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[土曜ステーション]ソウル暮らしのおと

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KBS ワールドラジオ(KBS World Radio) 日本語放送・毎週土曜日オンエアの「土曜ステーション」で紹介するコーナー『ソウル暮らしのおと』。2020年8月22日より。
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記事一覧

[ソウル暮らしのおと]西小門(ソソムン)アパート

ソウル駅から地下鉄5号線の西大門(ソデムン)駅に向かって北上すると、道路の左側に、近代的なビルや警察庁の間に挟まった不思議なかたちの建物が見えてきます。 周りの風景に不釣り合いなほど古く、長屋のように細長く連なった建物は、道に沿ってゆるくカーブしているのです。 ここは、西小門(ソソムン)アパートという名前の建物です。 1971年に承認を受け72年に完成したという50年の年季の入った7階建てのアパートで、1階が飲食店などのテナント、2階から7階までが住居となっています。1

[ソウル暮らしのおと]韓国の絵本「おばあさんの餃子づくり」

韓国のお正月は、ソルラル(ソルナル)と呼ぶ旧暦の1月1日、今年2021年は、2月12日でした。 今日は旧正月にまつわるこんな絵本をご紹介します。 손 큰 할머니의 만두 만들기(ソン クン ハルモニエ マンドゥ マンドゥルギ)、「気前のいいおばあさんの餃子づくり」です。 (文:チェ・インソン/絵:イ・オクベ、チェミマジュ刊) 韓国の正月料理といえば代表的なのがトックというお餅の入ったスープですが、餃子(マンドゥ)も欠かせない食べ物です。 日本で餃子といえば焼き餃子が多い

[ソウル暮らしのおと]“ごはん”にまつわる挨拶ことば

あいさつことばや、よく使うフレーズというのは、その国の文化や習慣を表します。 韓国ではごはんを食べること、食事することは何よりも大切なこと。 そのためか、よく使うフレーズの中に「ごはん」がとても頻繁に登場します。今日はそのうちの7つを紹介してみます。 1. 식사 하셨어요? /밥 먹었어?(シッサ ハショッソヨ?/パプ モゴッソ?)→ [直訳] 食事しましたか?/ご飯食べた? この言い回しは本当によく使います。 実際に食事したかどうかを確認しているわけではなく、ごく日常

[ソウル暮らしのおと]ぬくもり郵便箱

(写真:온기우편함(ぬくもり郵便箱)ブログより) 東野圭吾さんの小説「ナミヤ雑貨店の奇跡」という小説を読んだことはありますか。 韓国では今でも根強い人気で、去年100刷りを突破した超ベストセラーです。この小説のナミヤ雑貨店は、悩み事を手紙に書いて郵便受けに入れると返事が返ってくるというものでした。 こんな風に人に言えない悩みを誰か親身になって答えてくれたら…と、小説を読んだ人は憧れたかもしれません。 ソウルの街角に、これを叶えてくれる郵便ポストがあります。 その名も「ぬく

[ソウル暮らしのおと]コロナ時代の「ホンパプ」(ひとりご飯)

혼밥(ホンパプ)ということばを聞いたことがありますか? これは、一人で(혼자서 ホンジャソ)ご飯(밥 パプ)を食べること、という意味の造語。 韓国では食事はみんなで一緒にとるものという習慣が根強く、以前は食堂などで一人でご飯を食べるのは、ちょっと人の目が気になりました。 一人で外食なんて味気ないし、友達のいない社交性のない人だ、と見られがちだったのです。 私も、はじめてソウルで一人暮らしを始めた頃、外で一人で食事するときにしばしば困りました。 私はもともと、一人で外食するの

[ソウル暮らしのおと]ロサンゼルスの北昌洞スンドゥブ(BCD Tofu House)

(写真:BCD Tofu Houseホームページより https://www.bcdtofuhouse.com/) 2020年8月25日、ニューヨークタイムズに、ある在米韓国人の女性の追悼記事が掲載されました。今年7月に61歳で亡くなった、 北倉洞(プクチャンドン)スンドゥブ・BCD Tofu Houseの創業者、イ・ヒスクさんについての記事でした。 記事は、こんな書き出しで始まります。 「真っ赤な牛コツスープに湯気の立つ豆腐。イ・ヒスクさんは家族が眠っている間、夜な夜

[ソウル暮らしのおと]韓国の絵本「月のシャーベット」

10月29日付の朝日新聞で、こんな記事が掲載されていました。 「ひとクセある人形、言葉のない物語…いま韓国絵本が熱い」https://digital.asahi.com/articles/ASNBX5W6QNBXUTFL00P.html?iref=pc_ss_date_article 韓国ドラマやK-POPだけでなく、最近、ユニークな韓国の絵本が日本でも人気なようです。 きょうご紹介するのは、この新聞記事でも取り上げられている童話作家、ペク・ヒナさんの絵本です。 ユーモ

[ソウル暮らしのおと]日韓市民100人未来対話

今日は、日韓市民のあいだで行われているさまざまな交流のひとつとして、「日韓市民100人未来対話」についてご紹介します。 このプログラムは、 韓国国際交流財団、ソウル大学日本研究所、早稲田大学韓国学研究所が主催で、2017年に第1回目が韓国の済州島で開催されました。 その後、2018年には日本の千葉県木更津、2019年には韓国の京畿道一山と、日韓で交互に開催されてきました。 そして第4回目となる今年は、10月30日から11月1日までの3日間にわたって開かれました。 本来なら

[ソウル暮らしのおと]韓国の公衆トイレ、いまむかし

世界中どの国にも必ずあり、生活のなかでなくてはならないもの。 なのに、話題にするのがちょっと気まずいもの。 なんでしょう? 答えはトイレ。 今日は、韓国の公衆トイレについてのお話。 韓国に旅行にきて、公衆トイレで困ったことはありませんか? じつは私は、こちらに住み始めて間もないころ、公衆トイレの文化にかなり戸惑いました。 まず、小さな食堂やカフェ、特に雑居ビルに入っている店舗などでは、お店ごとにトイレがない!ということがよくあります。 ビルの階ごとにテナント共用のトイレ

[ソウル暮らしのおと]似て非なる?!韓国語と日本語の慣用句

今日は、「ことば」に関するお話。韓国語の慣用句についてです。 日本語で会話したり文章を書くとき、何気なくたくさんの慣用句をつかっていますよね。ところが、外国語として日本語を学ぶ人にとって、この慣用句というものはなかなか覚えられない「頭の痛い」ものです。この「頭が痛い」も慣用句ですね。 同じように韓国語にもたくさんの慣用句がありますが、韓国語の慣用句は日本語の慣用句と似ているか、ほぼ同じというものがとても多いのです。ところが、中にはちょっとずつ違ったり、日本語ではまったくな

[ソウル暮らしのおと]波瀾万丈な汝矣島(ヨイド)の歴史

今日は、ここKBS本社のある「汝矣島」についてのお話。 この小さな島が韓国のマンハッタンと呼ばれるに至るまで、波乱万丈な汝矣島の形成史についてです。 ソウルの漢江の中州の汝矣島。朝鮮時代は王室の家畜を飼育する牧場として使われていました。 初めて開発の手が入るのは、日本の植民地時代だった1916年。この地に「京城第2飛行場」が作られました。 韓国初の飛行士アン・チャンナムがプロペラ機で飛び立ったのも、また、ベルリンオリンピックで金メダルをとったマラソンのソン・キジョン選手が

[ソウル暮らしのおと]韓国の絵本「すいかのプール」

「土曜ステーション」では毎月3週目のコーナーで、韓国の絵本や童謡、詩を紹介します。 今回紹介する絵本は、「수박수영장 (すいかのプール)」。 (アンニョンタル著、創批刊、2015) この絵本、まっさきに表紙に目がひきつけられます。 まっ青な空色の下地に、真っ赤なすいか。そのなかにぷかっと浮かんでいる男の子。 ページを開いて物語に入ってみましょう。 じりじりと日差しの強い真夏、大きな大きなすいかがすっかり熟しました。 どれくらい大きいかというと、おじさんが 真っ二つに

[ソウル暮らしのおと]“ミョヌラギ”からみる家族の不均衡な役割

今日は、ちょっと気が早いですが、秋夕(チュソク)にまつわるこんな話を取り上げてみたいと思います。 中秋節ともいう、旧暦8月15日の秋夕。今年は10月1日です。 韓国では9月30日から秋夕の連休が始まり、例年この時期になると田舎に帰省したり旅行に出掛けたりする、いわゆる“民族大移動”が始まります。 …ですが、今年の秋夕はかなり違った様子になりそうです。 韓国政府の防疫当局は「今年の秋夕は、移動を自制して自宅で過ごしてほしい」と呼びかけています。 例年なら本家に家族親戚が集

[ソウル暮らしのおと]ゼロ・ウェイストの取り組み

ゼロウェイストは、環境を考えてごみを出さない、もしくは減らすという考え方や行動のこと。 韓国では、2018年から資源再活用法によって、カフェなどの店内で使い捨て容器の使用が制限されるなど、ごみや使い捨てに関する意識が高まっていました。 ところがそんな矢先に、新型コロナの影響で、感染予防のために使い捨て容器などが解禁に。飲食物のテイクアウトが増えたこともあり、プラスチック容器の使用が増え、また、マスクや衛生用ビニール手袋など、使い捨ての量がとても増えています。 「感染予防