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もちものけんさ

もちものけんさをします。

かばんをだしてください。

と言われてかばんのなかをごそごそしたら、

ちっちゃい爪切りと、

釘抜地蔵さんの、てのひらに乗るおだるまさんと、

あんまんがでてきた。

ちえと、

ゆうきと、

きぼうですね。 はい、けっこう。

と、問いかけたひとは言った。

さいのうは?

と つづけて聞かれたので、つづけてかばんをごそごそしたら、

かぼちゃがでてきた。

ああ~、

これは草間彌生さんのですね。あなたのを出してください。

半泣きになってごそごそすると、食べかけのしょうゆ豆の袋が出てきた。問いかけびとは、情け容赦なく、それをぽりぽりと食べた。残りはあと8粒くらいになってしまった。

いいでしょう。あなたのはこんなくらいです。

でももりしまさん、きっぷがないわ。

どうします?

えーと、

このまま乗っていたいです。はしっこのほうでいいので。

いいでしょう。

そのあんまんをくれたら、丹波橋まで行けるきっぷとかえてあげますよ。

と、いうわけで

わたしはきぼうと名づけられたあんまんをわたしてしまった。

おなかがすいたらどうしよう。それにわたしは出町柳まで行くのに。

と思っていると、

となりにすわった知らないひとが、しょうゆ豆をほしそうにしている。よせばいいのに、よせばいいのに、

食べます?

と聞いた。

そしたらとなりのひとが、それだけしかないからなあ。とおっしゃった。

そうしてしょうゆ豆の袋にざらざらとこんぺいとうを入れてくれた。

お礼に爪切りをわたすと、となりのひとはたいそうよろこばれた。

あんたからちえをとったらなんにもやくにたたない。まったくやくにたたない。

とぷりぷりおこって、問いかけびとはいつしかわたしの母となって、反対側のとなりにすわっているのである。そうしてわたしのしょうゆ豆をぼりぼり食べている。

ああもうなくなる~。

反対側ではとなりのひとが爪を切っている。足の爪だ。ひどい巻き爪なので、わたしはそれが父だと知った。

こんぺいとうは、しょうゆ豆の中でしょっぱくなっていた。わたしはそのこんぺいとうをおいしいと思った。思いながらだいぶんたべた。

のどが、かわいて、めがさめた。

(2011年4月のブログを移記しています)


深夜にブログを いえ、台本を書いていました。
演劇仲間と上演するための台本です。

きりのいいところまでくると上演台本を パソコンに保存し、すすめられて始めたブログを開いてぼーっとします。
ぼーっとしながら  思いつくまま、何やかやと書きつけてきました。ふりかえると、なにか クールダウンのようなものだったかもしれません。

そんなブログも、片付けをしています。

公演案内のほかに  上のような。。詩のような、夢うらないみたいな〈カケラ〉が、あちこちに フワフワとのこって 心惹かれます。


いま読むと、両親と私の関係そのもの。
可笑しいです。