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タイトルホルダーの逃走劇から見る菊花賞及び天皇賞(春)の距離短縮論について

こんにちは。サリエリです。

先週の菊花賞、タイトルホルダー見事な逃走劇でしたね!

あの素晴らしいとしか言いようのない逃走劇は、自分の馬券が外れたことなどどうでもいいという気持ちにさせてくれました。 

それにしても鞍上の横山武史騎手、22歳の若さで、クラシックを2つも取ってしまうとは・・・先々が楽しみでしかないジョッキーが誕生しましたね。本当に素晴らしい!

さて今日は、そんなタイトルホルダーの素晴らしい逃走劇と近年チラホラ見聞きすることの多い菊花賞及び天皇賞(春)の距離短縮論を絡め、自分なりの考えを整理してみたいと思います。

菊花賞及び天皇賞(春)の距離短縮論とは

現在、3,000m及び3,200mで行われている両レースを、2,400m前後の距離に短縮すべきという話。その理由として、次の2つの観点から語られることが多いです。

1. 種牡馬としての価値が上がりにくいこと

2. ローテーションに組み込みにくいこと

種牡馬としての価値が上がりにくいこと

近年の日本競馬はスピード重視の傾向が顕著になっています。そのため、菊花賞や天皇賞(春)を勝つ馬は、逆に種牡馬として価値が高くなりにくいというものです。

ディープインパクトやオルフェーヴルなど、中距離でも大活躍するような名馬は別にしても、近年、菊花賞や天皇賞(春)が唯一のGⅠ勝ちという馬が、種牡馬になれないというケースが目立つのは事実です。例えば、次のように馬たちです。

ビッグウィーク(2010年菊花賞1着)、マイネルキッツ(2009年天皇賞(春)1着)、ジャガーメイル(2010年天皇賞(春)1着)、ビートブラック(2010年菊花賞3着、2012年天皇賞(春)1着)

個人的見解

1つ目の種牡馬としての価値が上がりにくいという点については、「優秀な種牡馬の選定として競馬が行われている」という視点で見れば、スピード(早く走れること)が重要視される近年の日本競馬においては、そのとおりなのかと思います。選定する側に立てば、もっとマイル〜中距離のレースを増やしてほしいと思いますしね。

ただ、そもそもそこまでスピードを重要視する必要があるのかという疑問は残りますけどね。個人的には、スピードよりもっと総合的な体力が問われるレースの方が面白いと思うし、そういったレースが増えてほしいと思っています。スピードがそこまで重要視されていないと思われる欧州から強い馬が日本に全然来なくなったのも、日本競馬のレベルが上がってきたのと並行して、どんどんスピード偏重が進んだからではないでしょうか。

ローテーションに組み込みにくいこと

こちらは、特に天皇賞(春)について語られることです。

芝の中距離を主戦場にしている古馬は、春はドバイ国際競争又は大阪杯を目標にすることが多いです。問題はこれらのレースの次にどこを使うかとなった際、天皇賞(春)は距離が長すぎて使いたくないとなったら、使えるレースがほとんどないということです。

天皇賞(春)以外の候補としては、次の2つのレースがあります。

・宝塚記念
・クイーンエリザベスⅡ世カップ(香港)

宝塚記念は、6月の末に行われるため、大阪杯からは3か月ほど間隔が空いてしまいます。

クイーンエリザベスⅡ世カップは4月下旬の開催のため、ドバイ国際競争や大阪杯からは約1か月しか間隔がないこと、また、香港(海外)で行われるため、政治情勢や昨今の新型コロナウイルス感染症のような予測困難な理由により遠征することが難しい場合がある、検疫を受ける必要があるといった難点があります。

個人的見解(エンタメとして競馬)

ここは、今回一番語りたいところです。

結論としては、ローテーションが組みにくいというのは、一種の逃げなのではないかと考えます。そして、距離を短縮することも一種の逃げなのではないかと考えます。

前提として、馬主や調教師の立場としては、その馬に最も適した舞台で走らせたいと思うのは当然ですし、また、馬の適正も一頭一頭違います。ですから、適正外の長距離レースを回避したいという気持ちになるのも分かります。

<エンタメとしての競馬をもっと楽しみたい!>

しかし、競馬をエンタメとして楽しみたいイチ競馬ファンからすれば、決して適正があるとは言えない舞台で、何とか試行錯誤して素晴らしい結果を残すことは、大きな感動を生むことにつながると思います。

そのことを教えてくれたのが、今回のタイトルホルダーの鮮やかな逃走劇だったと思います。

タイトルホルダーは、皐月賞2着、ダービー6着。しかも毎回前半から行きたがる素振りを見せる馬です。基本的に長距離が合っているとは思えません。

そんな馬を、横山武史騎手は、3,000mのスタート直後から押してハナに立ち、最後は5馬身差の圧勝を演じてみせました。前半から行きたがる馬をスタート直後から押していくことは相当勇気のいる行為です。もしあれで馬が暴走してしまったら、レース後非難轟々だったことは間違いないでしょう。そんなリスクを承知の上で、勝つためにあのレースをし、実際に結果を出してみせました。

レース後、多くのメディア等で語られていたように、父親の横山典弘騎手が乗って勝ったセイウンスカイの菊花賞(1998年)とも重なるものでした。そのような背景も含め、今回の菊花賞は、とても「エモい」レースでした。

長距離レースは、レース中に騎手の駆け引きが幾度となく行われるレースです。言い換えると、今回の菊花賞のようなエモいレースが生まれる下地が多いのが長距離レースであるとも言えると思います。

イチ競馬ファンとして、エンタメとしての競馬をもっと楽しみたい自分としては、菊花賞や天皇賞(春)の距離短縮はしてほしくないです。むしろ、そのようなレースをもっと増やしてほしい。

馬主や調教師には、適性がないからと安易に逃げるのではなく、適性がないなかでいかにして勝つかを試行錯誤する姿勢をもっと持ってほしいと強く願います。


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