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プリンセス・プリンシパル Crown Handler第1章を見た

(プリンセス・プリンシパル本編と、プリンセス・プリンシパル Crown Handler第1章のネタバレや公式パンフレットの内容に加えて、個人的な関係性の解釈を多量に含みます。許してください。)










突然ですがこの文章を読んでいる皆さんにとって、2021年2月11日はどんな日だったでしょうか?

僕にとって2021年2月11日は

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「プリンセス・プリンシパル Crown Handler第1章の公開日」でした。


舞台は19世紀末、巨大な壁で東西に分断されたアルビオン王国の首都ロンドン。
伝統と格式ある名門、クイーンズ・メイフェア校には、5人の少女たちが在籍していた。
彼女たちは女子高校生を隠れ蓑に、スパイ活動を展開。
変装、諜報、潜入、カーチェイス……。
少女たちはそれぞれの能力を活かし、影の世界を飛び回る。
「私たちは何?」
「スパイ。嘘をつく生き物だ」

2018年の続編決定から約3年。
アンジェ役今村彩夏さんの引退によるキャストの変更や、新型コロナウイルスの感染拡大による延期を乗り越えてようやく公開となった本作を観てきました。
何度か劇場に足を運び、日を置くことでようやく感想をまとめることができそうなのでこうして慣れない文章を書いています。




プリンセス・プリンシパルといえば

 上映1回目を見終わった後、何とかネタバレを避けて捻り出したのがこのツイートです。結構同じように感じた方もいらっしゃったようで勝手に親近感を覚えていましたが、これだけで済ませると短すぎるので、何をもって「めちゃくちゃプリンセス・プリンシパル」と感じたのかもう少し言語化していきたいと思います。


 プリンセス・プリンシパルといえば?という問いに対してどう答えるかは人によって変わると思いますが、僕個人としては

①嘘をつくということ
②スパイという立場に身を置く5人と、大きな秘密を抱える2人の関係性
③アクションと「おしゃぐりあい」の共存

の3つが大きいと答えるでしょう。(それぞれの掘り下げは後述します)
 上記のツイートのようにめちゃくちゃ「プリンセス・プリンシパル」だったと感じたのは、約60分という上映時間でこれらの3つの要素を存分に浴びることができたからだと考えています。




①嘘をつくということ

 スパイとは噓をつく生き物だ―――劇中でも語られるように、「嘘」はプリンセス・プリンシパルの非常に大切な構成要素の一つです。嘘の上に成り立つ友達関係や大切な人を思ってこその嘘。種類は違えども様々な嘘が交錯してきたテレビシリーズに引き続き第1章では、侍従長という王国の中枢に近い身分ながらも共和国のスパイというビショップを中心に「嘘をつき続けるとどうなるか?」に焦点が当てられていました。目指す夢のために世界を欺き続けるアンジェたちにとって、第1章からなんと重いテーマであることか…。嘘をつき、すべてを失う中で「望むものが望む形で手に入るとは限らない」という教訓を得たという話は、アンジェたちの行く末を示しているようで不穏な空気を感じざるを得ません。
 また、嘘をつき続けることに疲れ自分すら曖昧になってしまった彼があのような最期を迎えたのも「プリンセス・プリンシパルらしい」と言えるようなほろ苦さを感じさせました。正直途中から薄々予想はしていましたがやっぱり辛いものは辛いですし、何度見てもアンジェの最後の言葉でやりきれない気持ちを抱いてしまいます。


果たして彼女たちは嘘をつき通して世界を変えることが出来るのか、それともビショップの語ったようになってしまうのか。





②スパイという立場に身を置く5人と、大きな秘密を抱える2人の関係性

Ⅰ.チーム白鳩の5人の関係性
 チェンジリング作戦を通じて、共和国・王国・日本というそれぞれの立場での探り合いから始まったチーム白鳩。しかし、テレビシリーズを通してその関係は100%腹の内を見せるまではいかずとも戦友と呼べるような間柄に変化していったのはご存じの通りかと思います。(1話と12話のちせ・ドロシーのやり取りとかいろいろ挙げられますが割愛)
 変化した関係性の中でも、Crown Handler第1章では特に「アンジェと、ちせ・ドロシー・ベアトリスの関係の変化」が描かれた場面が印象的でした。その場面とは、最初にビショップに接触した後の会話です。テレビシリーズ11,12話での革命騒動では誰にも頼ることなく、結果的に暴走しかけてしまったアンジェが(プリンセスに諭されたという点はあっても)事情を説明し、事態の解決を図るという選択をしました。何事も一人で抱え込んでしまう癖のあったアンジェがこの選択肢を取ったことで、心の中にある見えない壁が少しずつ取り払われていること、周囲の力を借りるという成長を感じることができ非常ッッッッに感慨深かったです。


.アンジェとプリンセス、2人の関係性
「シャーロット、約束したはずよ。みんなを頼るって。」

ここすき



まあそれはひとまず置いておくとして。

 プリンセス・プリンシパルという作品において、王女とスリの女の子の入れ替わりという2人だけの秘密を共有しているアンジェとプリンセスの関係性はやはり特別です。
「あの子に王女なんて立場を押し付けてしまった」
「あの子からすべてを奪ってしまった」
というお互いに対する悔恨と贖罪、それを踏まえたうえでの決意を抱き生きてきた2人ですが、当初は

「相手をこれ以上ないほど大切に想っていて生きていてほしいと願っているものの、肝心の相手からも同じように想われていることに無頓着(相手のために自分の命を投げ出す覚悟をしている)」

のような感情の微妙なすれ違いが見えるようでした。しかし、革命騒動を通して

「お互いが支えあい、同じ方向を見据えながら夢を叶えていくことを誓い合う」(公式パンフレットでの橘監督の言葉を借りると「2人の少女が再会し一緒に生きていくことを誓う)

このように考え方や関係性が変化していきました。この変化があったからこそ、これまではプリンセスが任務に関わることを彼女を想って拒否することが多かったアンジェが、素直に「手を貸してもらえないかしら」と助力を乞えたのだと思うと胸が熱くなります。

 一方のプリンセスも、この言葉を聞いて内容も聞かないうちに(もしかすると屋上での逢瀬の時点で聞いていたのかもしれませんが…)満面の笑みで快諾するという反応で、よほどアンジェの力になれることが嬉しいんだろうなあ~~~~~というのがよく伝わってきました。心なしかテレビシリーズの頃よりもアンジェに対する感情が強く見えたのは、彼女により深く踏み込むことが出来るようになった証なんですかね。





③アクションと「おしゃぐりあい」の共存

 突然ですが皆さんは「嘘喰い」という漫画をご存じでしょうか。

嘘喰いとは
迫稔雄による日本の漫画作品。
ギャンブルを題材とした作品で、実在・オリジナルを問わず幅広い種類のギャンブルやゲームが取り上げられ、登場キャラクターが様々な頭脳戦を繰り広げる。一方で、殺人が容認されたギャンブルを勝ち抜き、負けを踏み倒したり勝負から逃れたりしようとする相手を逃がさないための暴力や権力にも重点が置かれており、格闘漫画・アクション漫画としての一面も備えている。

 僕はこの嘘喰いという漫画がとても好きなのですが、それは仕組まれた伏線の回収が鮮やかなのと敵味方問わず魅力的な登場人物が多いこと、そして何より暴と謀——つまりアクションとギャンブルの中での駆け引きが入れ代わり立ち代わり読者を殴りつけてくるからです。ちなみに好きな勝負は迷宮のミノタウロスとエア・ポーカーです。



 急に嘘喰いの話を始めたのは、アクションと駆け引きの共存が僕の好きになる作品の特徴でもあり、プリンセス・プリンシパルにも共通するものだからです。(駆け引き、プリンセス・プリンシパルでいうところの「お洒落な探り合い」こと「おしゃぐりあい」)

 物語の冒頭、綿密に設定が練られたロンドンを舞台にCボールやケイバーライトといったひと匙の「嘘」を混ぜ込むからこその表現が活きる潜入からの要人奪還、カーチェイスの流れは1話と重なる部分もあり「テレビシリーズの続編」として最高の滑り出しだったのではないでしょうか。煙管で陽動するときの足癖の悪い(良い)アンジェ、とても好きです。
 全6章のうちの第1章、物語の始まりということもあり全体的にアクションは抑え目ではありましたが、Cボールを駆使して敵対者を退けるアンジェ、鮮やかな身のこなしで銃弾すら捌くちせ、ドライビングテクニックを存分に見せつけるドロシーというお馴染みの面子の活躍を味わえるのはある種の安心感さえ覚えます。

 アクションに対して「おしゃぐりあい」はどうだったかというと、やはり印象的なのは第1章の要でもあったニューウィンザー離宮でのアンジェとビショップのチェスシーンでしょう。一見チェスに関する思い出話や戦況の話をしているようで、その言葉の裏に見え隠れする探り合いは手に汗握るという表現が不思議と合うような熱を持っていました。そこにノルマンディー公が加わることでおしゃぐりあいは三つ巴となり、誰がどこまで何を知っているのかという緊張感が増すことでより目が離せなくなります。何回見ても好き。特に
「殿下に初めて手ほどきしたときは駒を持つ手もおぼつきませんでした」
「今ではもう一人で戦えます」
「だが裏をかくには経験が浅すぎる」
という一連の会話。たったこれだけの会話に詰め込めるの??ってくらいバチバチのやり取り……
 また、このチェスシーンがおしゃぐりあいだけで終わらないのもプリンセス・プリンシパルがプリンセス・プリンシパルたる所以なのかもしれません。チェスの指し方と対局で稼いだ時間で得たわずかな手がかりからビショップの秘密を暴き、「私の負けだ」と言わしめたのには舌を巻いてしまいます。

 60分という短い時間の中でアクションとおしゃぐりあいがこれだけ(これ以上に)共存しているさまを見せつけられたら、「プリンセス・プリンシパルを見ている」という気持ちを掻き立てられるに決まっています。




一通り書いてみて

長々と「めちゃくちゃプリンセス・プリンシパル」だと感じた理由を3つの要素から考えてみたりしましたが、なかなか文章にするのは難しいということがよくわかりました。
「言いたいことがうまく言葉になんねぇ、声にならねぇ、言いたいことは言葉なんかじゃねえのかもな」
と永遠意光みたいなこと考えながらずっと書いてましたが、嘘があることで時折顔を覗かせる偽りのない感情が際立つのが好きだとかナローボートでのチェスシーンの話、最近ようやく聴いたキャラソン(5 Moving Shadows)の話とかまだまだ書けていない/話したいことも多いので、また機会があれば書きたいと思います。


※永遠意光はこれのこと

(メギド72、おすすめです。)


おわりに

 僕がプリンセス・プリンシパルを初めて見たのは6話くらいまでの無料公開があった時期で、当時はここまで考察したり沼に落ちているような感じはなかったと記憶しています(それでもcase20 Ripper Dipperでウッッッッワと感情になった)。この数年、信頼できるオタクの勧めでアイカツ!を見たりいろいろなジャンルに触れて関係性のオタクになってきているからか、自分の中で数年遅れながらもプリンセス・プリンシパルの火がついてきています。アツい。どれくらい火が付いたかというと、円盤を買って鑑賞会やって翌日映画館に連れていく流れを2回やりました。(ちゃんと諸々の対策はしましたという申し開きも添えておきます。)
急な申し出に応えてくれた友人3人や、各動画サイトの配信で見てくれたフォロワー各位に深い感謝を…。

※これはそのうちのひとりのツイート(載せる許可も貰ってきました)

 この反応を間近で見るのはめちゃめちゃ楽しかったです。


 2章の公開時期は2021年の秋ということが発表されましたが、秋っていつ頃なんですかね。今から楽しみでなりません。この物語の終着点を見届けるまでは頑張って生きていきたい。
 ちなみに僕は根っからのハピエン厨なので、チーム白鳩が誰一人として欠けることなく幸せになれる結末であることを心から祈っています。お願いします。私が望んでいるのは白鳩の安寧だよ…。







蛇足

それはそれとして。
「チーム白鳩、集合~」

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2週目までの特典を揃えることができて僕はとてもハッピーです。
交換してくださった方々、ありがとうございました。

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