#1 朗読 台本 1人用 「僕と飼い主」

配役一覧
・僕役 (僕)


(僕-1から僕-3まで風鈴のSE繰り返し)

僕は猫だ。汚い部屋に住んでいる。

僕の飼い主はだらしない、お部屋も物で溢れすぎて大事なものをすぐ無くすし、ずっと寝っ転がって本を読んでるか映画を見てるだし、たまの外出から帰ってきたと思ったら2つのビニール袋にお酒とおつまみがこれでもかと思うくらい大量に入ってたし、こないだなんか僕が箪笥の隙間に顔を突っ込んだ時ミイラ化したいつかの枝豆が落ちていた。本当に僕の飼い主は女の子…なのか？とたまに疑いたくなる｡

でもそんな飼い主ちゃん、うーんそうだなぁ…しゃけちゃんと呼ぼうか。
でもそんなしゃけちゃんを好きになる時がある。僕の大好きなちゃるちゃるのおやつをくれる時だ。
しゃけちゃんは僕を怒らせたり僕のお腹を触りたい時にちゅるちゅるのおやつを台所から引っ提げてやってくる。僕が夢中で駆け寄るとしゃけちゃんはにこにこ笑顔で封を切ってくれる、僕もしゃけちゃんもその時間が大好きだ。

(セミのSE繰り返し)

今日、しゃけちゃんがスーツを着て出かけて行った、しゃけちゃんは今日から就職先が決まったらしい。採用メールが来た時はしゃけちゃんは僕を持ってバレリーナみたいに部屋をくるくる回って喜んでいた。
僕は渋々付き合ってあげてたけどしゃけちゃんがあまりに喜んでたから僕も少し嬉しくなった。

(僕-5からSEを切るまで雨のSE繰り返し)

しゃけちゃんが最近暗い。
仕事から帰ってきてお酒を飲んで泣いて泣き疲れて寝てる｡僕が近寄ると抱きしめて大きな声で泣いている。
こういう時はお母さんやお父さんに連絡してるのをしゃけちゃんが見てたドラマで学んだ。
でも、僕が来て2年間しゃけちゃんもお母さんやお父さんと話してるとこを見た事がない｡僕もお母さんの顔を知らないけど、しゃけちゃんも僕と同じなのかな？

しゃけちゃんが帰ってこない。
しゃけちゃんが帰ってこなくなってもう3日目になる。
僕のご飯は勝手に出てきてくれるけど、そろそろちゅるちゅるが食べたい。

7日ぶりにドアが開いた。僕は玄関まで走った。久しぶりにしゃけちゃんと会える。しゃけちゃんが抱きしめてくれる。しゃけちゃんがちゅるちゅるのおやつを笑顔でくれる。

(SEを切る)

そう、思っていた。  

(雨のSE再開 僕-9終わりまで)

でも、そこに居たのはしゃけちゃんじゃなかった。
黒と水色の制服を着た男の人と、ドアの前にいるのは…確かここのおうちの大家さんだ。制服の人は…見たことがあるしゃけちゃんが見てたドラマに出てきた、確か警察官って言ってたかな。ドラマでは人間が人間を傷つけた場所に、赤いくるくる光る物を車に乗ってきてたけど、ここは今僕しかいないのに、しゃけちゃんはまだ帰ってきてないのにどうしてこの人たちは来たんだろう。

(僕-11終わりまでセミのSE繰り返し)

今日もドアが開いた。
でもまたしゃけちゃんじゃなかった。今日はしゃけちゃんの妹だった。
しゃけちゃんの妹は僕を見つけると抱きしめて泣いていた、妹ちゃんからはしゃけちゃんの匂いが少しした。
しゃけちゃんと会ったのかな？
僕はそのまま妹ちゃんのお家に行くことになった。

妹ちゃんのお家に来て1週間
僕はのびのびと暮らしている。
整理整頓された綺麗なお部屋、高い場所にいける置物、しゃけちゃんのお家で食べてたものよりもよりも美味しいご飯とちゅるちゅるのおやつ。
何不自由無い生活だ。
そうだ今日しゃけちゃんを見つけた。黒いふちに入れられてた写真だったけど久しぶりにしゃけちゃんを見れて嬉しかった。

(風鈴のSE 僕-13終わりまで)

しゃけちゃんと離れ離れになってから1年
僕は最近寝ることが多くなった。
寝てるとき夢を見るんだ、あの部屋にしゃけちゃんがいる。しゃけちゃんはこたつに入って僕にちゅるちゅるをあげながらにこにこしてる、僕は一心不乱にちゅるちゅる食べながらしゃけちゃんを見ている。
ふと、ちゅるちゅるを食べるのをやめてしゃけちゃんのほっぺたに擦り寄った。
しゃけちゃんは泣いた。
しゃけちゃんは僕に何回も謝ってきた。

泣かないでしゃけちゃん。
謝らないでしゃけちゃん。
僕はそばにいるよ。
僕はずっとしゃけちゃんの味方だよ。

誰かが僕を抱きしめてる
しゃけちゃんの匂いとしゃけちゃんの腕の中のあったかさだ！しゃけちゃんが帰ってきてくれたんだ！
僕はしあわせだなぁ。またしゃけちゃんの腕の中で眠れるなんて。
大好きだよしゃけちゃん。

(風鈴SEの音量を上げて最後に１回鳴ると嬉しいです)



読み手の方はこの台本を読んで感じたままに読んで欲しいです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　酢酸わたげ