電動歯ブラシに人生を狂わされた
物心がついた頃から電動歯ブラシが欲しくて欲しくてたまらなかった。
"歯垢除去力99%"とか"音波水流"とかいう大人になった今では嘘臭いとしか思えないようなコマーシャル。
男子としてこの世に生を受けた時から心に宿した遺伝子レベルのメカへの憧れ。
よくわからんけどなんか使ってたらかっこよさそう。
そんな幼稚な衝動から母親に電動歯ブラシをしきりにねだり続けていた幼少期の僕だったのですが、「高いからダメ。どうせすぐ使わなくなる。手磨きから逃げるな。」と、買ってもらえる日が来ることはなく、気が付けばこの世に電気で動く歯ブラシが存在するということすら忘れてしまっていました。
あれから15年ほど経ち、自分が欲しい物は自分で買えるようになった僕は、寝付けない夜にふと電動歯ブラシの存在を思い出し、寝るのを諦め、レビュー動画を舐めるように見ていたら気付けば深夜のテンションで買っていました。買ってしまっていました。
あのコマーシャルみたいにめっちゃ綺麗に磨けるはず！なんて夢はもう1ミリも抱いてないけど、幼い頃に抑圧され続けたものが大人になって爆発してしまうそれと同じような感じで手を出しました。
この軽率な選択が人生を狂わせてしまいました。
───もう、手磨きには戻れない。
電動歯ブラシとの馴れ初め
電動歯ブラシが届いた日は残業で帰るのが遅くなって疲れきっていたこともあり、「また散財でストレス発散してしまったな。」と自己嫌悪に苛まれ、中身を確認することもなく眠りについてしまいました。
翌朝、出勤前に床に転がったダンボールを見てまたブルーな気持ちになりながらも雑にガムテープを引っ剥がし、説明書も読む気力もなかったので、とりあえずブラシを水で濡らし、歯磨き粉を付けて、何も考えずスイッチを入れました、、、
途端に飛び散る水しぶき、
滑り落ちていく歯磨き粉、
チーズファウンテンに失敗したYouTuberみたいになる僕。
第一印象はまじで最悪でした。
実際に磨いてみても振動が想像以上で口が痒くなる。
油断すると唾液が水しぶきになって四散する。
磨き終えても満足感がない。
無駄なものにお金を使ってしまった。と、泣きながら出勤しました。その日はもう電動歯ブラシを使いませんでした。
そして翌日、休日だったのでゆっくり説明書を読んでもう一度電動歯ブラシと向き合ってみることにしました。
よく考えれば分かることなのですが、説明書には「口内にブラシを入れてからスイッチを入れてください。」「初めのうちは振動を不快に感じますがそのうち慣れます。」「ゴシゴシ磨くのではなく押し当てるように磨いてください。」と、大変ご丁寧に猿でも分かるように書いてくれていました。
一気に不安が解消された単純思考の僕は、ニコニコしながら電動歯ブラシで歯を磨き始めました。電動歯ブラシとの出会いのみならず、どんな時も「相手の事をもっと知りたい。」という心持ちがとても大切です。それが僕にはなかったので数多の人付き合いで失敗し続け今に至ります。
説明書に書かれた磨き方を参考に、感覚を研ぎ澄ましながら丁寧に丁寧に磨いていきました。歯面には45゜の角度でブラシを2秒間当てる。奥歯の外側や前歯の裏はブラシを立てて2秒間当てる。力を入れすぎず。水しぶきが飛ばないように口を閉じて。
磨くポジションを変える合図に合わせて歯磨きを進めていく。
どんどん歯が綺麗になっていく感覚。
あれ？
「歯磨きって、楽しいな、、、」
朝の幼児向け番組を見た幼児さながらの笑顔と一緒に口の隙間から少し水しぶきをこぼしながら僕は電動歯ブラシとの和解に成功しました。いがみ合っていた昨日が嘘のようでした。(歯磨き一回分の時間が経過すると自動で止まる仕様だけどなんか嬉しくなって3周した。歯には良くないかもしれない。)
磨き終えたときにはもう歯はツルッツルだわ、磨き残しはないわ、手磨きより断然楽だわ、専用ブラシに付け替えて舌磨きもできるわで大感動。大満足。舌で触った感触だけじゃなく、実際に鏡で見ても歯がキラッキラに輝いてやがる。
何より歯磨きという行為が楽しくなる。
「コーヒーとタバコという歯の天敵ツートップと仲良くしてしまってるからちょっとお金かけてみるかー」ぐらいの後付みたいな軽い動機だったので正直ここまでの効果は期待してなかったです。
しかも、ご飯を食べたあともまだツルツルが続いてるんですよ。磨いた後も僕の歯を守ってくれるなんてもう足向けて眠れません。
心の底からおすすめします
歯ブラシは人から借りたりできないので試せる機会がほぼないですし値段もそこそこしますが、後悔はさせないので騙されたと思って一度買って使ってみてほしい。と思うぐらい良い意味で人生が狂いました。
何もしたくない夜や憂鬱な朝が苦痛な方に、特におすすめです。
今までの二十余年、過酷な反復運動を強いていた僕の右腕には謝っても謝りきれず心が痛みます。
皆さんもぜひ同じ苦しみを味わってみてください。
※とりあえず僕が買った電動歯ブラシのリンクを貼っておきますが、メーカーや機種によって機能や価格が全然違うので、眠れない夜にでもレビュー動画を漁りまくって自分に合った一本を見つけていただくのがおすすめです。
(アフィリエイトとかではないので何回でも踏んでもらって大丈夫なリンクです。)
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