより形成されており、新たな課題解決が必要な場合は、いつでもサークルが新設される
2.サークルは、固定的なサイロではなく、必要なロールに応じて適切な能力と参加希望をもつスタッフが配置される。
3.サークルの目標は、それ単体での成功ではなく、全社的な成功に貢献することである。

私も分野の異なる3つのサークルに所属してますが、全体で最適な成果が生れるよう、参画先を変更していきます。

Ubieの組織図は、典型的な「箱と線」では描けません。
目的を中心にしたサークルの集合体であり、形状も自在に変化します。

<集団的リーダーシップ>
組織構造に加えて、ガバナンス様式にも特徴があります。
運営スピードを高めるため、意思決定にかかる時間は大幅に削減されます。

組織における権限の移譲が徹底しており、執行する現場側が意思決定をリードするのが原則です。
例えば、小サークルは問題指摘がない限り、上位の大サークルの承認を取らずに決定でき、当事者以外を巻き込んだ合議は極力排除されます。

また、「ホラクラシー」が制度として確立されており、運営は人事次第ではなく、「憲法」で規定されています。
メンバー全員が対等な立場全ての情報の共有を保証されており、各自が全体経営者の意識をもって、自己判断で動くことが求められます。

階層型組織の弊害を廃止しながら、同時に秩序ある動きもできる、絶妙な運営が追求されています。

<メンバーの同質性>
サークル間で機動的にリソースの移動ができるためには、スタッフの動き方や能力が均質である必要があります。

Ubieのメンバーは多様なバックグラウンドをもちますが、組織運営における価値観や行動原則は完全に一致していることが要求されます。
このため、入社時のコーチングや継続的な相互フィードバックが提供され、マインドセットの転換と進化に注力がなされています。

また、厳格な人財要件にそって採用が行われ、入社後は逆に評価をなくすことで、相互の信頼性と全体の一体感を高めるアプローチが採られています。

この結果、忖度なくモノが言い合え、共通の目標の達成に集中できる文化が生まれています。

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#さいごに

参画してみて、スタートアップながら、スマートな「山の上り方」と厚みのある「組織の基盤」に基づく経営を目指していることに驚きました。

不確実性の高いテックベンチャーでは、周到な戦略策定やビジネスモデルの設計が成功要件ではありません。
肝心なのは、圧倒的な成果実現スピードによる、事業の垂直的立上げ同時多発的な展開。そして、それを支える『超』アジャイル型組織の構築です。

10年前に読んだイノベーション論の書籍で、これからは「戦略が組織を規定する」ではなく、「強い組織があれば戦略はついてくる」というヒントを得ました。

ようやく実物に見える企業に身を置くことになりましたが、この考え方と手法が広がれば、日本の産業全体が本格的に変わる気がしています。
そのためにも、我々が必ず結果を出したいと強く感じています。

興味を頂いた皆さんにも、是非ご参加頂ければと思います。

【お知らせ】

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