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ショートショート、瞬間の切り取りが多いです。 お花や空の写真を眺めるだけでも…楽しんでいただけますと幸いです。
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#花

『休』

「こんな暑い日に  部活の外周なんて。」 坂の上までようやく辿り着き、 張り切りすぎな太陽に愚痴を溢す。 他の部活の掛け声が、 近付いてきた。 よれよれで膝に手を付く自分が、 君の目に止まらないように、 タオルを口にあてて、下を向く。 ふと、足元に佇む ビタミンカラーと目が合った。 軽やかな明るさに惹かれ、 思わず手を伸ばしたその一瞬。 駆け抜けていく君の 眩しい風が舞い込んでくる。 触れ損ねた大輪の花は、 一度大きく傾いた後に、 私の指先を優しく撫でてくれた。

『次の風まで』

ねぇ 綺麗な黄色だったよ 小さくて 可愛くて 素敵な香りだった もう少し  違う 本当はずっと 隣で並んでいたかったの 今度君と会う時には もっと広い空が見えるかもよ また会えるのかな 大丈夫 僕が必ず見つけてあげる 君の香りは 忘れないから #詩 #花 #写真 #散文

『君と揺られて』

風が吹くと 君の香りが近くなるね 君の隣は お日様が気持ちいいね 重なったところが くすぐったいね 一緒にいると あったかいね #詩 #花 #写真 #散文

『歩み』

「昔からこの花好きなんだけど、 ちっちゃいから上手く撮れなくて。」 一生懸命にシャッターを切る君 この先も春が来るたびに そんな君の優しい背中を 僕は立ち止まって待っているよ #詩 #散文 #創作 #花 #写真

『白バージョン』

「この花、ピンクバージョンもあるよね。」 連休前の帰り道 歩道橋脇の駐車場 君が指差す足元に 真ん丸な黄色と細やかな 無数の白い花びら達が 互いに寄り添い ゆったりと 夕暮れの風に揺れていた 「じゃあこの子達は、  白バージョンだね。」 私の答えに君は微笑み こくんと小さく頷いた いくつかの春が過ぎたけど そんな会話が忘れられず 今も昔も私のなかで その花の名は"白バージョン" #詩 #散文 #創作 #イラスト #花

『見上げてみれば曇天の』

にわか雨でもありそうな 蒸し暑さだけが気の早い 黄緑色の新芽は遠く 薄黒い雲に重なって 風の匂いが喉にかかる 真新しさと気怠さと 皐月の狭間 迷子の足取り #詩 #散文 #花 #バラ #空 #写真

『その色を』

透き通るような 真っさらな白色 あなたの隣で着られたら #詩 #散文 #花 #ツツジ #空 #写真