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英語の前置詞について          (その4 WITH)


                         

                          by SAKURAnoG
 
皆さんこんにちは。今回は前置詞「WITH」について語りたいと思います。【WITH】
「with」の基本的な意味は、意外におもわれるかもしれませんが、「・・・に逆らって」です。(ウィズダム英和辞典第4版 三省堂 2019年、以下「WISDOM」)
(引用)
「原義は『・・・に逆らって(against)』(↓12;→withdraw, withstand)だが、現代英語では「・・・と共に」の意が基本でそこから「携帯して」「(道具として)持って使って」「(状態が)付随して」の意が派生した」(一部省略)
(引用終わり)(WISDOM【WITH】P2270)
なので、「・・・と戦う」は「fight with」とも「fight against」とも言うんですね(「against」の方が意味が強い)。
辞書を読んでいくと、他にもまして「with」にはいろんな意味があることがわかります。
 
「WITH」と言えば、スターウォーズを思い浮かべる人も多いと思います。あのあまりにも有名なフレーズ:「フォースが共にあらんことを!(May the Force be with you!)」ですね。この「May」は疑問文でもないのに主語の前に出てきています。
主節で願望・祈願を表わすこの「may」は、ほとんどが文頭で使用されるという一択のみです。どうして前に出てきたのかというのは、実際のところよくわかっていませんが、おそらく何らかの原因で「倒置」が起き、それが固定されていったのではないかと思われます。
ここでの「with」は、「一緒にいる」という意味だけではなく、「味方をする」というニュアンスを含んでおり(GENIUS【WITH】⑭⦅略式⦆a)同意・協調)、「フォースがあなたの(そばにいて)味方についてくれますように/フォースが(そばにいて)あなたを守ってくれますように」といった感じになります。
スターウォーズから離れて英語の話をすれば、もともとはこの「may」はなくて「The Force be with you!」みたいに言っていました。この「be」は願望・祈願をあらわす仮定法現在で本来従属節で使われたものですが、この「主節(独立した文章)で使われる願望・祈願の接続法現在」は、今でも特定の言い回しに残っています(注1)。
・God bless you! (神の祝福がありますように!)
・God damn you! (こん畜生!)
〔三単現の「s」がついていないことで、仮定法現在(今では動詞の原形と同じ形)であることがわかります〕
 
注1)  従属節に現れる仮定法現在については、筆者のブログ「英語仮定法現在について」をご覧ください。(近日中掲載予定)
 
突然ですが、ここでクエスチョン・タイム!です。次のかっこの中に適切な前置詞を入れてください。
Q1. The dishes belong( )this shelf.  (その皿の置き場所はこの棚の上だ)

〔GENIUS【BELONG】自①P181(ジーニアス英和辞典 第4版 大修館書店2006年、以下「GENIUS」)〕

Q2. The responsibility belongs(  )the individual. (責任は各個人にある)

〔WISDOM【BELONG】自③P186 (ウィズダム英和辞典 第4版 三省堂2003年、以下「WISDOM」)〕

Q3. 次の文の意味は?
・He doesn’t belong.
はい、どうでしょうか? 「belong」は「to」だと思っていませんか?
 
答え合わせをしましょう。
Q1.(ON)Q2.(WITH)Q3. 彼はひととなじめない。

「belong」には、よく知られている「属する(belong to)」という意味のほかに、「本来あるべき場所にある」、「ふさわしい」などの意味があり、この場合次に来る前置詞はその目的語に依存します。つまりQ1では、お皿は棚の上(ON)Q2では、責任は個人にある(WITH)となります。
「belong to/on/with」などと続けて読まずに、「belong」で一回切って読んだ方がいいかもしれませんね。「The dishes belong(これらのお皿の置き場所は )// この棚の上(ON)this shelf.」という感じです。
Q2.は、同じ意味で「The responsibility rests with/on the individual.」とも言います。ここのwith の使い方が、いかにもwithらしくていいですねぇ。
また、Q3. は「なじむ」という意味で使われています。
 
もう一ついきましょう。かっこの中に適切な前置詞を入れてください。
Q4. 「私はその会社で働いている」
・I’m (  ) the company.
・I work(  )the company.
答えは、
・I’m (with) the company.
・I work(for)the company.
です。
〔GENIUS〕には、「with」は「経営に携わっていることを暗示、一般にはfor」(【WITH】⑫P2206)との注意書きがあります。
 
また、「With」で思い出すのは、「Goodbye」(さようなら)ですね。この語源は、16世紀の終わり~17世紀初めに遡るようです。どうして「by」に「e」がついているんでしょうか?というか、もともとこの部分は「by」ではないからです。
「bye」は "God be with you."(神のご加護がありますように)に当たる"God be with ye."の省略形である「godb’w’ye」から発展したもので、「you」の古形「ye」の「e」が残ったものです。「God」の部分は「Good luck!」などからの類推で「Good」になったことのようです。ここでの「with」も上で出てきた例と同じ「味方に付く」といったニュアンスで、「神のご加護がありますように」という感じです。
 
ちなみに、「(God)Bless you!」は、くしゃみをした人におまじないとしてかけてあげる言葉としても使われ、くしゃみをした人は普通「Thank you.」と返します。
 
また、「GENIUS」には、表情と色についても載っています。日本語では「青ざめる」と言いますが、英語では「しろざめる?(もともと白いじゃないか!〔笑〕)なんですね。「怒りで真っ赤」は日英共通のようです。「緑色の嫉妬」はなんとなくわかりますね。(MAYU推しのガオラーさん、本当に本当にごめんなさい。筆者もMAYU大好きです。←何のことかわからない人は、気にせずスルーしてね。)
(引用)
white with fear  blue with cold  red with anger  green with envy
〔GENIUS 【WITH】13[原因・理由]P2206〕
(引用終わり)
また、「with」は「it」と結びついて「with it」となると、「はっきり理解できている」といった意味になります。
(引用)
He wasn’t quite[very]with it. 彼はあまり何が何だかわかっていなかった.

〔GENIUS 【WITH】成句be wíth it(2)〔人の話などが〕はっきり理解できるP2206〕
(引用終わり)
また、「me」とくっつくと「with me」で「(私の言うことが)理解できている」という意味を持ちます。
(引用)
Are you with me so far? ここまで私の言っていることがわかりますか≪♦(1)授業などで用い, Do you follow[understand]me?などとも言う≫
(引用終わり)

〔GENIUS 【WITH】14 b〕⦅略式⦆[通例否定・疑問文で]〈人〉の言うことが理解できて P2206〕
 
「with me」は他にも、例えば、
「I have no money with me. 」だと「今お金の持ち合わせがない」ですね。「with me」がないと「私は(いつも)お金がない」という意味になります。
また、「you」がくっついて
「I’m with you.」だと「そうだね、君の言う通りだね(賛成)/サポートするよ(支援)」といった意味になります(前述‘Goodbye’の項の通り)
それから、「IN」のところでも紹介しましたが「(服を)着ている」というときに「WITH」を付帯状況の意味で使うと、後ろに「ON」(身に着けて)が必要になります。
A man with a black coat on = A man in a black coat
 
他にも「with」の使い方に関して〔GENIUS〕に面白い例が載っています。
(引用)
He scattered the icy road with sand. 彼は凍った道路一面に砂をまいた。
≪♦He scattered sand on the icy road. では砂を一面にまいたかどうか不明≫
〔GENIUS 【WITH】7b)[V A with Bの文型で(中略)≪(2)目的語Aは通例場所を表し、Bが「いっぱいに、一面に」などその場所全体に広がった[全体に影響を与えた]と解釈される≫ P2206〕
(引用終わり)

もう少しわかりやすく言うと、「scatter」という動詞が本来の目的語(sand)ではなく、撒かれた場所(the icy road)を目的語に取ることによって、「scatter」という動詞が「the icy road」(全体)に対して動作を及ぼした、と解釈されるということではないかと思われます。この「the icy road」は「metonymic object (換喩的目的語)」と呼ばれています(Curme SYNTAX 11 2 a. P99 Maruzen Asian Edition 1959, copyright 1931 by D.C. HEATH AND COMPANY, BOSTON, published by MARUZEN COMPANY LIMITED, TOKYO)。
「換喩」というのは聞きなれない言葉ですが、文字通り「比喩的に言い換える」ということ)
です。換喩という表現方法は、言語を問わずたくさんあります。

「With」についてのあれこれ、どうでしたでしょうか? 次回は「英語の前置詞についてその5【For】」です。「For」を「~のために」と思っている方、「危険思想」でタイホされますよ(笑)。乞うご期待!
 
「英語仮定法現在について」はこちら ↓
(近日中に掲載予定)

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