【感想・攻略】Qualia-盲唖の歌姫-
【作品ページ】コチラ
【一言紹介】ハードボイルドなセリフ回しの妙が光るサイバーパンクRPG
【制作】すぎやん 様
【プレイ時間】中編(3時間~)
【ジャンル】RPG、ADV、マルチシナリオ
【傾向】近未来、SF、サイバーパンク、ハードボイルド、サスペンス
【ファイルサイズ】20MB
【筆者プレイ日】12/5
【筆者プレイ状況】シナリオA、B、C、Dクリア
【制作ツール】RPGツクール2000
【配布形態】ダウンロード(RTP必須※)
※Windows10で遊ぶための手順を記事にまとめています。
【動作環境】PC+MIDI音源※(あれば音が綺麗)
※こだわりの楽曲を美しく聞くための手順を記事にまとめています。
紹介・感想(ネタバレ少な目)
RPGツクール2000で作られたマルチシナリオRPGです。かなりシナリオ重視で、ADV的な側面も強いです。第13回ふりーむ!ゲームコンテストで「RPG特別賞」を受賞された作品とのこと。
私がプレイするきっかけになったのは追憶様のレビューを読んだのがきっかけですので、コチラも是非ご覧ください。
遊び方などは上のほうに記事のリンクを貼っていますので、そちらを参照ください。
シナリオは4種類あるそうです。序盤の探索パート(戦闘なし)でルートが分岐します。各ルート3時間くらいです。クリアすると、他のルートへ入るためのヒントが貰えます。
私はまだAとBしかプレイできていませんが、その時点でとてつもなく面白かったので、こうして記事を書いています。プレイできたらCとDについても追記します。個人的にはB→Aの順番がおススメです。残りもプレイしたら意見が変わるかもしれませんが。
※12.20追記 Cをクリアしました。Aクリア後のほうが良さそうな内容です。
※12.26追記 Dをクリアしました。難易度は公式に書いてある通り一番難しいです。色々なキャラが登場するので、最後にプレイするのがいいです。作者様の過去作と関連があるみたいです。
シナリオ重視とは言いましたが、他の要素も素晴らしいです。世界観の奥深さ、精緻に作り込まれた密度の高いマップ、オリジナルの戦闘システム、こだわりのBGMなどどれを取っても一級品です。
2000年代にゲームをしていた世代にとってはきっと懐かしく迎えられることでしょう。もっと上の方や、若い方にとってどのように映るのかは大変興味があるところです。作中でリッカーマンが言うには、30過ぎたら皆おっさんらしいので、若干ショックを受けています。私も「いつだって黄金時代」だと言えるような歳の取り方をしたいものです。
サイバー技術が高度に発展した世界で、一流のハッキングスキルと旧時代的なスタイルを併せ持つ主人公が活躍する様は、見ていて小気味よいものがあります。
そしてアンドロイドと人間の境界はどこにあるのかという哲学的な問いも内包しています。思考実験として有名な「中国語の部屋」や「沼男」に関わる部分にはロマンを掻き立てられますよね。
シナリオA(ネタバレあり)
サブタイトル:熱狂のクオリア
2番目にプレイしたシナリオです。作品紹介ページによるとメインシナリオの位置づけとのこと。確かに、思春期の少女の夢と葛藤が描かれる王道ど真ん中の展開はメインと呼ぶにふさわしいです。ただ、個人的にはBを先にプレイしておいて良かったなと思っています。Aは「人」に、Bは「事件」に焦点が当てられていると思うので、事件を楽しむならBからがおススメ。
このシナリオの主役は、作品のタイトル通り"盲唖の歌姫"ことセーラだと感じました。ロートルのリッカーマンはその手助けをするのみです。
まずセーラについて紹介します。セーラは、"盲"すなわち目が見えず、"唖"すなわち声が出せません。これは先天的なものです。彼女の心中はわかりませんが、幼少期は幸せなものではなかったようです。そんな彼女に転機が訪れます。父が開発した人工声帯と人工視覚により、彼女の世界は大きく広がり、歌姫と呼ばれるまでになったのです。
華々しい名声の影で、彼女の心中には常にある疑念がありました。人工の声は本当に自分のものなのか。どれほど精巧であっても作り物でしかないのではないか。そこに本当の感動はあるのか。
作られたものと、人間の境界という哲学的な問いを真正面から描きながら、彼女なりの答えを模索する過程がドラマティックに示されます。これほどサイバー技術が発達した世界観だからこそ説得力を持つ数々の葛藤が素晴らしかったです。
そして何といってもラストバトル。静寂を破り、彼女の叫びとともにBGMを流す演出は戦慄の出来栄えです。本作ではキャラクターの能力があまり伸びないので、ラスボスはとてつもなく強く感じるはずです。その強大な敵に立ち向かう感覚が、プレイヤーの感情を高める。RPGの醍醐味だと思います。
シナリオB(ネタバレあり)
サブタイトル:嘘と真の境界
1番目にプレイしたシナリオです。個人的には、これを最初にプレイして良かったと思います。探偵的な側面の強いシナリオなので、登場人物の関係性がわからない最初にプレイすると、誰も彼も疑わしく思えてサスペンス感が強いです。また、物語の背景も良く理解できます。
このシナリオの主役は、生涯現役の渋いおっさんリッカーマンだと感じました。そしてその弟子であり、相棒でもあるマルコの出番も多いです。
中二病をくすぐられる刺激的なワードと展開が盛り沢山です。これを渋いおっさんがやると実に格好良いし、セリフに深みを感じさせるのです。おっさんが格好良いゲームは神ゲーと相場が決まっています。リッカーマン語録を作りたくなるくらいに良いセリフが多いキャラクタです。
リッカーマンとマルコは軽口をたたきながらも強い信頼関係があり、2人揃えば無敵といった超一流の風格があります。これに対する敵も相応に手ごわく、気が抜けない緊張感のある展開です。捜査を進めるごとに容疑者は徐々に絞られていきます。意味深なセリフが随所に散りばめられています。もしかしてコイツが黒幕か、いやまさかと考える過程が非常に面白く、おそらく余程鋭い人でなければ真相には気付かないでしょう。
クライマックスの盛り上がりは最高潮!個人的にはこれ以上ない好みの展開です。それまでのボスとは一線を画す強さのラスボスに痺れます。
Yo, little punk. Looks fun, ya?
Shut up, old bastard!
このシーンのやり取りが好きすぎて、目頭が熱くなり、手が震えました。是非、ご自分の目で確かめてください!
タイトルの回収も実に鮮やかです。序盤の伏線を回収しつつのラストシーンはハードボイルドで、おっさんが主人公である真価が発揮されていると感じました。
シナリオC(ネタバレあり)
サブタイトル:先駆け
3番目にクリアしたシナリオです。AとBの少なくとも一方はクリアしてからが良いでしょう。恐らく多くのプレイヤーが引っ掛かりを覚えていたはずの彼女らに焦点が当てられます。終盤の展開はかなり予想外です。シナリオA、Bをクリアした後なら尚更。
主役はアンドロイドたちです。限りなく精巧なアンドロイドは心を持ちうるのか。「機械の身体を持った人間」の葛藤を描いたシナリオAを補完する位置づけです。「人間の心を持った機械」は存在するのでしょうか。
実は、スレアK-IIIの扱いに関して少し疑問を持っていたのですが、その点に言及した物語を描いて下さり感動しています。これだけ多面的な視点から物語を展開されているのは凄いことです。登場人物それぞれが、自分なりの想いを抱いて行動していることが伝わってきます。マルチシナリオが物語に深みを与えています。
このシナリオの主役は答えの出せない葛藤に苛まれています。結果は知っている。報われないことも知っている。でも行動せずにはいられない。個人的には、その矛盾したあり様にこそ心を感じました。
グラフィックは和風のものが多用されていて一味違う雰囲気が良かったです!特に中ボスのグラフィック良すぎませんか?あと回想シーンの遠景もめちゃくちゃ好みでした。
なお、このルートは謎解きが他より難解なのでご注意を。しかしそれ以上に厄介だったのは人間の動体視力と反射神経の限界に挑むギミック。心折れかけましたが、50回くらい挑戦して何とか突破。何か知らない操作テクニックがあるのだろうか。単純に私が鈍いのもありますが。
シナリオD(ネタバレあり)
サブタイトル:プライドの坩堝
4番目にクリアしたシナリオです。内容は他と独立しているのですが、他のシナリオで匂わせる程度だったエピソードやキャラクタが掘り下げられているという点では、おまけ感があります。なので、A、B、Cをクリアした後が一番楽しめるでしょう。また、作者様の過去作の関連キャラクタが登場するので、そちらをプレイすると一層楽しめそうです。ただし、アクション要素の難易度は一番高いです。
登場キャラクタ皆が主役となるエピソードです。え、コイツに見せ場があるの!?と思ってしまうような意外なキャラクタまで活躍できる群像劇です。ここまでプレイしてきたあなたなら、そんなエキストラたちにも愛着を持っていますよね?
このシナリオではリッカーマンを霞ませるほど他のキャラの名言が多かったです。マッドタクシイィィィィーーー!!から続く一連のセリフが一番好き。小物っぽいヤンキーたちが一本筋を通すって最高。
サブタイトル通り、プライドのぶつかり合いです。この船には不器用な馬鹿たちしか乗っていないので、漏れなく熱い展開です。理屈ではなく、想いに突き動かされるのです。
あと、他よりコメディ色が強いですね。マッドタクシーは言うに及ばず、モックン、ベリオット、クリシアが出てくるとギャグになる。モックンは安定のギャグ要員。ベリオットはその顔に似合わない発言が面白過ぎる。クリシアはハイスペックなドジっ子。ダリークとマルコは仕事しようね。他のシナリオではあんなにキマッてたじゃないか。
さて、途中でバイクのミニゲームが挟まれるのですが、これが非常に難しい!何回もやり直してクリア(被弾16回、回復5/6だったかな?)したのですが、今度は免許を取りましょうと言われてしまいました。この時点で嫌な予感はしていたのです。作者様の求めるプレイスキルに達していないのでは?と。
案の定、ラスボスの戦慄の強さに泣きそうになりました。結局目押しはできず、中ボス戦でギリギリまで節約して、ラスボスにアイテムをMAX持ち込むことでゴリ押しました。でもアクションが得意じゃなくてもなんとかなるということは証明されました。
最後のシーン、あえて彼女の名前を表記しない演出が良かったですね。
気になった点など感想(ネタバレなし)
シナリオの導線はややわかりにくいです。次の目的地を探して船内をウロウロする時間がどうしても長くなります。足で稼ぐリッカーマンのスタイルをシステム面でも表しているといえばそうなのですが、好みはわかれるところかと思います。敵シンボルの動きも比較的速いので、回避も難しいですしね。なお、逃走可能です。
また、戦闘システムとして、ボスでは目押しがほぼ必須となるくらいの難易度です。そういう意味で、多少プレイヤーを選ぶと思います。もちろんステータスを強化すればごり押しも可能でしょうが。戦闘スピードが速いわけではないので、強化には時間が掛かります。
攻略(ネタバレしかない)
自力で攻略されるのがおススメですが、次の目的地が分からずに途中でやめてしまうなんてもったいないので、各ルートの行き先だけメモしておきます。お役立てください。
船内見取り図
船内の各所に置いてある端末で確認できます。
地下の見取り図は、たぶんありません。
シナリオA
「控室」で憲兵たちを見る
「船主側制御室」でレオンに会う
「控室」で歌声を聞く
「中央ロビー」で富豪の息子と話す
「コンサート会場」へ行く
黒服の男からライフルをゲット
「会議室」でショットガンをゲット
「備品保管室」でキルナインをゲット
「衛星通信室」へ
2F右上の行き止まりへ
船後方の地下へ
「船主側制御室」で倉庫のパス入手
船後方の地下へ
「衛星通信室」へ
「コンサート会場」へ
「控室」へ
シナリオB
初回でシステムがわかっていなかったのでメモしていません。
シナリオC
2階右奥で作業員の手助けをする
カード入手
「会議室」へ
個室のマスターキーを入手
1階左端の個室へ
「コンサート会場」へ
「第一電算室」へ
ロビーで作業員と会話
「第一電算室」へ
「コンサート会場」へ
第二電算室へ
社長室へ
管理区域へ
第三電算室へ
メイン演算室へ
カジノへ(途中で黄色いディスプレイの前を通るはず)
コンサート会場へ
シナリオD
カジノで1000CD稼ぐ
「WASHITSU」へ行く
地下(船後方)にあるバイクへ
コンサート会場へ
レオンから社員カードを入手
WASHITSUでエアロブラスター入手
衛星通信室へ
1F客室左端
2F客室でライフル入手
2F屋外
地下(船前方)
地下(船後方)へ
ロビーへ
地下(船後方)へ
衛星通信室へ
地下(船後方)入口へ
船首へ
ゴシック女からキャプチャリングを入手
地下(船後方)へ
おまけ部屋
各シナリオクリアの最後に表示されるパスコードを「WASHITSU」で入力しましょう。A~D全て必要です。
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