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英語の前置詞について(その1-IN)

英語の前置詞について
( その1 IN )
by SAKURAnoG
 
皆さん、こんにちは。今回は「英語の前置詞について」を語るのですが、まずはQUIZ形式でお話を始めたいと思います。
次の質問に答えてみてください。わからなくても大丈夫です。英語の苦手な方にも読んでいただけるように「あ、この前置詞にこんな意味があったんだ」ということを感じてもらえたら、との思いです。
 
Q1. もっとも適切な前置詞/副詞は、どれでしょうか?
Are we still( )for tonight? (今夜の約束、大丈夫だよね) 〔※1〕
〔1.on 2.in 3.along 4.up 5.with〕
Q2. もっとも適切な前置詞は、どれでしょうか?
She was an angel( )a girl.(彼女は天使のような女の子だった)〔※2〕
〔1.as 2.in 3.of 4.for 5.like〕
Q3. 次の文の意味はどう違うでしょうか? (場所の広さの違いではありません)
1.He is at Oxford.
2.He is in Oxford 〔※3〕
Q4. もっとも適切な前置詞は、どれでしょうか?
She has everything I want( )a wife.(彼女は私が妻に求めるすべての条件を満たしている)〔※4〕
〔1.as 2.in 3.of 4.for 5.to〕
Q5. 次の文はどういう意味でしょうか?
You’ll be in for it when your mother comes home! 〔※5〕
 
どうでしたでしょうか? たかが前置詞、されど前置詞。結構難しいですよね。(注1)
普段は陰に隠れて目立たない存在ですが、実は大事な意味を隠し持っていたり、文全体の意味を支配したりしていることがあるんです。今回はそんな隠れた前置詞の働きについて語ります。
英語が苦手な方は、辞書なんて見るのも嫌だという人も多いと思います。そんな人たちのために、僭越ながら筆者が辞書から見つけた面白い表現を集めてみました。楽しんで読んでいただければ幸いです。
 
英語の前置詞には、「前置詞残留」という面白くてたまらない現象があるんですが、それはまた別の機会に譲りたいと思います。
ちなみに、例文を引用した英和辞書は、主に大修館書店GENIUSジーニアス英和辞典 第4版2006年(以下「GENIUS」)です。他に、
・WISDOMウィズダム英和辞典 第4版2019年三省堂(以下「WISDOM」)
・英和中辞典 第5版 1985年 研究社(以下「英和中辞典」)からも引用させていただきました。
 
(注1)      前置詞は、同形で副詞や形容詞、はたまた接続詞と、文法的にはいろんな品詞に分類されます。この項では品詞には触れずに「IN」という単語として見ていきます(以下同様)。
 
それでは、質問の答え合わせをしましょう。
Q1. 【1.on】Q2.【3.of】Q3.【後記1】Q4.【2.in】Q5.【後記2】
前に戻って見直すのは大変なので、もう一度繰り返しましょう。
Q1.  Are we still(on)for tonight? (今夜の約束、大丈夫だよね)
Q2.  She was an angel(of)a girl.(彼女は天使のような女の子だった)
Q4.  She has everything I want(in)a wife.(彼女は私が妻に求めるすべての条件を満たしている)
(後記1)
1.He is at Oxford. 彼はオックスフォード大学の学生〔職員〕です。
2.He is in Oxford 彼はオックスフォード市に住んでいます。
(後記2)
You’ll be in for it when your mother comes home!
(お母さんが帰って来たらしかられるよ)
 
どうでしたでしょうか? 少し難しかったですよね。
解説に移る前に、2つだけお断りしておきます。これから出てくる文の中には、状況によって意味が変わるものがあります。例えば、This is for you.(君にあげる/君に電話だよ) などです。このコラムでは、いくつかの中から1つの例をピックアップしてお目にかけたとご理解ください。
2つ目は、このコラムのタイトルを「前置詞について」としましたが、実は前置詞の中には同型で副詞(場合によっては形容詞)の働きをするものがあります。上の例でもQ1.「Are we still on」の「on」は「GENIUS」では形容詞に分類しています。後記2「You’ll be in」の「in」は副詞(の叙述的用法)です。このコラムでは、そういったものをひっくるめて扱っています。なので登場する品詞が全部前置詞というわけではありません。まあ、どうでもいいか(笑)
(本当はヲタク的にはどうでもよくなくて・・・これが先に述べた「前置詞残留」にかかわってくるんですけどね)
 
それでは、解説に移ります。個々の解説はそれぞれの前置詞のコラムで説明します。
今回は、まず「in」から始めましょう。
【IN】
「in」の基本的な意味は、「中に/中で」です。動詞によっては「中へ」という移動の意味を含みます。
面白いのは「身に着けて」という意味です。「on」と混同しないようにしましょう。
「Men In Black」というコメディタッチの映画がありましたね。黒い服をきた男たち/黒づくめの奴ら、みたいな感じですね。
(引用)
「You look nice in black.」(君には黒が似合うよ) 〔GENIUS【IN】10 a)[着用]P999〕
「a girl in a fur coat = a girl with a fur coat on」〔同上〕
(引用終わり)
 
この項(【IN】10 a)にはもっと面白い表現も載っていますが、紙面の関係で割愛させていただきます。
 
(引用)
Q4. She has everything I want in a wife.(彼女は私が妻に求めるすべての条件を満たしている)〔GENIUS【IN】16[原因・目的]c)[目的]P999〕
(引用終わり)
ここで「wife」は言ってみれば、パートナーとしての本質・資質を内在している、一般的な「妻」という人を指していると考えられます。「私が妻という「パートナー」に求める、その人に内在する本質・資質のすべて」(everything I want in a wife)「を彼女は持っている」(She has)、という感じでしょうか。
「IN」は、この例のようにその次に来る名詞(「前置詞の目的語」と言います。ここでは主に人)の「資質・能力などが存在する場所、内在する場所」を指す場合に使われることがあります。
(例)I didn't know you had it in you. (君がそんな能力を持っていたとは知らなかったよ)
ここで「it」は先行する特定の名詞がなく、どちらかというと先行する会話の内容・状況を受けた言い方になります。この「it」は「能力・資質」という意味を含んだ「it」で「そんな資質/そんな優れたもの」といった感じです。
 
(引用)
Q5. You’ll be(in)for it when your mother comes home!
(お母さんが帰って来たらしかられるよ)
〔GENIUS【FOR】成句 be fór it = be ín for it⦅略式⦆〔未来形で〕困ったことになる:叱られるP773〕
(引用終わり)
ですが、これは筆者にもよくわかりません(笑)。これでそんな意味だと丸暗記するしかない・・・と言っては元も子もないので、間違っているかもしれませんが、「たぶんこうなんじゃないか劇場」聞いてください。
この文章は英国では「in」が省略されることからも「for it」の方に「叱られる」の意味があると思われます。ちなみに「be in for」で「〈困難・悪天候など〉にあいそうである、〈ショックなど〉を受けることになる」[GENIUS【IN】副 be ín for P1000] という意味です。
(引用)「We are ín for ràin. 雨にあいそうだ」(=It is going to rain.)(引用終わり)
ここでの「in」は「これから自分が(その中に入って)経験する、身に及ぶ/降りかかる」という感じでしょうか。
そして「in for」の「for」は・・・わかりません(泣)! わかりませんが、たぶんですが、「for」の原義である「・・・の前に(beFORE)、に向かう(FORward)」といった方向性(この場合は、時間的方向性)を示しているのではないか、と思います。つまり「in for」で「・・・の方向に向かって自分が被(こうむ)ろうとしている/自分の身に及ぼうとしている」ということではないかと思われます。現在形で未来を表わす面白い表現ですね・・・前置詞おそるべし! 
そして、面白いのが「it」です。これは何を指しているんでしょうか? この「it」は先行する特定の名詞がなく、暗黙の意味として「お叱り・大目玉」の意味を持っていると思われます。
平沢慎也先生は、その著書「実例が語る前置詞」(くろしお出版2021年)の中で次のように述べられています。
「have it in for sb(=somebody筆者注)のit は『大目玉・罰・叱ること・叱られること』などの意味を担っていると考えられますが、これも以下の例にあるようにget itや be in for it, give it to sbなどいくつかの言い回しに現れる意味で、have it in for sb に限定されるものではありません。」(注6)
詳しくはぜひ本を手に取って読んでみてください。ちなみに、ここに出てくる「for」については、平沢先生はこの本の中で「相対的未来における経験主体を導く for」(ibid.)と位置付けておられます。
 
もう一つ抑えておきたい表現に「have it in for」があります。
(引用)
「I think she has it in for me. (彼女はぼくに恨みをもっているようだ)」
〔GENIUS【IN】Hàve[have gòt]it ín for O ⦅略式⦆〈人に〉復讐しようと思っている、・・・に悪意を持っているP1000]
(引用終わり)
ここでは「it」は何か恨み・つらみのようなものを含意していると思われます。「in」は「inside」または「in him/her」(自分の中に)。そして「for me」の「for」ですが、これも主語(「she」)の心的方向性/対象を示す「for」と解釈でき、「私という対象に向けて」という感じだと思うのですが、少なくともこの「for」が「~のために」とは真逆の意味(≒against)を持っているということに留意してください。
 
最後に、せっかくなので「in」の用例と「in」のお友達「into」を補足としてつけておきます。「補足」ではなく「蛇足」かもしれませんが(笑)。
 
・I’m in. (参加します。その話乗った)
・I’m into you.(君にぞっこん)
です。
 
英語の前置詞について(その2)は、「on」についてです。 Q1.と「迷惑のon」その他について語ります。 乞うご期待(近日中掲載予定)。
 
※1:GENIUS 【ON】形2叙述〈事が〉予定[計画]されている「We’re still on for tonight.(今夜の約束に変更はない)We don’t have anything on this weekend. (今週末は何も予定はありません) 」より筆者改変 P1360
 
※2:She was an angel of a girl(=a girl like an angel)(天使のような女の子)[英文法解説 江川泰一郎 金子書房 改訂3版1991 §277.Of―2(5)同格関係]
 
※3:GENIUS【AT】3 所属、および同語法(3)P122
※4:GENIUS【IN】16[原因・目的]c)[目的]P999
※5:GENIUS 【FOR】〈be fór it = be ín for it〉 ⦅略式⦆[未来形で]⦅♦ inの省略は主に英 ⦆P773
※6:平沢慎也「実例が語る前置詞」(くろしお出版2021年)Part Ⅱ―第10章 for, PP191-192)

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