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忘れられない少女

私はじめてこの文字を初めてくぐる。いつも画面越しに見ていた、いつか歩いてみたかった町。その画面の中に私はいる。

目当てはとある広場。太陽の光が真上から照らすそこに、影はあまり見当たらない。
ふと、ひとりの少女が目に留まる。よく画面越しに見ていた賑わいに混ざっていそうな外見で、この町に馴染んで見える。
私は友好的な感覚で声をかけてみた。しかし彼女は、あの賑やかさの中にいるとは思えない、戸惑いと警戒を含んだ目をしていた。
私はこの町を誤解しているのかもしれない。

日が落ちるまで町を歩き回り戻ってくると、影が無いはずの広場にたくさんの影を見た。賑やかだが不安定な雰囲気の充満するそこに、あの時の少女を見つける。と同時に視線が合った。するとこちらに覚束無い足取りで駆け寄って来る。彼女は私に楽しそうに話したり愚痴を吐いて、別の少女に呼ばれて去っていった。
その間彼女はずっと無邪気に笑っていた。そこにあの時の少女はいなかった。
彼女がいた場所でいくつも転がる空き缶に、私は焦点を合わせない。

あぁ、この町は、そういう町だ。

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