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もしかしてそれは喫緊の課題だったのか

前回の続き。

40分の丁寧な下準備の結果、たった一回の注射で採決を成功させてくれた2人の看護師さんに心底、感謝して得た血液検査の結果は、予想を裏切らないものだった。中でも炎症を示す値が大きくて、やっぱりなーと思う。

かかりつけ医は田舎の町の小さいお医者さん、なので、検査できる項目が少ない。この結果では原因を特定することができないらしい。それでも、と聞いた息子氏の仮の見立てによると、おそらく腎臓か肝臓に腫瘍があって悪さをしているのだろうと思われ、黄疸や浮腫みの改善には、簡単なものであっても手術しかないのではないか、ということだった。

95歳にもなった祖母が、(彼女の性格からして)入院・手術に耐えられるとは家族は誰も思ってはおらず、できるだけ長く家で過ごさせたい旨を伝えたけれど、どうやら他に治療法がないらしく、とにかく大きな病院に行って検査してきてください、と言われた。

大病院の検査は時間がかかる。いつ行こうか、と思っていたら息子氏がさらりと「これから検査に行ってください」と言った。

えー、いまから?本日は土曜日ですけれど?しかももう11時だけど、これから行って大丈夫????

土曜日って検査できる項目が少ないんじゃないですか、と私が言うと息子氏は「そうですね、終わらなかったら入院していただいて」とかのたまう。ここに来るだけでも嫌そうだったのに(先生方にはいい顔してるけど、家ではそうだった)、これからまた検査なんて。採血に40分もかかる人が、一日にふたつの病院に行くなんて、酷すぎる。

「祖母は疲れているので、今日は家に帰ります」

「そうですよね、続けては辛いですよね」・・・なんだよ息子氏、分かってるんじゃん。

と、思ったのもつかの間。実はおばあさんの検査結果なんですが、いろんな値が高くて、もしかしたらこの週末に意識混濁が起こる可能性もあるんですが、大丈夫ですか?と息子氏が言った。どうやら検査もさることながら、週末に容態が急変すると困るだろうから、とりあえず検査を口実に入院しておいたらどうですか、という意図らしい。

なるほど。そういうランクということか。

意識混濁以外にはなにがありますか?と尋ねると、第一は高熱が出ることだという。それから、意識の混濁。いずれも緊急事態になるので、そうなったらすぐに救急に駆け込んでください、と言われた。それは大丈夫。誰か必ず家にいるし、何かあれば病院に駆けつけられる。うちは数年前に祖父を自宅で看取っているし、対処できると思います、と伝えると、息子氏はじゃあ、発熱に備えて頓服を処方するので、なにかあったらそれを飲ませて救急に行ってください、と言った。

了解、それなら大丈夫。

紹介状を書くので、月曜に検査に行ってくださいね、と息子氏。連日、病院だと祖母がいぶかしがるかもしれないし、月曜は混んでいるだろうと思い、火曜じゃダメですか?と聞いたけれど、それはあえなく却下。検査の予約が必要なので、月曜日に行ってくださいね、と言われた。

月曜の朝に紹介状を取りに来てから検査に行くことになり、ベットで寝ていた祖母を起こして、処方箋をもらって病院を出た。出された薬は頓服が5回分だけ。服用での対処はできません、ということだ。

車に乗ってなにか食べたいものがあるかと尋ねたら、祖母がたこ焼きがいいな、と言った。ついでにタイ焼きも買って家に帰る。病院についた時は目も黄色味がかかっていたくらいひどく黄疸が出ていたのに、今は顔がうっすら黄色いだけ。慣れてない人なら気がつかないかもしれないな、という程度。特に何をしたわけでもない。採血がよかったわけでもないだろうに、人って不思議なものだ。気分屋な祖母にはよくあることだけれど、病院に行って元気になったのは、気持ちが変わったせいかもしれない。

お昼には少し早かったけれど、動いておなかが空いたのか、祖母はたこ焼きを4個とタイ焼きを1匹半ぺろりとたいらげた。きちんと着替えをしてリビングのソファでしばらくテレビを見る。黄疸とひどく腫れた足の甲さえなければ、普段よりも調子が良さそうなくらいだ。そのうちお昼になって外に出ていた父と母も戻ってきて、診察の結果を聞きたそうにしていたけれど、祖母がいる前で話すのはなんとなく憚られる。それで今日はいつもの先生じゃなく息子氏だった、とか、意外と混んでた、とか、採血に時間はかかったけれどうまかった、とか、どうでもいいことを話して時間を過ごした。

2時間ほど経って、どっこらしょ、と祖母が部屋に行ってから、診断内容を両親に説明したのだけれど、話しながら、あれ、おばちゃんって思ったよりも重症だなと思う。頭では理解しているつもりでいたけれど、なるべく軽く考えようとしていた自分に気がついた。

両親とも、今日の検査や週末の入院はしない方がいいと思っているし、私もそれで良かったと思うけれど、ここで入院の判断をする人は多いかもしれないね、と母と話す。そして話しながら、祖母の検査⇒入院⇒手術って、息子氏からみたら、けっこう喫緊の課題だったんじゃないか、という気がしてきた。

私たちの目から見れば、祖母にはまだ余力があってこの週末は大丈夫だと感じるし、高齢者が入院するということの方が大きなリスクだったけれど、祖母を知らない息子氏からすれば、あの検査結果は充分な注意信号だ(。´・ω・)

おそらく。普通の人だったら、家族の容態が急変して意識がなくなったりしたら困る。すごく困る(うちの家族&私だってすごく困るけれど)。パニックになる人だっているだろう(うちも例外なくパニクルけれど)。それを回避するのはお医者さんの大事な仕事だよなーと自分の口から他人に説明してはじめて、気がついた。

息子氏、ありがとう。あっさり「今日は行きません」とか言ってしまった。なんか意図をくみ取れない患者の親族、になってたな、私。

でも結局、祖母はこの週末は絶好調で、よく食べ、よく寝て、よく動き、とにかく快適でよかった、という時間を過ごしたのでした。

続く。

※これは祖母とのことを通じて気がついたこと、学んだことの超個人的記録ですので、悪しからず

#ひとまず日記 #学んだこと記録

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