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幾田りらが槙原寛己にならないか心配だ

YOASOBIの武道館ワンマン、本当に感動した。いくつものLED照明を駆使した壮大な演出、ライブ用にアレンジされた名曲達、とにかくレベルの高いバックバンドの演奏技術、AyaseのMC、ikuraの涙、どれをとっても最高だった。私はオンライン参戦だったのだが、現地参戦を含め今まで見てきた10数公演のライブの中で、お世辞抜きで、一番の満足感と余韻に溢れたライブだったと思う。お世辞抜きで、骨抜きにされた。
YOASOBIのおふたり、バックバンド、その他スタッフの方々、本当にお疲れ様でした。


さて、そんなYOASOBIの大活躍の裏で、私には0.04%ほど気がかりなことがある。それは、このままYOASOBIが末永く続いていった時の、「シンガーソングライター幾田りら」の存在についてである。

元々YOASOBIというユニットは、単独で活動するAyaseと幾田りら(のちのikura)の別々の音楽家が突発的に手を組んで始まったプロジェクトであり、純粋なユニットとはほんの少し様相が違う。
昔のアーティストで例えるなら、元々音楽プロデューサーとして名の知れていた小林武史が、シンガーのakkoらと手を組んで結成したMy Little Loverと近い。作詞曲を手がける男子とボーカルの女子の構図で結成されメジャーデビューしたDREAMS COME TRUEやEvery Little Thingやいきものがかりとは、一括りにできない。

さらに、「YOASOBI」というユニット名の由来。Ayase曰く
”それぞれの活動の延長線上にYOASOBIの活動があると考え、それぞれが個人で活動する姿を昼の姿、YOASOBIとして活動する2人の姿を夜の姿と例えて色々な遊び心満載なチャレンジができることを願い名付けた。”
である。

要するに何が言いたいのかというと、Ayaseとikuraは、YOASOBIである以前にそれぞれソロの音楽家なのである。語弊があるのかもしれないが、順番をつけるとしたらソロ活動が1でYOASOBIが2である。ソロ活動は本業、YOASOBIは副業とでも表現すれば分かりやすいかもしれない。


ここで2人の「ソロ活動」と「YOASOBI」を比べてみる。Ayaseの場合、どちらにおいても作詞曲を行い歌い手に歌ってもらうという形態である。ソロ活動とYOASOBIの違いとは、言ってしまえばその歌い手が初音ミクか幾田りらかどうかである。本当はソロとYOASOBIとで曲作りに対する心持ちや細かなノウハウが違ってくると思うので決めつけはできないのだが、表面上はそう見えてくる。

対して幾田りらはどうだろうか。YOASOBIでは、Ayaseによる楽曲提供を受けており、幾田りら自身がikuraとしてYOASOBIの作詞曲に関わることは(とりあえず今のところは)ない。かたや本業の方は、シンガーソングライターすなわち、自らの手で曲を作り上げそれを自らの声で完成させるのが仕事である。元々完成している曲に自らの手で命を吹き込むYOASOBIとは、大きく勝手が違ってくるのである。


長々と語ってここでやっとタイトル回収なのだが、私がYOASOBIへの期待と応援の裏で0.04%だけ危惧していることとは、

「シンガーソングライター幾田りら」という存在に、どこへ行っても「YOASOBI」という看板がついてまわらないか

ということである。


一旦、槙原寛己という人について簡単に説明させていただきたい。
槙原寛己とは元読売ジャイアンツの投手で、かの有名なピッチャー桑田真澄、球界最高峰の賞である沢村賞を3度受賞したレジェンド・斎藤雅樹とともに1990年代を中心に「先発三本柱」の一角として往年の巨人を支えた大投手である。簡単に言ってしまえばすごいピッチャーである。

すごいピッチャーであるのだが、彼には有名な二つ名がある。それは「ミスター・パーフェクト」である。野球には、パーフェクトゲーム、いわゆる完全試合という記録がある。先発ピッチャーが、試合を終えるまで1人のランナーも出さず0点で試合を終えることが出来れば完全試合である。しかしこれはとんでもなく難しい所業で、1994年に槙原が達成してからは30年弱誰も成し遂げていない。
そんな過去の功績を評価されて、槙原はプロ野球の解説やバラエティ出演をした際、いつも「ミスターパーフェクトの槙原寛己」として紹介される。

そして裏を返せば、槙原寛己という大投手は、お茶の間から「ミスターパーフェクト」としてしか認識されていないということになる。
槙原にはもっと、巨人の歴代投手の中でも最高峰のストレートだとかキレのあるスライダーとかバックスクリーン三連発のイメージが強いが実際は阪神にめっぽう強かったとか沢山の売りがあるのだが、それらを全て引っ括めて彼は「ミスターパーフェクト」なのである。

そしてこれは、幾田りらにも同じことが言えてしまう。彼女がシンガーソングライターとしてリリースした”Answer”はストリーミングでも根強く人気で、2019年に既に世に出していた”ロマンスの約束”はリアレンジされて恋愛リアリティショーの主題歌に抜擢された。シンガーソングライター幾田りらも、YOASOBI同様実績十分の素晴らしいアーティストである。
だからこそ、ニュース番組やバラエティで幾田りらの紹介がされる際、「YOASOBIのボーカルとしても活躍する、」という謳い文句が必ずついてまわるのが少し惜しいと感じてしまう。
YOASOBIという偉業があまりにも大きすぎて、シンガーソングライター幾田りらという存在が相対的に小さく見えてしまうのである。

ここからは本当にただの筆者の妄想になる。軽く聞き流していただきたい。
今後も順調にソロ活動が続いていけば、幾田りらソロライブもあるだろう。そのライブに、「YOASOBIのボーカル幾田りら」という情報だけ持ったファンが駆けつけ、YOASOBIの曲を披露してくれることを期待していたら、夜に駆けるも群青もやってくれなかった……。なんてケースが起こりうる可能性が0ではない。それ程までに、YOASOBIという名前は世間に大きく知れ渡った、知れ渡ってしまったのである。


ここまでダラダラと語ってきたが、上記で述べたことはあくまでYOASOBIと幾田りらを応援していく中で0.04%だけ抱いているクソちっちぇ感情である。私はYOASOBIの曲が大好きで、幾田りらのソロ曲も大好きで、Ayaseのボカロ曲も大好きだ。その感情が99.96%もあるうちは大丈夫だ。

仮にこれから幾田りらが、シンガーソングライターとして音楽界の頂点を目指そうにも、その道はものすごく険しいものになる。理由は、既にYOASOBIとして音楽界の頂点を獲っちゃったからである。過去の自分を超えることだけでも至難の業なのに、その過去の自分が「ストリーミング年間1位」なのだから。頂点への道の険しさは想像を絶するものであろう。(完全試合よりも難しいんじゃね??)


しかしそんな憂い以上に、私はこれからのYOASOBIと幾田りらの活躍が楽しみで楽しみで仕方がない。誰ぞやの歌の歌詞ではないが、YOASOBIがナンバーワンとか幾田りらがナンバーツーとかではない。どちらも素晴らしく尊いオンリーワンなのである。


最後に結論。
インディーズアーティストの楽曲を中心に配信している音楽アプリ「eggs」にも収録されている、幾田りらのソロ曲「'17」がマジのガチの名曲なのでぜひ聴いてみてください。YouTubeにもあります。URL載せてます。よろしくお願いいたします。もちろんYOASOBIも変わらずよろしくお願いいたします。
あと槙原寛己のYouTubeチャンネルも面白いのでぜひに。https://youtu.be/meNjyRnG8D8

※追記(2022/6/21)
ロッテの佐々木朗希投手、完全試合達成おめでとうございます。槙原寛己氏は「ミスターパーフェクト」ではなくなったかもしれませんが、「平成のミスターパーフェクト」として語り継がれることだと思います。

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