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右近さんのおにぎり。
東京・大塚に『ぼんご』という名の創業60年以上の老舗おにぎり専門店があります。
「情熱大陸」というドキュメンタリー番組でその店主・右近由美子さんの密着映像を見て、その人間性や考え方・仕事に対する姿勢…とにかくその《人柄や人情》に完全に惚れさせられてしまいました。
とにかく明るく元気で、お客さんとしっかりとコミュニケーションとる姿が本当に輝いていて、見ているだけで気分は良くなるし元気をもらえます。
どこまでもお客さんが1番。お客様第一主義の右近さん。
【そもそも私の意見って重要じゃないなと思うんです。重要なのはお客さんがなにを食べたいか。だから、提供するおにぎりも、お客さんの声を聞きながら改良を続けるようにしてるんです。今あるメニューもお客様が大事に大事に育ててくれたもの。
売るのはおにぎりですけど、やっぱり大切なのは人と人とのつながり。
だって、私たちが一番見たいのは、お客様が喜ぶ姿ですから。】
弟子入り志願者も多く、店内には修行される経営者が多くいらっしゃいました。その中の1人が語った言葉がとても印象的でした。
「経営者って今までやってきたことが顔に出るんです。女将さんみたいに、あれだけ明るくいられるのって、なかなかいないんです。日本一の店には日本一のチームがいるのがわかりました。」
番組内では若い経営者が右近さんに交渉をしに来る場面があり、右近さんは真剣に応える。
【彼ら(弟子入りする人たち)は2〜3ヶ月という短い期間で来るんですよ。でも私は技術的なことは何も教えられない。なぜかというと、46年かかった技術とか経験を、1ヶ月2ヶ月で教えられたら苦労しない。でも、ここにしかないものを、自分たちで何かを感じ取っていくならば、どうぞって言う。
私はおにぎり馬鹿で、おにぎりしか知らない。
そのおにぎりしか知らない私に、おにぎり以外のことはできない。
だからおにぎりを土台としたことを教えるのが、一番的確じゃないですか。】
そして常に新しい味を追求し続ける姿勢。
【一番はお客さんを飽きさせないため。お客さんが毎日来ても毎回違うものが食べられる、という状態にしたいんです。
うちの店では、56種類のメニューで、「今日はこれがありません」は絶対にナシにしましょうって従業員にはよく言っていて。お客さんはわざわざうちに食べに来てくれているのに、食べたいメニューが売り切れてたら申し訳ないじゃないですか。だから、1品たりとも欠品はしないようにしてるんです。】
そして今はおにぎりという文化を残したいと。
【まだわからないですけど、思っていることはありまして。日本人にとって、おにぎりって特別なものじゃないですか。つくり手の気持ちがこもりやすいものですし、誰にでもなにかしらの思い出がくっついてるような。だから、私はいま伝える側にまわろうとしています。
つくればつくるほど、こんなに素晴らしい食べ物はないなって思うようになって。いつからか自分の寿命を意識するようになって、そろそろ伝える側にまわってなにか残していきたいなって思ったんです。だから、自分の持ってる技術とかもどんどん教えようと思っています。技術はね、重ねれば誰でもできますから。ただ、内面的なものを伝えるのが、難しいですね。
いまの若い人はね、インターネットで調べてなんでも知ってるんです。でも「知ってる」と「できる」はまったく別。そこの難しさにいま直面しておりまして、日々悩んでます(笑)。】
そこにはどこまでもおにぎりに対する愛情がある。
【私、おにぎり以外のことは考えていないんです。頭の中は100%おにぎり。私はおにぎりにしか興味がない。おにぎりと一緒に死んでもいいと思っているんです(笑)】
コーチングを教えて下さっている師が言ってくれた言葉。
《何を教わるかではなく、誰に教わるかが大事。それを忘れてはいけないよ。》
以前、大塚に立ち寄った際に「ぼんご」に行こうと思ったのですが、もう長者の列がありその日は諦めることにしました。
列を横目に歩いていると、右近さんが待っているお客様一組一組に、
『お待たせしてすみません。従業員一同頑張らせてもらうので、もうしばらくお待ちください。』と頭を下げていらっしゃいました。
その姿を見て、『これは人が集まるわけだ』と腑に落ちたというか納得しかなかったです。
右近さんのおにぎりを食べたくて、お客さんはこの店に足を運んでいる。
とても大切なものを見ることができ、教えられました。
いつか「ぼんご」のおにぎりを食べに行く日を楽しみに頑張ろうと思います。
松岡眞吾
2023年4月27日
https://www.shingo-matsuoka.com/
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