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音楽

おれはビルエバンスが好きだ。ピアノの旋律がどうとか恥美とかどうでもいい。ある時ただ聴きまくっていただけなのだ。ワルツフォーデビィに代表される彼のピアノトリオは絶品だ。ジャズかくありきといった批評家じみたことはどうでもいい。批評家は肩を並べて同じようなことを書く。どうでもいい。只者じゃねえなコイツというピアノさばきと合っているのか外れてるのかわからねえけど気づくと受け入れちゃうアップライトベースとツットンシャカシャカいわせるドラムが鳴らす音楽はとにかくいい。沁みるとかアガるとかそういうことじゃねえ。いいもんはいい。食器やグラスの音が聴こえる。こんな臨場感あるか。ライブ音源って観客がウォーッと沸いてシンガロングするもんだったりするけどことワルツフォーデヴィに関してはどうやら数十人の観客しかいないところでの録音らしい。食器とグラスと地下鉄の響きと観客のまばらな拍手。これがジャズ界隈にあって追随を許さない名盤として名高いのだから正しさというものはとことん疑うべきだなとつくづく思う。本当に気持ち良さそうだ。楽器をひくことは気持ちが良い。つまづいてしまうことは多いが楽器は奏者自身でなし得ない声を発してくれる。思わぬ音がでる。それもいい。音がはずれる。すっとんきょうに漏れる。これもいい。音楽はいつも絶妙なバランスでなりたつ。せーので合わせてうまくいくとは限らない。偶然の産物、その積み重ねと時代、時の研鑽がうみだす。おれはそれを愛す。アニメ映画「音楽」でよく意味もわからず彼らはバンドを組む。どうやるのかわからない。楽器を手に入れる。音が出た。気持ちいい。これだ。生まれてよかった。かたやフォークにかぶれた青年がいる。形式ばっている。音楽とはすべからくこうあらねばならぬと。そして彼らはバンドの奏でるプリミティブな音楽に打ちのめされる。打ちのめされめざめる。ウォーッ!!音楽たのしい!!と。音楽はたのしい。生まれてきてよかった。

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