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健康とは

「私ってさぁ、もしかしたらめっちゃ健康じゃない?」
とは、娘ちゃんの言葉です。


昨日は娘ちゃんの検診の日でした。
娘ちゃんは昨年結節性硬化症という難病を患っていることが判明し、以来、遠方にあるその難病を専門的に研究している大学病院に定期的に通っています。

かなり珍しい病気で、日本国内でも患者が1000人いるかいないかです。その上娘ちゃんの場合、リンパ脈管筋腫症(LAM)を併発していますので、さらにレアケースです。

結節性硬化症は腫瘍が出来るのを抑制する遺伝子の異常で起こる病気で、皮膚や心臓、脳など全身いたるところに腫瘍ができてしまいます。
LAMは肺やリンパ、腎臓にLAM細胞が増殖する病気で、女性が発症するのがほとんどです。
結節性硬化症と同じ遺伝子の異常で起こるということで、この病を得ている女性の4割が発症するとされています。

完治する方法はありません。
LAMに至っては進行性の病気なので、投薬によって進行を遅らせて肺の機能を維持したり、血腫が大きくならないような治療が必要となります。

特に肺の機能低下は深刻で、80代の高齢者と同程度だと診断されています。
肺の前面にLAM細胞が増殖しているため酸素を取り込める量が少なく、破れやすいのでいつ肺に穴が開く気胸になるかわかりません。

今は普通に暮らしていますが、重たいものは持てないし、坂や階段も休み休みゆっくりと歩いても激しい動悸で苦しくなります。
進行が止まらなければベッドから起き上がれなくなるでしょうし、肺移植を具体的に考えねばならなくなる可能性もあります。


さらに娘ちゃんは腎臓に出来た脂肪血腫が深刻で、動脈を巻き込んでリンゴ大にまで巨大化して動脈瘤を作っていました。
主治医の先生からは破裂の可能性が極めて高く、すぐにでも入院治療をと勧められたぐらいだったのです。

それが、今回の検査で1/3ぐらいの大きさにまで小さくなっていることがわかりました。
先生からこれなら経過観察でいいかもとお話を頂いた娘ちゃんは、「今日はお祝いだ!ホールケーキだ!!」と大喜びでした。


病院からの帰り道、娘ちゃんが言いました。

「前はご飯を一人前食べられなかったのに、いくらでも食べれるようになったんだよねぇ。
 階段とか坂とか上ると息切れるけど、休めば登れるし。
 なんならエスカレーターもエレベーターもあるし。
 仕事だってできてるし、一人暮らしできてるし、旅行だって行けるし。
 たまに肺が痛くなるぐらいで、普通に生活できているし。
 私ってめっちゃ健康じゃない?
 今が私の"健康な状態"なんだよ!」


目から鱗でした。

"健康”とは五体満足で病気も怪我もなく、心身に何の痛みも苦しみも不都合もない状態のことだと考えていました。

けれど完璧にぴかぴかな肉体や精神の人は少なく、生まれつきだったり、加齢や事故などで何かしらの不都合さや障害、病状を得る人がほとんどだと思います。

それを全て取り除かなければ不健康で、何とかしなければとやっきになれば、余計に無理がかかります。
けれど娘ちゃんのように不都合を抱え込んだ今の自分を受け入れ、その状態の自分がベストな状態のことを健康と考えるなら、必要以上に病について思い悩むこともなくなります。

私自身歳を重ねるごとに、身体の痛みや動きにくさ、体力や筋力のなさを実感することが多々あります。
変化した肉体やその機能について嘆くのではなく、それが自分だと受け入れ、できる限りのベストな状態を保っていく。

これこそが健康だと思えば、年老いて動かなくなっていく身体を自覚したとしても、悲観せずにその時できることに感謝して生きていけそうです。

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