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詩『夜の間の風』

春のに風が吹く
誰にも知られることなく
はらはらひらり 花が散る
闇に流れる 薄紅の花びら

ひら二片
水面みなもに広がる波紋
組まれた花筏も
いつしかほどけ 消えてゆく

晩秋の夜の間に風が吹く
誰に見られることなく
ゆらゆらほろり 葉が落ちる
闇を彩り舞を舞う

一葉ひとは一葉が
地面に織りなす模様
広がってゆく錦の絨毯
いつしか土に 還りゆく

冬の夜の間に風が吹く
誰に気づかれることなく
しんしんふわり 落ちてくる
ほのかに淡く 雪明かり

荒神咲夜・りまの『雪明かり』

香ることなく
大地に下りる 六つの花
大地を覆う 銀の花
いつしか融けて 消えてゆく

夜の間に吹く風が
秘めた想いを散らす
ひゅうひゅう すさびながら
心を乱して 吹き抜ける

散った言の葉
想いの一枚一枚が
募り 積もりて
永遠とわに変わらぬ 山となる


はるとのメモ
夜の間の風は花を散らすものとされています。
参考
春のくる 夜の間の風の いかなれば 今朝ふくにしも 氷とくらん
      前斎宮内侍 『金葉和歌集』5番

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