朝ドラで気になること

 神木隆之介が出てる朝ドラ、いっこだけ気になることがある。

 「よい」を「えい」と言ってる。

 「よい」が「いい」(東日本)になったり「ええ」(西日本)になったりするのはいわゆる母音融合というやつやと思う。「めんどくせー」とかもおなじ。
 これはおそらく歴史的に中間の形態みたいなもんがあったわけではないと思う。
 たとえば助動詞「だ」(東日本)「や」(西日本)は歴史的に中間の形態がある。もとは「~である」の「であ」の部分が「デャ」とか「ヂャ」とかになって(西日本で「じゃ」がそのまま残ってたりするけど)、それが「だ」「や」になったはず。
 他方、母音融合はそういう中間形態はないはず。いわば最初っから「よい」を「イー」とか「エー」とか言ってたんじゃないかと思う(いやどうなんやろう)。

 で。

 日本語には長音表記のルールがある。昔は長音記号「ー」(のばしぼう)がなかったので、「あう」と書いて「オー」と読んだり、おなじく「おう」と書いて「オー」と読んだり、「えい」と書いて「エー」と読んだりしてた。これももとは母音融合やったんやろけど。

 で、たとえば、声優なんかは声優学校みたいなとこで習ってるんかしらんけど、こういうのを表記どおり「エイ」と読んだりする。声優は「加勢する」を「カセイスル」と読んだりする(日常語のなかでは「カセースル」と言ってるはず)。

 話戻って、もしかするとあの朝ドラでおそらく「よい」を「エイ」って読んでいるのであろうことは、「西日本の「ええ(エー)」は本来は「エイ」やったはずや」っていう過修正がはたらいてるんではないか、とちょっと思った。

 でも、同時に、NHKがそんなことするか?とも思った(このへんの事情は事情を知ってるひとなら誰でも気がつくようなことのはずなので、NHKがそんなへんな過修正するとは思えん)。

 ということは、あのドラマの舞台になってるらしい高知では、かつて(今も?)〈そもそも「よい」の「よ」を「エ」と読む方言形〉があったのでは?と考えた。

***

 ちゃんと調べればわかるんやろけど、そこまでの熱意がない。

 ちなみに、「逢瀬」に「おうせ」とルビ振ってあったり「あうせ(あふせ)」とルビ振ってあったりして「どっちなんや」と混乱したひとは少なくないやろけど、これは
 1.古くは「あふせ」やった
 2.それを「オーセ」と読むようになった
 3.だんだん「あふせ」という表記が忘れられた
 4.「オーセ」を「オー」の長音表記にあてはめて「おうせ」と再解釈した
 ・・・・っていう過程があったんじゃないかと思う(しらん)。

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