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「アングスト/不安」


ストーリー ☆☆☆☆★
  斬新さ ☆☆★★★
  異常さ ★★★★★
   総評 ☆☆☆★★

1980年にオーストラリアで起きた一家惨殺事件のわずか3年後、この事件の映画化が発表されます。公開1週間ほどでオーストリアでは打ち切り、ヨーロッパでは上映禁止、ドイツではビデオの販売すらも禁止。日本でもその時代の情勢も相まって上映叶わなかった上に、監督自身も莫大な負債を抱えることになった超問題作ですが、2020年満を辞して日本での上映が決定したことはSNSでも話題になりました。

実際にあった恐ろしい事件に基づいた映画はたくさんありますが、それらとの圧倒的な違いは『あくまで殺人犯視点』であること。被害者視点の方がもちろん恐怖が伝わりやすいですが、この映画はたぶん「観る人を怖がらせよう」とか「何かを伝えよう」とか、そんな意図では作られてないです。たぶん『この蛮行をそのまま映像化して観てもらおう』ってだけです。なので作品として起承転結なんか無いです。

だからこそ怖いんです。

これね、観てくうちに行動の意図や彼の思考を理解しようと思い始めてる自分がいるんです。そうせざるを得なくなってるんです。

はじめはもちろん行動の意味なんか理解できません。だって殺人犯の考えることだもの。途中彼が犯罪者になってしまった経緯が描かれます。幼少期から虐げられ蔑まれ、自身のサディズムが爆発する出来事に出会う。

そうして彼の過去を知ることで現在の不可解な行動との整合性を取ろうと、自然と彼に寄り添ってる自分が何より怖いんです。

脚色されてない本物のサイコパスと、そのサイコパスにいつのまにか感情移入しかけてる自分、不安定なカメラワーク、はっきりと聞こえる息遣い。全部が気持ち悪い。

非常に観る人を選ぶ作品です。

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