重い話3.5

さく6 It's happy Wednesday.

前回までのあらすじ
これは在宅終末看護についての話です。
私の母は半年前に亡くなりましたが、生前は気管支炎拡張症で30年以上闘病してました。病気がわかった時には肋骨を切るほどの大手術が必要でした。しばらくの間は咳、頭痛、軽い腰痛、手術痕の痛みなどで辛い思いをしていましたが、調子の良い時には海外にも行けました。そのうちに酸素吸入が必要になり、さらに在宅酸素を家に置くようになりました。また、膠原病の為にステロイド剤を使うようにもなりました。肋骨が片方削ったのと、何年かステロイド剤を使った為、骨密度の高かった母も、いつの間に骨折を繰り返し起こすようになりました。

2016年の、まだ暑い9月のことです。母は自ら、なんだかおかしいと言って病院に行くことになりました。そもそも30年間、定期的に病院に行っていましたが、お医者さんから決められた日以外に、自分から病院行くと言い出すなんて、と心配しながら付いていくと、案の定入院することになりました。背骨が無くなるような骨折も起きてましたが、肺炎も起こしていました。ちょうど74歳になる頃、高齢とは言えませんが、肺機能が半分失われている74歳です。お医者さんも慎重になってきていました。二ヶ月ほどかかって肺炎が治り、退院となりましたが、その時に初めて在宅看護について、病院の方とお話をしました。
帰ってからも快適に過ごせるよう、市の斡旋があり、専門の在宅介護業者さんを紹介してくれるというのです。介護医療費(介護用品のレンタル等)も年齢や通院歴を考慮して一割負担になるとのことでした。二週間に一度程度、看護士さんの訪問、一ヶ月に一度、介護医療専門の医者の派遣(或いは緊急時には24時間体制の派遣)など、知らなかったことばかりでした。

そもそもが自宅でない場所で寝込みたくない、という当たり前の気持ちを普通以上に感じているのだから、在宅看護ができれば何よりではないかと思うわけですが、毎日でなく定期的とはいえ、知らない人がたくさん家に出入りし、落ち着かない時間を過ごさなくてはならないことに不満がすごくあったようです。しかし、2017年の正月、普段は出ない高熱が出て、また入院するよりはいいでしょうと説得し、訪問看護で来てもらうことになりました。その時間には私は必ず一緒にいることを約束しました。ベッドや車椅子のレンタル、何も掴む場所の無い壁に手すりを取り付けました。訪問看護を受け、看護士さんのひとりや、レンタル会社の方、一番ありがたかったのは、訪問医療の先生と楽しくおしゃべりしていた時です。たくさんの方に支えられて、母と父と私とで丸二ヶ月と一週間、過ごしました。本当に動けなくなってからはとても長い時間のように思っていましたが、このように書くとひどく短い時間です。

最後の日の前々日、訪問医療の先生がいらしてました。彼女は私を呼んで、そろそろかもしれませんと言いました。私はその後用があって、近くのコンビニまで歩きました。その時に長く長くしてきた心の準備をもう一度しようとしました。母を失うという意味では出来ませんでしたが、母が楽になると考えると仕方ないと思いました。その翌日、階段を降りる手段が無い為、介護タクシーを呼んでもらい、病院まで運ばれました。病院に着いてからしばらくすると、母はいろんなことがわからなくなっていて、夕方から明け方まで看護士さんにずっと一緒にいてもらっていたようでした。途中、電話がかかって来たりもしました。長く長く途切れてしまう電話で、でもまだ電話しているという感動がありました。その続きの明け方、突然息苦しそうになったそうで、危篤の呼び出しを受けて病院に行くと、もう亡くなっていました。

今は老人であっても、家の中で人が死ぬと警察が来るという事を聞きました。そういった意味でも、訪問医療の先生の意見はありがたかったです。自分の親が死ぬかもという知らせを、ありがたいだなんて!と思われるかもしれませんが、介護疲れで休みたくてたまらないのに、夜中も起きだす母の面倒を見なくてはならなかった父を思うと、死んだ直後に警察が来てあれやこれやとなったらと思うと、やっぱりありがたかったです。なんにせよ、家で看取るとなると、まだ何かやりようがあったのではないかと思ってしまいます。先生もそのタイミングですぐに来てもらえるかはわかりませんでしたし。。

もっといろんな事があった気がしますが、情報として読者の皆さんに必要なのは、在宅終末看護の制度が市によって様々あるということです。背凭れが動いて起き上がれるようなベッドは買えば高いですし、長く使うかどうかもわかりません。レンタルできたということは私の家族にとって、非常に助けになることでした。
そして私にとっては、たくさんの方に支えられていると知った事が最大の助けになりました。

どうか、私を含め、たくさんの方が在宅終末看護でも最大限自由に快適に過ごせますように。


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