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谷山浩子プロデュース「はみだしっ子(三原順原作)」のイメージアルバムのレビューを書く

サムネは原作者三原順のはみだしっ子1巻の表紙から引用。

※曲のというよりはみだしっ子という作品レビューに近い。
昔書いた記事のリメイク

谷山浩子がプロデュースした、三原順原作の少女漫画「はみだしっ子」のイメージアルバムを思い出して聴いていたので、その感想を書くよ。


はみだしっ子


「はみだしっ子」とは三原順の少女漫画です。グレアム、アンジー、サーニン、マックスの4人の子どもが主人公で、親に捨てられた、または親を捨てた彼らがさまざまな街を放浪しながら自分たちだけで生きてゆく…といった話で、構成が緻密で深い話が多い。同年代の子で知っている人がいないくらい古いんだけど、本当に好きな漫画です。漫画の中で一番好きかも。

この漫画のイメージアルバムは、同じく私の好きなアーティストの谷山浩子がアルバムをプロデュースしていたんですよね。発売されたのがレコードの時代で、何年か前に復刊ドッコムでCDとして復刊されるまではレコードとしてしか存在しませんでした。私が持っているのもヤフオクで手に入れたレコードです。祖父の家に立派なレコードプレイヤーがあったので、それで再生→録音してデジタル化したデータをWALKMANの中に入れていました。

はみだしっ子のレコードアルバム

今回ははみだしっ子のイメージアルバム、「サウンド・コミック・シリーズ はみだしっ子」のレビューを書くよー。


SideA


まずはA面の曲から。
A面は4人とそれぞれのイメージソング集になってます。

キャストは以下の通りで、キテレツとかアラレちゃんとか、小さい頃聞いたことのある声ばかりでしたー。
作詩・作曲、ナレーション:谷山浩子
グレアム:小山茉美
アンジー:藤田淑子
サーニン:間嶋里美
マックス:雪野ゆき

原作:三原順

1、われらはみだしっ子


OPにふさわしい明るめの曲。谷山浩子の「タマで弾き語り」で谷山浩子の歌う「不思議な手紙」というタイトルで収録されています。
たぶんこれは「Part.9 そして門の鍵」のシドニーからの手紙をモチーフに作られた曲。この回で、主人公4人の元に差出人不明の手紙が届きます。親から逃げ回る4人にはこれは不気味なものとして認識されているのですが、曲の中では何か楽しいことを運んできてくれそうな手紙として歌われてますねー。

2、笑い猫(アンジー)


4人の中で2番目に年上のアンジーのイメージソング。
「薔薇の夜 月の夜 ボクの血が騒ぎ出すような」「手招きで 微笑みで ひきつけて ぐっとひきつけて 突き放す 突き落とす 闇の中」という感じに、ちょっと歌詞が黒いのも好き笑。
アンジーは耽美的な服装を好み、おしゃれでこだわりのつよい兄貴分といった感じ。作中最も仲間の為色々と立ち回っていたような気がします。4人の中で一番好きなのがアンジーでした。

3、ボクは鳥だ(サーニン)


これはまさにサーニンの曲です。サーニンは動物が好きで特に鳥や馬が好きなんですよね、サーニンがメインのエピソードで出てくる動物も鳥や馬なんかが多いし、好意を持った自閉症の女の子を「クークー(カッコウ鳥)」なんてあだ名で呼んだりしている。



主人公4人を2人ずつに分けた時、グレアムとマックス、アンジーとサーニンと分けられるのですが、後者の2人はお互いがどん底にいたときにお互いが支えになった経緯がありました。

小児麻痺で片足が不自由なアンジー(本名リフェール)は、ラブ・チャイルド(私生児)で、女優の夢を諦めきれない母親の元で伯母に預けられて過ごし、ついに女優のチャンスを掴んだ母親に捨てられてしまいます。
母親を追いかけるも会場にいた男に浮浪児と間違えられ追い出されてしまう。
そこで失声症になり地下に幽閉されていたサーニンと出会い、一緒に親の元から逃げ出します。その時にアンジーが地下からサーニンを助け出してくれたことや、サーニンがアンジーに言った言葉がお互いに支えになっていました。

それについては「Part.3 だから旗ふるの」「Part.4 雪だるまに雪はふる」で描かれているから省略。

曲は結構シンプルで、最後はただひたすらに「僕は鳥だ」と言っているだけなんだけど、歌詞全体を見てると暗い場所から自由に飛び回る鳥に理想の自分を重ねて見ているような、アンジーと会う前のサーニンのイメージと重なるところもあり、ちょっと切ない、サーニンらしい曲ですね。

4、冬の果実(グレアム)


これは4人の中で最年長の少年、グレアムの曲。歌詞も音もぴったりです。これも「タマで引き語り」の冬の果実 ~グレアム~として収録されていますねー。

最年長で最も真面目で堅物でネガティブなグレアムは、少し自罰的な傾向があるんですね。
仲間がいることによって自分がしっかりしなきゃと気負い、それがストレスにもなるんだけどそれによって生きていけるタイプ。
父親との確執により自ら家を飛び出します。

グレアムはこの曲の歌詞にあるようにかなり自己否定的で自滅的です。この傾向は最終話までついに治らなかった…ような気がする。
だけど、一番のしっかり者で4人のリーダーのグレアムがいたからはみだしっ子は成立したんだよなーとも。ちょっと困ったタイプだけどグレアムも好きです。

デフォルメのグレアムペンギンも可愛い。

グレアムの過去がわかる「Part.5 階段のむこうには」や、父親のいまわに再会する「Part.14 バイバイ行進曲」はかなり印象に残っています。

5、Smile for Me(マックス)


4人の中で最年少の少年、マックスの曲です。
これは可愛らしい曲。「ボクにほほえみを なげてください 通りすがりの 知らない人でも やわらか色の 陽だまりの中 ほほえむのが好きなの」といった感じの歌詞でほんわかしてる。
マックスは他の3人と離れて孤児院に行ってしまう時期があるんですが、前後の成長ぶりが良かったです。4人の中の最年少として、いつもグレアムに甘えるだけだったマックスが、3人と離れ離れになってからは、孤児として微妙な差別的な目に晒されながらも学校に通ったり、仲間と親睦を深めたり喧嘩をしたり…。グレアムとの再会シーンも感動しました。サーニンのと同じくシンプルな曲だけど良い曲。


SideB


次はB面。
こちらはラジオドラマとボーカルなしのテーマソング。ラジオドラマのナレーターは谷山浩子。

1、冬


BGM。冬らしく淋し気な曲で、あまり明るい気持ちにならないですね。はみだしっ子における冬とか雪とかってあまり良い思い出がないので余計にそう思うのかも。


2、ドラマ:“一番大切で簡単な事”



「Part.1 われらはみだしっ子」のダイジェストといった感じのラジオドラマ。大人は一番大切で簡単なことを分かってくれないという話。原作では帰ってこない孫を雪のなか待つおじいさんが出てきたりして、かなりシビアな内容なんだけど、ドラマの方ではそれらが省かれていて、「はみだしっ子でもなんとでも言えばいいさ」と次の街へ向かってゆく、少年漫画の第一話といった感じ。

3、春


BGM。これはまだ明るい。個人的にははみだしっ子アルバムのBGM系はあまり好みではないかも。あまりはみだしっ子という感じもしないし。

4、ドラマ:“だから旗ふるの”


アンジーの回「Part.3 だから旗ふるの」のダイジェスト。アンジーの語りで過去が語られるんだけど、やっぱり原作を知ってから聴いちゃうとなかなか省かれた感が拭えない。幼いながらアンジーの葛藤を描いた漫画は構成やネームが凄く練られてる感じがして最高だったので、余計にそう思うのかも。けど、アンジーの声(キテレツと同じだ―。)で「だから旗ふるの」が聴けて良かった。終わり方も爽やかなので原作でかなり好きな回です。

5、はみだしっ子のテーマ


これはBGMの中で一番好きです。はみだしっ子が街を闊歩するイメージが浮かんでくるような平和的な曲調。



まとめ


はみだしっ子のアルバムは手に入りにくいけれど、谷山浩子ファンとしても、はみだしっ子ファンとしてもオススメしたい作品。
原作も漫画で一番好きかもしれないくらい好きです。



原作は本当に最高なので気になった方はぜひぜひ。ここまで構成がしっかりと計算されつくされている少女漫画なんてなかなかない。どの話も奥深いので、時間のある時にじっくり読むことをお勧めしたいです。
それでは。



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