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[ソウル暮らしのおと]日韓市民100人未来対話

今日は、日韓市民のあいだで行われているさまざまな交流のひとつとして、「日韓市民100人未来対話」についてご紹介します。

このプログラムは、 韓国国際交流財団、ソウル大学日本研究所、早稲田大学韓国学研究所が主催で、2017年に第1回目が韓国の済州島で開催されました。
その後、2018年には日本の千葉県木更津、2019年には韓国の京畿道一山と、日韓で交互に開催されてきました。

そして第4回目となる今年は、10月30日から11月1日までの3日間にわたって開かれました。
本来なら日本の静岡県で開催の予定でしたが、残念ながら新型コロナの影響で、初のオンラインでの開催となりました。

タイトルどおり、日本と韓国で活動する人々それぞれ50人ずつ、計100人の市民が一堂に会して、共通の課題を話し合うというもの。
参加する人は専門家や学者だけではなく、さまざまな分野のNGO活動家、教師や学生、企業家、文筆家などが参加しています。私は、2018年の第2回目から参加しています。

内容は、基調講演と4つの分科会、そして全体の報告と総合討論となっています。
いつもならこの3日間で、休憩時間や食事時に言葉を交わしたりして、いろんな分野の人たちと出会えるのが楽しかったのですが、オンラインではそれが叶わず、今年はその点でちょっと残念でした。
でも、対話の集中度があがり、オンラインならではの盛り上がりがありました。

はじめの特別セッションの講演は「新型コロナと日常生活の変化」について。
そして分科会のテーマは、
1)南北コリアと日本の平和協力 
2)青少年と教育・ジェンダー・多文化
3)環境と安全、災害支援
4)文化交流、草の根交流でした。
参加者は4つのセッションに分かれて、テーマ発表を通じて意見を交わします。
ちなみに私は今回、セッション4の司会を担当させていただきました。

今回は、 初日のQ&Aから分科会、そして最後の自由討論まで、かなり活発に意見が交わされた、という印象でした。
とくに、去年から引き続き日韓関係が悪いと言われているけれど、実際のところどうなの?というイシューについてはやはり関心が高く、いろんな角度から議論が白熱しました。

K-popや韓国ドラマなどのカルチャーの人気でますます韓国に関心が高まっている、と楽観的な見方を示す人もいれば、そのような関心からどこまで歴史問題や政治問題の葛藤にむきあえるのか、という厳しい見方も。
また、これまでの経験から日韓の市民どうしの関係はまったく問題ないと確信をもっている人もいれば、一方で、国同士の対立が市民交流にも影を落としている、という現実を見ている人もいます。

「日本人」はこう見ていて「韓国人」はこう見ている、というのではなく、その人がどんな活動に関わっていて、どんな人と接しているのかによって感じ方は異なると思いました。

一口に日韓関係というけれど、とても多面的で重層的だと改めて感じました。
ただ、全員に共通していたのは、市民として出会い、対話を続けていくことはとても大事だということ。そして、このコロナ時代や気候変動による災害など、人間としての共通の問題を、日韓の人々が一緒に協力しあえる場を作らなきゃならない、ということです。

こうして4年継続した市民対話は、去年つくられた小プロジェクトの実現という形で今回実を結びました。たとえば、日韓そして在日コリアンの弁護士たちによる人権プロジェクトや、「歩く文学、ソウルから東京、福岡まで」というプログラム、コロナ禍での災害ボランティアについてのシンポジウム、オンラインで合唱した「ハナイチ平和バンド」の誕生までつながっていきました。

100人の市民たちが、「いわゆる日韓問題」という凝り固まった枠を超えて、一緒に社会をつくりあげていく対話の場。
このような場が地道に根を張り、広がっていってほしいと心から思いました。

[KBS World Radio「土曜ステーション」2020.11.07放送]

http://world.kbs.co.kr/service/program_main.htm?lang=j&procode=one