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パパのお見舞い

ベッドの上でボーっとしていたところに1人病室に入ってきた。

よぉ!

あっ、パパや。

夫がふらっと寄ってみました!
位の感じで入ってくる。

パパどうしたん?

どうしとるかなと思って。

なんということもない会話。
でも、記憶に残る限り久しぶりの家族との会話。
記憶に残ってはいないが子供達も見舞いに来てたらしいが記憶がなかった。
私自身もあまり頭が回ってないからか会話が続かない。パパはテレビをつけようとしてテレビカードがないことに気づく。
そしてテレビカードを買いに立ち上がった。

え?もう帰るの?
何しに来たん?

私だけが焦る。
病室には同室の人がいるとはいえ、私を含めて意思疎通のできる人はいない。
そんな意思疎通できなさげな人にも毎日来てくれる誰かがいる。いつも夜ご飯の後毎日お見舞いに来てもらえるのを羨ましくみてた。
なのにもう帰るの?

いや、まだ帰らんて…。
テレビカード…

帰らんがならいいわ。

パパはそんな時間もかからず戻ってきてテレビをつけた。
何日振りかはわからないけど、入院してからは初めてのテレビだった。
何も言わずに相撲を入れる。

わぁ、お相撲さん始まっとったんや。

見てもイマイチ内容が頭に入ってこない。
たた、見てるだけ。
誰々が勝った。がわかるだけ。
そんな薄っぺらい会話でも何も言わずに付き合ってくれる。家族が隣にいてくれる。
それだけで嬉しかった。
だからパパが帰るって言い出した時、保育園児みたいにヤダヤダって泣き出した。

一緒に帰る〜!
帰るの〜!!

子供が駄々こねるみたいに一緒に帰ると大騒ぎしてた。あまりの騒ぎに年配の看護師さんが部屋に来た。

あれあれ、何泣いとるんけ?
旦那さん帰ってほしくないんか。
そーかそーか
明日もお仕事あるから帰らんなんの。
また来てくれるから今日はバイバイしとこ。

そう言って宥められてる間にパパは帰って行った。

パパ!

あっ、明日の朝からご飯じゃなくてパンにしたからね。ちょっとは食べてよ〜
パン好き?

パン好きぃ❤️

じゃ食べれるね
ご飯ちゃんと食べんかったらまた点滴になるからね。点滴やーかろ?ピーピー鳴るし…。

違う話題で私の意識をパパから背けて誤魔化していた。そうこうしてるうちにご飯が運ばれてくる。いつものようにバナナだけ食べるとごちそうさまをするとベッドに寝転がった。

いつも通り前のベッドのおばあちゃんの所にお見舞いの家族が来た。なんの反応も示さないおばあちゃん。それでも毎日(だと思われる)入れ替わり立ち替わり誰かがくる。私はそれをチラッと見ると目を瞑った。すでにお休みの体制。いつもこの時間になると寝始める。看護師さん的にはもう少し起きててほしかったようだけど、見つかる前に寝てしまうのは得意だった。

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