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9月24日のマザコン76 コロナ禍での施設探し

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見学9件目、施設I。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。
うちから車で10分程度。見学者の応対をしてくれる専門の方(営業担当者?)がおり、しっかりしていて感じが良い。他のスタッフさんも通りかかればきちんと挨拶をしてくれる。
入居者の平均年齢が87歳とかなり高齢なところと、デイサービスに半強制で参加というところが父にとってはネックになりそう。食事は施設の厨房で作っているそうだ。食事を部屋まで運んでもらうには一食につき100円オプション料金がかかる。
基本料金が月176500円。介護保険や洗濯料金、各種レンタル代など含めると介護保険の自己負担額1割の場合で月額21万円くらいになるとのこと。
サ高住は本来老人ホームと比べて自由度が高い施設で、元気な人なら介護保険は1円も使わなくていいはずだが、ここはデイサービスがほぼ強制参加なので、自動的に介護保険適用のサービス料金がかかってくるようだ。

10件目。施設J。
サービス付き高齢者向け住宅。
車で5分と、うちから最短距離の施設。
平均年齢が80代前半で、平均介護度は1くらいだそう。そもそも介護認定を受けている人は(要支援or要介護がついている人は)入居者の3分の1くらいで、あとの3分の2は自立の人ということだ。
60代の入居者さんもいるそうで、ここはまさに「サービス付き高齢者向け住宅」の名の通り、元気なおじいさんおばあさんたちが気ままに暮らしている施設という印象であった。
デイサービスの施設が1階に設けられているが自由参加。
食事は「何時から何時まで」というような一定の時間内に食堂に行って各自で食べれば良い。部屋で食べたければ、勝手に部屋に持って行くのもOK。共用のキッチンもあるので、事前に申請すれば食事をキャンセルして自炊することも可能だそう。
風呂は個室と共用浴場の2種類あり、個室は見守り必須(介護保険を使ってヘルパーさんを呼ぶ)だが、共用の方ならその必要はなく、毎日でも入浴可能。
自由である。
感染対策のため部屋や共用部分は見学禁止であったが、応対してくれたケアマネさんや、職員さんの雰囲気も良かった。最初に見学申し込みの電話をかけた時も丁寧に対応してもらえた印象がある。
典型的なサ高住ということで介護面はあまり充実しておらず、看護師さんも配備されていない。なので介護保険を使ったヘルパーさんの派遣だけでは生活が成り立たなくなった場合は、他の施設に移らなければいけない。
建物がやや古く、パンフレットも白黒の紙っぺら1枚だけだったりして(ホームページも存在せず、ポータルサイトに情報が掲載されているだけ!)前時代的な空気も感じるが、個人主義の父にはとても合っている施設だと思った。
介護面が手厚くない分、月額利用料も124000円+介護保険とかなり低め。特別養護老人ホームに匹敵する料金だと思う。介護保険を一切利用しなければ(掃除や洗濯を自分ですれば)、介護保険の自己負担はゼロ。
元気な老人にとっては理想の施設のような気がする。とはいえ元気な老人だったら自分の家で暮らせばいいとも思うのだが、自立の人がなんでこういうところに入るのかは私もよくわからない。
初期の認知症、躁うつ病、脳腫瘍と頭に大きく問題を抱えている父がこの元気な施設にどこまで順応できるかというのは考えるべき点。あと家から近すぎるので、父が入居したとして「家に帰りたい」と勝手に歩いて帰って来てしまわないかという心配はある。でも総合的には、入居候補としてかなり上位に食い込んだ。空きも1室あるとのこと。

11件目、施設K。介護付き有料老人ホーム。
見学申し込みの電話や、実際に見学対応してくれた方、なんかぶっきらぼうな態度に感じられた。
しかし現場でちゃんと責任者の方とお話ししてみると「営業的な態度は全然ないが、気のいい近所のおじちゃん」という感じで、それほど悪い印象ではなかった。施設の隅々まで案内して見せてくれたし、質問にも細かく答えてくれた。
最近職員さんが3名立て続けに退職されて、募集をかけているがなかなか新しい人が見つからない、ということまでぶっちゃけて話してくれた。その話をどう受け止めるかは難しいところではあるが。
平均介護度は1.7で、介護付き有料老人ホームとしては低めであった。半分くらいの人は自分で歩けるし、普通に話せるとのこと。
リハビリ的な体操のプログラムがあるが、気が乗らなければ参加しなくていいようだ。ただし食事は必ず食堂で、決まった時間に全員で食べる。その食事の前に15分ほど「口腔体操」というのがあって(飲み込む力を鍛えるという)それには全員必ず参加とのこと。
風呂は集団入浴で、現在職員さんの数が足りていないので(涙)回数は週2回、別料金を払っても入浴回数は増やせないとのこと。
日中は毎日看護師さんがいる。
利用料金は、介護付き有料老人ホームなので介護保険込みで(自己負担額1割の場合)基本料金が17万円、光熱費とかいろいろレンタル料とか含めると185000円くらい。うちは3割負担なので+3万円ほど。

12件目!
施設L。住宅型有料老人ホーム。うちから車で15分。
対応してくれた方は、この道ひと筋何十年の介護熟練のおばさんという感じで、とても頼りになりそうだった。のわりには、入居者の平均年齢などは把握していなかった。でも聞いたらどこかに調べに行ってきちんと回答してくれた。
平均年齢とか平均介護度なんかは、尋ねる人はあまりいないのかもしれない。80歳や90歳を超えて老人ホームに入ろうという場合なら、他の入居者の年齢なんてたいして気にならないだろうから。うちの場合は父がまだ70代前半なので、できればそんなに歳が離れていない施設に入れてあげたいと思い特別に聞いている。
ここは平均年齢は80代前半で平均介護度は2.2であった。
住宅型有料老人ホームは、本来はサ高住に近い、元気で自由な(介護付き有料老人ホームと比べれば)施設という定義のはずだが、ここもその線引きは曖昧で、併設されているデイサービスに毎月必ず介護保険でまかなえる限界まで通わなければいけないらしい。日中は入居者にあまり部屋にいて欲しくないそうだ。一箇所にまとめた方が面倒を見やすいし、デイサービスをたくさん使わせればそれだけ施設が儲かるのである。
食事も決められた時間に食堂で一斉に食べなければいけない。
風呂はデイサービスの施設に備えられていて、介護保険でヘルパーさんを頼める範囲内でなら好きな回数入れる。ただデイサービスがほぼ強制参加だということを考えると、そっちに介護保険を取られてしまうので他の老人ホームと同じく入浴回数は週2回くらいに限定されるのだろうなあと思った。
そして部屋に電話回線がないそうなので、一般的な方法ではネット接続ができなさそうだ。
デイサービスには(つまり日中は)看護師さんが常駐している。
月額は介護保険利用分が含まれていて1割負担の場合は163000円。光熱費やベッドレンタルなどで+1万円くらい。
ただ、お医者さんの「訪問診療契約」だかなんとかという契約を別途結ばなければいけないらしい。契約をしておけば、ドクターが定期的に診療に来てくれるし、なにかあった時もなるはやで飛んで来て対処してくれるそうだ。お医者さんのサブスクみたいなものか。
やや恐ろしいと思ったのが、「訪問診療の契約をしておかないと、緊急時でも対応できなくなってしまいます」と言われたこと。対応できないというのは、急に倒れたりしても放置されるということだろうか。
なんだか親の健康を人質にサブスクサービスの申し込みを迫られているような気分になって、その時点で「ここはナシ」と思ったためドクターサブスクの定額料金を聞くのも忘れてしまった。


………今週は以上。
デイサービスには強制参加かどうかとか、食事はどういうスタイルで取るのかとか、入居者の元気度はどんなものかとか、細かいところも細かくないところも、「見に行って直接担当の人に聞いてみないとわからない」という部分がとても多い。
「施設探しの時に、何件くらい見学に行くか」……、これは親の施設問題に直面する多くの人が悩む問題ではないか。
私はもはや、望む望まないにかかわらず自分の生活が破綻しているので、いまや「自分自身の予定」というものがなく、ほぼすべての時間を親の面会や手続きや施設探しのために使うことができる。望む望まないで言ったら全然ひとカケラも1ミクロンも望まないんだけど。
なので私は候補にした施設を全部見学することができるが、「仕事および自分の生活をなんとか保てそうな人」、つまりまだ破綻していない人は、なまじそっち(介護)とこっち(自分の暮らし)を両立できる可能性があるためにどこまでそっちに力を注ぐべきか、大いに悩むであろう。
なにしろ、あと1箇所多く施設を見学に行くかどうかで、親の余生の幸福度が大きく変わってしまう可能性があるのだ。
親のたった一度の人生が終焉に近付いている時に、限界までやってあげたいけど限界までやるには自分の生活を壊さなきゃいけない。施設探しで手を抜いたら一生後悔するかもしれないが、かといって両立しながら、自分の仕事や暮らしを保ちながら全部見学に行こうとしたら半年以上かかりそうである。半年経つ頃には施設の情報とか親の状態もまた変わっていそうだ……。そしてその期間自分が親の面倒を見なければいけなくなる。

そうなってくると、前回の話の続きになるが、「頼れる家族がたくさんいる人が強い」ということになる。
前回登場した、W不倫でおなじみの(ウソ)私のいとこは、奥さんが一時的に仕事を休んで施設探しに奔走したのだ。それでも仕事ができなくなっているが、幸い夫婦が同じ職場で自由が効くので役割分担を工夫することによって最小のダメージで、妥協することもなく切り抜けることができたわけだ。

私も、「もし自分に兄弟姉妹がいたら」と妄想することがある。
もし今、実家に私以外に3人くらい兄弟がいて、さらに母もまだ健康であったらどんなふうに役割を分けられただろうか。
私ともう1人が施設探しを担当。1人は病院へ面会に行く担当。1人は役所関係や銀行、保険関連の手続き担当。母は病院から持って来た衣類の洗濯と新しい衣類の用意を担当。突発的な作業が出たら随時補助しあって、大事なことはみんなで会議をして決める。
そんなふうに複数の家族と助け合うことができたらどんなに楽になるだろうか?と考えてもしょうがないことを時々考える。
でも実際そういううまい分担が可能なご家族も現実的には存在し得るわけで、例えばビッグダディの家なら施設探し担当が4人、面会担当が2人、洗濯担当が1人で役所の手続き担当が1人、買い物担当が1人に記録係が1人、出納係が1人に監督が1人、というようにハリウッド映画の制作陣なみに細かく仕事を割り振ることができるだろう。はたまた古代エジプトの王ラムセス2世は子どもが180人いたそうなので(養子含め)、ラムセス2世が老いた時には子の40人が施設探し担当、20人が面会担当、10人が買い物担当で5人が洗濯担当で5人が出納担当で5人がネットリサーチ担当、記録係が10人に役所担当が10人、人事担当が5人に福利厚生担当が5人にチームキャプテンが10人、総監督が1人で助監督が3人にスタイリストが1人、残り50人は入れ替え担当の遊軍……、というようにゆとりの中のゆとりを持った分担ができそうだ。
30人くらいは鉄砲玉として病院の医療相談室への殴り込み要員にしてもいい。(参照:9月24日のマザコン69 医療相談員に心底頭に来た話
その割り振りを、考えるだけでも楽しい。
私はそれを全部一人で、ビッグダディの子どもの12倍、ラムセス2世の子どもの180倍がんばっているのである……!

これを読んでいる人の中で、将来私と同じような一人介護に陥ることを想像して恐れおののいている方がいたら、とりあえず「家族の数を増やす」という手が可能かどうか検討することをおすすめしたい。
早く良い奥さんや旦那さんを見つけて、さらに友人と義兄弟の契りを結んだり腹違いの兄弟姉妹を探し出したりして、家族の頭数を増やしてその日に備えよう。もしかしたら、生まれてすぐ誘拐されたあなたの双子のお兄さんやお姉さんが、日本のどこかにいるかもしれない。
それが現実的に無理であれば(無理だろうよ)、親が元気なうちから動き始めるしかない。例えば、親がピンピンしているうちに親と一緒に施設の見学に回って、「将来どの施設に入りたいか」を決めておくとか。
実際に、そういう目的で施設に見学に来る人も何人もいるそうだ。本人が一人で来たり、家族と一緒に来たり。

そうやって未来のイヤな出来事から目を逸らさず、どんなに面倒くさいことに対しても事前の準備ができる人が、人生における勝ち組になるのだと思う。本人が見学に行けば「自分が1番良いと思うところ」をちゃんと選べるわけだし、早くからその心構えを作っておけば多少認知機能が落ちても「施設なんて入りたくない!」と駄々をこねることもなくなるだろう。
なにより、その準備があれば「親が自立できなくなってから限られた時間の中で親の面倒を見ながら精神的にも追い込まれた状態で泥縄的に施設を回らなければいけない(そして子の生活が破綻)」、という悲劇を回避できるだろう。

でも普通は、親がまだ元気な時に親の入る施設を探して見学にまで行く、なんてことはできない。イヤだから。考えたくもないよそんなこと。
だからこそ、そういうことを実際にやっている人がいることにビックリするし、それができるステージにいる人こそが脱落せず人生を着実に勝ち残って行けるのだろうと思う。
この日記を毎回読んでくれている人に対してもそれは思う。「まだうちの親は元気ですが、将来のためにさくらさんの日記で介護の予習をしています」とたまに言われて思う。
おどろおどろしい話が好きとか、さくら剛の末路が気になるとかではなく、「将来の勉強のために読んでいます」と言ってくれる人。
いつかは勉強しなきゃいけないことだろうけど、まだご家族みなさん健全に暮らしている時に、よくこんな暗くて気分悪い日記を読もうと思うよなあ、と私は心から感心する。
そして、そのように言ってくれる人からはリアルに「勝ち組の気配」を感じる。勝ちという表現が良くなければ「しっかりしている感」「人生の着実感」。ああこの人は普段からここまで将来のことをきっちり考えられるような人だから、こんなポジションで活躍できているんだな、と思うようなちゃんとした人に「読んでいます」と連絡をいただくことが多い。お世辞とかではなく本当の感想だ。
何度も書いているが私自身は、元気な時には介護の「か」の字も見るのも聞くのもイヤだったのだ。私は介護の見ざる言わざる聞かざるだった。私は将来のことも現在のこともイヤな出来事からは逃げ続けたいタイプの人間だったので……。

父から電話。「ビニール袋がない」という内容。
洗濯物をレジ袋に入れて運んだり入れ替えたりしているのだが、袋がなくなったとのこと。次に洗濯物を持って行く時はまた新しい袋に入れて行くからそれを使えばいいでしょと伝える。
次の日も電話。この前私が買って行ったジャンパーが、静電気が発生して気に入らないので新しいのを買って持って来てくれということ。それくらい我慢できないのか。我慢できないほどの、すごい静電気なのかな……。わからん。

また両親の病院のハシゴ。とはいえ、父の病院は面会禁止になっているので、洗濯した下着&タオルや新しく買ったジャンパーを看護師さんに渡して、洗濯するものを看護師さん経由で受け取る。
S病院の病棟のドアは上半分くらいが透明(透明なプラスチック張り)になっているので、父が入口近くまでやって来て、話はできないがドアの内側から手を振ってくる。面会できないため、関わりはその程度である。
母のKM病院では特に面会禁止の措置はなく、いつも通り会える。が、だんだん私もあの状態の母と会うのが苦しくなって来て、病院の駐車場に着いたら車からしばらく出れなくなった。足が進まない。自分で自分を励まして、気合いを入れないと車から出られない……。
今日も母は、「うちはお金がないから、『入院のお金は払えませんからね』って看護師さんに言っといたから」とか、ツヨシくんも狂ってるよとか、もう会いに来ないでとか言っていた。

救いのない日々が続いてはいるが、来週で施設は(候補になりそうな施設は)全部回りきるので、そこでなにか状況は変わるはず。
ようやくあと1週間で、どんな方向にせよ次のステージに進むことができるのだ。
問題は、ドア越しで手を振るくらいの会い方しかできなくなった父と、施設の話をどうやってするかだ。電話では話せるので、電話で話し合うことになるのか……。でも父は携帯電話を持っていないので(精神病棟は持ち込み禁止)、病棟の公衆電話を使って父から私にかけないと、話をすることはできない。ボケている父とは半分以上話が噛み合わないし、かなり無理がある。

45年生きて来て初めて親の施設を探すというタイミングで、父は70年以上生きて来て初めて自分の施設を探されているというタイミングで、コロナが直撃して親子で話もできない事態に陥るという、この負のタイムリーさはなんなんだ。
我々親子は呪われているのか……。


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