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【温度があるって】


君のすべてには温度があった。頬を撫でようとすれば、指先から燃えて塵になってしまうと思えるほどに。君の眼には未来が宿っていた。見つめる先は遥か遠くなのだと。君の唇には熱が籠っていた。ほんとうを心で感じたことがあるのだと。

軽く放たれたひと言がまばゆく溶けていくたびに、君が抱えてきたものの大きさに圧倒された。何も取り繕わない潔さに秘められた強さ。けれど目を離した瞬間には何処かへ翔び立っていくように見えて。

その眼を閉じるその瞬間までどんどん熱くなっていくんだろう。周りをも巻き込んで最大火力で進んでいくんだろう。きっとその影でゆるやかに焼け落ちていくであろう君の1部を、他の誰かが見落としていたとしても僕だけは見届けていたい。

君だけの温度をずっと、深く、抱きしめていたいのだ。

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