岡宮来夢=北島マヤ説

「美しいものが美しいのではない。愛するものが美しいのだ」

これは、とある有名な昆虫学者の言葉なのですが。冴えない外見の♀に、きらびやかな♂が夢中になるさまを見て、彼は真理を得たらしいです。

この前フリ、岡宮来夢くんという俳優さんをこよなく愛する方々への、言い訳であり、警告でもあります。私は、どれほど愛していても、ひいきの引き倒しとか、盲目的に崇めるということはできないたちです。そして、欠点を認めたうえでも、「好き」という感情は曇りません。けっして誹謗中傷するつもりはありませんが、ちょっとでもネガティブな評価は読みたくないという方は、ここから引き返してください。


鶴丸はゲームの中でというより、アニメ「活撃」で好きになったキャラです。あの初登場シーンには、シビレました。綺麗でかっこよくて、神秘的で、ちょっとガラが悪いかなと思うほど雄々しい。

葵咲本紀で、鶴丸がミュージカルに初登場と聞き、正直、不安でした。「生身の俳優には無理じゃないかなあ」。アニメでしか、鶴丸は再現できないと思っていたのです。それがまあ…!

葵咲本紀全体の感想は、いろいろな方が書いていらっしゃるので、省きます。

鶴丸の登場シーン。容姿は、可もなく不可もなく。イケメン…かなあ? メイクしてこれなら、素顔はフツメンでは? そんなガッカリ感を吹き飛ばしたのは、「声」でした。張りがある、伸びやかな低音。よく響いて、滑舌もいい。歌になると、一本太い軸が通ったうえに、透明感も甘さもある。これはすごい! 素直に感嘆しました。

「ミュージカルだもんね。歌が上手くないと話にならないよね。顔なんて、メイクで何とでもなるんだし」

そんな失礼な感想を抱き、中の人の「鶴丸ではないときの顔」を検索してまたびっくり。メイクしない方が、よほど可愛いじゃないですか。舞台のメイクは、彼の顔の長所をむしろ消しているように思いました。そして、そうしなくてはならなかったのだ、とすぐ気づきました。

ゲームの鶴丸は「外見詐欺」と言われます。公式絵は、儚げな美少女のようです。なのに戦場に出すと、野太い声で男くさいしゃべり方。そのギャップで、鶴丸は審神者の心を掴みました。

それでいくと、可愛い系の来夢くんの顔をあまりいじらない方が、よりギャップが大きかったでしょう。でも、ギャップが大きすぎると、今度は違和感につながる。じっさい、「視覚情報と聴覚情報の落差で脳がバグった」という感想をいくつも見ました。好意的な感想でしたが、もし、もっと落差が大きかったら、拒否反応が起きたかもしれません。舞台の上で「これは鶴丸だ!」と認識してもらうには、もう少し声のイメージに顔を寄せる必要があったのでしょう。

私はこれまで、俳優さんや歌手に興味がありませんでした。でも、岡宮来夢くんにはあまりに感心したので、にわかファンとして、過去に遡ってその評価をいろいろ見てみました。私と同じように、あるいはもっと熱く、ほめたたえる論調がある一方で、ネットの裏っかわではけっこう叩かれてもいました。出る杭は打たれるものです。

20歳そこそこの年齢を、「平安刀には若すぎる」という意見もあり。「せめて30歳」には、ちょっと笑いました。1000歳の前には、10歳は誤差の範囲じゃないですか。

「イケメンじゃない」と、不満タラタラな書き込みもあります。ですが、バクステ映像の顔合わせ場面を見ると、咄嗟に役名がわからないほど、舞台の顔と違う人が何人もいました。(篭手切江も、素顔の方が可愛いです)テレビドラマではないのだから、舞台化粧でどうにでも顔は変えられる。顔がどれだけ公式絵に似ていても、超絶イケメンでも、歌って踊れなければ舞台が壊れます。

昔、「ガラスの仮面」という漫画がありました。主人公の北島マヤは「千の仮面を持つ」と言われる、演劇の天才少女ですが、外見はいたって平凡です。ブスというほどではないけれど、絶対に美人じゃない。そんなマヤが、あるとき「絶世の美少女・アルディス姫」を演じることになるのです。彼女はみごとに役を掴み、演劇仲間も目を疑うほど、美少女になりきりました。

漫画なら、どんな美少女に描くこともできる。でも生身の俳優さんは、やっぱり理想的なイケメンじゃないと…。

生身でイケメンになりきった俳優さん、いますよ。西田敏行という方、ごぞんじでしょう。「釣りバカ日誌」の主役など、コミカルな役柄を演じられることが多いです。そうでなければ、「白い巨塔」のアクの強い脇役とか。ご本人も、やはり個性的で滑稽さの勝るお顔です。ですが、時代劇で「薩摩隼人」を演じられたとき、役になりきった彼は、本当にかっこよかったのです。顔までイケメンに見えて、惚れ惚れしました。

この「なりきる」ということ。そして運営側が岡宮くんに期待したであろうこと。以下次号です。



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