ドラマ「やんごとなき一族」を見て、思い出した
大学生だった頃、学食でカレーを食べているとニコニコしながら近づいてきた人がいた。カレーを食べ終えて「じゃあな」と別れた。
数日後、遅いランチを食べていると、またカレーを手にして向かい側に座ってきた。
なんとなく話をするうちに友達になった。同じ学部の下級生だった。
同学年の友人から『あいつ、毎日、運転手付きの車らしいよ』と聞いて納得した。
育ちの良さを感じていたからだ。
だからといって特別扱いをする気にはならなかった。
友達になって一カ月ほど過ぎたころだった。
携帯電話がない頃だから、自宅に電話した。
すると、電話に出た凛とした声の女性に、名前を確かめられてからこう言われた。
『わたくしどもはお宅様のような下々のお方とお付き合い致しかねます。二度とお電話をなさらないでいただきたい』
ええっ?
《しもじも》って? なんだ?
そんなことを言われたのは生まれて初めてだった。
確かに、うちの親は庶民だ。下々なんだろうな。
その友人がふつうじゃないかも?と思った出来事がある。
ひとりで暮らしているという家に招かれたことがあった。
差し障りがあるといけないので具体的な場所は書かない。
こんな所に下宿があるのかよ?と思いながら、住所を辿って行ってみると、使い込まれた木の大樽が無造作に置いてある蔵のような大きな木造の建物に行き着いた。それが下宿?だった。
予想と全く異なる建物に違和感があった。同時に歴史のような何かを感じた。
友人の家は富裕層なんだろうとは思った。
けれど、その時は深く考えなかった。
ひとり暮らしだと聞いていたのに、凛とした佇まいの和服の若い女性がかいがいしく世話をしてくれた。
その女性が食事を用意してくれて友人と歓談した。
彼女と同棲しているのかと聞くと、そういう女性ではないと返ってきた。
世話係のような女性らしかった。
あれから何十年後。
ドラマ《やんごとなき一族》を見て、思い出した。
彼はそんな一族だったのかもしれない。
当時、近所のおばさんから『あなたのことを聞き回ってる人がいるよ。何かしたの?』と言われたことがあった。
おそらく身辺調査があって、私は除外されたのだろう。
憤りは感じない。
そういう世界もあるのだろうな。
ドラマの設定では、たかだか400年で威張っているけれど、【とある街】では戦前から続いていないとダメらしい。
戦前というのは、応仁の乱の前ということで、創業明治○年ていどでは、老舗の「し」にもならないそうだ。
彼の家系は、戦前(応仁の乱以前)から続いていると、下宿?に行った時に聞いた。
あの当時は気にならなかったけれど、今になって考えてみると、まさに「やんごとなき一族」じゃないか。
もちろん付き合いは途絶えたまま、ずーっとないわ。
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