断髪小説「断髪フェチが髪を切る話」

私は断髪フェチ。

頑張って伸ばした今の髪は、肩下15cm。ここ最近、無性に髪が切りたくて切りたくて仕方がない。

「髪を伸ばしてバッサリ切る」

これぞ断髪フェチならではの愉しみ方だろう。

せっかくバッサリ切るなら美容院じゃなく、床屋で切ってみたい。それは私の長年の憧れ。

スマホで店を検索する。

古風なお店が理想だけど、女でロングヘアの私が行くと断られるかもしれない。そういう体験談を目にしたことがある。ここは安全策として「レディースシェービング」をしているお店を探すことにしよう。

しかしながら床屋のHPというのは数が少なく、近隣ではなかなか見つからない。夜な夜な検索すること数日、ようやく候補のお店を見つけることができた。予約もできる店だったから、震える手で電話し予約を入れた。これで後戻りはできない。


ワクワクと不安が入り混じった複雑な気持ちで当日を迎えた。


細い路地を入った古い住宅地の一角にその店はあった。

あそこか・・・。急に心臓がバクバクしてきた。そっとお店をのぞき込むと、中にいた50歳ぐらいの男性とバッチリ目が合ってしまった。

「あ、ご予約の方ですか?」

バレてる!!

「は、はい!」

私は勧められるがまま店内に入り、勧められるがままに憧れの床屋椅子に腰をかけた。


先ほどの男性がこの店の理容師だった。

さっそく薄水色のクロスが巻かれた。もちろん手が出ないタイプ。椅子の先についた、クロスをかける棒が上げられた。そして電動の椅子がグィーンと持ち上がった。

私の緊張もグィーンと高まった。


「どんな感じに切ります?」

「あのっ、前下がりのショートボブにしてもらいたいんですが・・・」

「前下がりね、ハイ。後ろはけっこうバッサリ切る感じになるけどいいですか?」

「はい・・・」

けっこうバッサリとか。ヤバすぎ。

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