哲学の本10選

 自分を作った、というよりも、いまの自分になってるのを選んだ。「これ哲学なんかな?」みたいなのは除いて、もう明らかな哲学のやつだけ。あと『純粋理性批判』とか『自由論』とかそういうのも除いた。


1.ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』『哲学探究』

 いきなり2冊を1カウントするけど、これは許してほしい。まあわかるでしょう。まさかこれ読んで『論考』読もうとするひとなんてえんやろけど、読むならぜったい解説書とかをあわせて読んだほうがいい。いいのいっぱいある。これだけ読んでわかるわけない。危険な本。


2.マクダウェル『心と世界』

 こういうのの集大成というか。でも先にいってまうとこれもけっきょくヴィトゲンシュタインとか『存在と時間』とかとおなじというか、議論としては終わってないんやってな。素朴実在論みたいなもんに辿りつける、オッケー終わり、みたいな。まあけっきょくそういうもんなんかもしれん。


3.ハイデガー『存在と時間』 

 『心と世界』の訳者解説でも触れられてたけど、似てる。そういう意味では『真理と解釈』でもいいんかもしれんけど、でもやっぱ『存在と時間』は大きい。他とくらべてなんかこれ浮いてる気がするけど、浮いてても入れざるをえないプレッシャーみたいなのがある。『哲学探究』もそうやと思うけど(というひとは多いと思うけど)、これはもういっかい読んだら死ぬまでその問について考えつづけてしまうような、クソみたいなとんでもないやばい本。


4.ウィギンズ『ニーズ・価値・真理』

 これは論文集のしかも抄訳ということでどうなんやろってかんじはあるけど、選んだ。


5.ヘア『道徳的に考えること』

 この本じゃなくてもいいんやけど。自分のなかに根づきすぎてる。


6.チャーマーズ『意識する心』

 こういうのの土台。いったん読んどかんと始まらんみたいなとこある。議論というか話のひろげかた・まとめかたがなんかすげーってかんじがするのもある。おまえライルとかデネットとか入れといてこっちも入れるんかとか言われそうやけど、これはこれでなんというか哲学のお手本やと思う。サーモスタットに意識があるっていうのが何を言ってるんかわかるだけでもすごい価値があると思う。


7.『自閉症の倫理学』

 6とこれとは応用編というか。これは問いがなんかわたしにとって身にしみすぎるというか差し迫りすぎてるというか。なんか自分のいわゆる実存みたいなのをすごく寄せて考えてしまう。


8.ライル『心の概念』(デネット『解明される意識』)

 これも根づきすぎてる。行動主義と言っていいと思うんやけど、そういった考えかたというか。ライルのこれ文庫化してもいいくらいの影響力とかあると思うんやけどな。もしまめぞうが5と8と読んだらわかると思うけど、これはなんというかぽんきちしぐさに取り入れられすぎてる。デネットの『解明される意識』もいいけど(なかみはまあいっしょ)、ライルのほうが自分のなかでも古典感ある。ただこっちは読みにくいんでそしたらもうデネットでもいいかもしれん(デネットの訳も揃いも揃ってやばいけど)。

9.ステルニー、グリフィス『セックス・アンド・デス』

 生物学の哲学入門的な。これも共著やし入門書やし抄訳やしで他とはなんか違うかんじが強いけど、容赦なく選んだ。これと10は露骨に世界観が更新される感がある。『心の概念』とか『解明される意識』なんかは見てるこっち側が更新されるけど、見てるものの側が更新される。世界のほうが変わるかんじ。


10.ミリカン『意味と目的の世界』

 なんか訳がクソらしいけど、もとがわからないのでおっけー。新しい世界に入って、もう戻れない。

 いちおう1から始まって10で終わるみたいなのをイメージしてるんやけど、これが10なのは、いちおう議論として終わってるかんじがあるから。まあそれ言うとデネットで終わってもいいんやけど、ミリカンのほうがなんかでかいかんじがする。議論のありかたじたいも、なんというか、ヴィトゲンシュタインやらマクダウェルあたりとはちがうというか。


 哲学って役に立つんか、的な質問はよくあるけど(哲学に限らずよくあるけど)、これもよくあるこたえやけど、役に立つとか立たんとかそういうもんじゃない。

 哲学は選べない。それはたとえば「天動説」と呼ばれる世界観しかもたんかったひとたちが天動説以外の世界観をおそらくもたなかったであろうこと(天動説的に世界を理解しまた理解しようとしていたであろうこと)と似てるかもしれん。

 ある哲学的立場にコミットしないということはありえても、ある哲学的問いにコミットしないということはかなり難しい。仮にある哲学じたいが乗り捨てられるべきハシゴたることを目指してるとしても、その哲学を徹底できないほとんどのひとにとってはそれを捨てることは難しい。乗り捨てたとしてもそれまでとは違う場所に立ってるわけやし。

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