輪るピングドラム劇場版をみた

 ピングドラム劇場版みてきた。YouTubeでサジェストされて公開されてるのを知って、最初からDVDでみてもいいかなーと思ったけどMMZもやっぱりみたいということでみにいった。

 よかった。

 総集編で、枠物語やった。ピングドラム好きと言いつつわたしもMMZもDVDもってなくて、少なくともここ数年はみかえすこともなく、忘れてるところがかなりあった。新規カットなんか新曲なんかもともとこんなんやったかーと思いながらみてた。

 総集編で枠物語っていうのはコスト抑えつつかなり狙ってるのを感じる。こどもショーマとこどもカンバがメタモルフォーゼりんごちゃんに導かれてピングドラムの話を読みはじめたとき、たしか合成元が『カエルくんピングドラムを救う』と『カエルくんピクトグラムを救う』やったと思うんやってな。一回しかみてないでなんとも言えんけど。

 「ピングドラムを救う」もけっこう意味深というかネタバレ感あるけど、「ピクトグラムを救う」はさらに露骨に、この劇場版でやることやろうってのを感じる、狙ってるものが何か・どこに狙いを向けてるんかわかる気がする。

 TVアニメ版ではけっきょくほんとうに愛されなかったこどもたち、こどもブロイラーに入る側のこどもたち、アニメにおいて人として描かれることすらなかったピクトグラムたちについてはそこまでつっこんだ救いを出してみせてなかったと思う。なんかそんなような記憶がある。愛でも呪いでも、なんかしらのそういうえにしがある者についてしか基本的には語ってなかった・・・ような・・・。

 で、枠物語でまだ何も知らないふたりの視点で見せつつ、かつピングドラムの物語に「ピクトグラムを救う」を要素として入れてるってことは、「これはみんなの・他ならぬあなたの物語なんですよ」っていうところを目指してるんかなーと。愛・呪い・なにかしらのそういったえにし、そういうものがあろうとなかろうと、あなたが何者であろうと何ものでもなかろうと、そんなん関係なく、この物語は誰でもないあなたのものなんですよ、って。

 カント的な自由というか、ヴィトゲンシュタインでいう「幸福に生きよ」的な気もちというか、「どんなもんであろうがそれを自分の意志で背負って生きる」みたいな姿勢、それは普遍的にひとをひきつけるものを持ってると思う。
 でも、一方でなんかしらのえにしっていうのはあるひともいればないひともいる。ナルトのわかるってばよアタックはわかられる対象・愛された経験をほんとうにもたないものには効かない。もしかしたらそこの溝を埋めるなんらかのこころみというかこたえというかそういうのが後編であるんかなーと思った。

 まあ劇場版のあのシーンのが「ピクトグラムを救う」じゃなかったら何にもならんし、TVアニメ版でしっかりそのへんの溝にも触れてるんかもしれんけど。
 みかえしたら謎でもなんでもなさそうなこと結構あるんやってな。真っ赤に燃える蠍の炎って結局なんなんやろう、とか「運命の輪を閉じる」「輪廻の呪いから抜け出す(違ったかも)」「運命を乗り換える」とかそのへんのあたりの整合性もどういうことなんかなーって気になるけど、みかえしたら普通にわかりそうな気がする。どうしよう。

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 全体としては、総集編やけど、かなりテーマを絞った編集になってて、TVアニメ版の群像的な各キャラクターへのフォーカスが良くも悪くも割と捨象されて、3きょうだい+りんごちゃん中心にまとめられてるおかげ(?)で、かなりわかりやすかった。あーこういう話やったんやーと思いながらみてた。で、映像・音はやっぱよかった、すごかった。

 あと、エヴァっぽいなとどうしても思ってしまった。セルフリメイクっていうことじたいがもうそうやし、テーマ(罪をどう引き受けるか的な)も、映像も(カンバからプリンセスクリスタルが尻子玉引き抜こうとするところ、「綾波、来い!」をどうしても思い出してしまった)。これが3部構成でだんだんもとの話と変わっていくとかやったらもうモロそうやろって感じやけど、そうはならなそう。

 エヴァは話も映像もすごい質たかくて、なおかつそのうえであのエヴァをみるものにうまいこと引き渡すっていうことをきれいにやってしまった、すごいもんやと思う。ピンドラはどうするんやろう、というのを考えたとき、やっぱ枠物語っていうメタフィクションっぽい形式で「ピクトグラムを救う」っていうところまで持っていくっていうのを考えてるんかなーと思った。なんにせよ楽しみや。

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 あともうひとつ。

 ピングドラムは、終盤のこたえの示しかたについて、あまりに抽象的・観念的やったと思う。それじたい悪いことではないけど、たとえばウテナとかと比べても流石にわかりにくかったと思う。

(逆にエヴァはそのこたえ・行き先の示しかたについてあまりに非抽象的で徹底しすぎてた気もする。「さようならすべてのエヴァンゲリオン」とかふつう言わせんやろ。エヴァファンにたいする責任感はすごい感じるしこれはこれでベストやと思うけど、そのせいでエヴァファン以外に届きにくくなってるっていうのはあると思うのでいかんともしがたい。)

 この劇場版は、とにかくわかりやすくなるよう、みんなに伝わるよう、みんなにとっての物語になるよう腐心してるかんじがするので、あのへんももっと違うみせかたになるんかなーと期待してる。

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