まなざし

横断歩道の前に男女がいた。後ろから近づいてきている私に気づいていないようで、女が男に抱きついた。

男の肩越しに、女と目が合った。

嬉しそうに丸まっていた目元が、みるみるうちに尖っていく。「おいてめえ、なに見てんだよ」という無言の抗議が聞こえる。ヤンキーの目だ。多分、隣にいる男が一度も見たことがないまなざしだ。なぜか、すまないという気持ちになった。

2人が幸せになるといいな。そう思いながら、2人を追い抜いて横断歩道を渡ろうとした。

まだ赤だった。

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