どうして『日本人は「YES」と「No」がはっきりしない!』といわれるのでしょうか?
こんにちは。SAKURAnoG です。英語の楽しさ、奥深さを発信する「英語のトリビア」を投稿しています。今回は、標題の言葉について、なぜそう言われるのか、そう言われないためには、どうしたらいいのかについて、考えてみました。
よく言われるのが、日米の言葉の違いや社会システムの違いです。
つまり、「結論をなかなか言わないから」、とか「オブラートに包んだような言い方をするから」だったりとか、ビジネスでの交渉時、日本サイドの責任者は全てを任されていない場合があるため、「持ち帰って上司と相談して、ご返事します」としか言えない、とかです。
しかし、僕は「Yes」と「No」がはっきりしない、と言われるのは、もっと違うところに原因があるのではないかと思っています。
その1.日常会話編 ‘Yes’ ‘No’ を正確に答えられない
衝撃的な見出しですが、どういうことなんでしょうか?
実はこれ、英語あるあるなんですね。やったことのある人はわかる失敗談ですが、「そうかなぁ」と思った人は、本当は気がついていないだけかもしれませんよ。
次の会話を聞いてください。理屈ではわかっていても、実際にその場にいると、ついやってしまうことの代表例と言っていいのかもしれません。
(日本人)
ー‘I’ve been swamped with work these days.’
(アメリカ人)
ー ‘Oh, then, you’ve got no time to go driving.’
ー‘Yes.’
ー ‘So, how often do you go for a drive?’
ー ‘No, I’ve got no time.’
ー ‘Do you go out or you don’t ?’
ー‘I don’t’.
ー‘So, you don’t drive on Sundays.’
ー‘Yes.
「」が英米人の頭の中(丸カッコ内は日本人の頭の中):
「最近、仕事が忙しくって」
ー「じゃあ、ドライブする時間とか、取れないんですね?」
「しますよ」 (ええ、そうなんです。)
ー「よく車で出かけたりするんですか?」
「いや、時間がなくて出来ないんです。」
ー「え?ドライブするんですか、しないんですか?」
「しないです」
ー「日曜日に、運転とかはなさらないんですね?」
「いや、します」(ええ、しません)
これでは、何を言いたいのか、もう話になりませんね。これ、わかっていても、ついやってしまうことが多いんですよ。
【説明】
日本語は、「相手」の言ったことに対して、「そのとおり」か「そうではない」かを、答えます。英語の「That’s right」に近い感じですね。
ところが、英語は相手の質問に対して、「自分が」そうなのか、そうでないのか、を答えるのです。
例文は、最後 ‘No, I don’t’. (はい、しません)が正解。
【ひとことアドバイス】
1. 疑問文(「~するんですか?」)も否定疑問文(「~しないんですか?」)も、
運転するときは’Yes’、しない時は’No’で答えます。
2. Yesとnot (或いはそれに類する言葉) は共存しない=Yesの後にnotは来ないことを 覚えましょう(=Yes, I don’t. とは言わない)
3. 否定疑問文に答えるときは、必ず、主語・述語を付けて答えるようにするといいですね。‘Yes’や‘No’だけでなく、‘Yes, I do.’ ‘No, I don’t.’ と答える癖を付ければ、うっかり反対のことを言ってしまうことを、避けられるかもしれません。
その2.ビジネス編 断るための言葉と思考回路の逆転
【事例】
「この案件はリスクの割にはリターンも大きくて、大変興味があります。お引き受けしたいのは山々なんですけれども、実は予算が取れなくて・・・」
‘I’m very interested in this project as it is promising a good return for all the risks it may involve. Well, I would like to accept your offer, but I couldn’t get enough budget ・・・’
実は、日本語を英語に訳すときは言葉だけを翻訳するのではなく、思考回路も翻訳する必要があるのです。どういうことかというと、日本語は結論を最後に持ってくるので、「この案件やりたいんですが・・・」と言われても最後の結論を聞くまでは、何を言いたいのかはわかりません。だから、「やりたいんですが」と言われても、本当にやりたいのかどうかは、わかりません。そしてそのことを、話者も聞き手も暗黙のうちに了解しているのです。
ところが、英語は結論が最初に来ます。つまり、最初に‘I would like to ~’ と言えば、それは、もう「やります」と言ったことになります。あとから、いくら言葉を付け足しても、この「やります」といった結論は、覆りません。これは、そういった言い方をする場合が多い、とか言うのではなく、思考回路がそうなっていて、欧米人はそのようにいえば、そのように理解するといった頭の構造(暗黙の了解)になっているのです。
従って、最初に ‘I would like to accept your offer.’という回答を聞いた瞬間、相手は、「受けてくれるんだ」と受け取るのです。
これは、筆者の体験に基づいて、書いているのですが、実際上司が「I would like to accept」と言った瞬間、これを聞いた相手方(米国人)は、急に眼を輝かせて、「Oh, thank you, 〇〇san」と言い始めました。上司はあわてて「but, but, but」と「but」を10回ぐらい繰り返して、受けることができないことを何とか分かってもらえました。
C. 相手に配慮しつつも断りたいとき
1.なぜ、このような誤解が生じるのでしょうか?
‘I would like to ~’ は、「やりたいんですが・・・」というよりも「~をやりたいです」に近い意味になります。
最初から‘I’m sorry, but we can’t accept your offer.’とストレートに言えば、少なくとも誤解されることはないのですが、これでは無愛想すぎます。これは、このようなシーンに適切な断りの言葉を知らないことに原因があるのではないかと思います。
さて、上記の例文のような誤解を招かずに、また相手の気分をあまり害さずに断りの言葉を言いたいのですが、どう言えばよいのでしょうか?
2.適切な断りの言葉とは
英語には、出来ないときに「出来ればやりたいんだけど、出来ない」ことを伝えるための特別な言いかたがあります。学校の英文法で習う「仮定法過去」(現実とは異なる夢や願望を表す表現)がそれです。「やりたいけど出来ない」ことを伝えるためには、「やりたい」の部分を仮定法過去で表現すれば良いのです。
正解は、’I wish I could.’ (accept your offer) です。これが、「出来たらいいんですけど(実際にはできません)・・・」の英語的表現です。これであれば、相手に誤解を与えることもなく、また心象を害することもなく、はっきりと断りの意思を伝えることが出来ます。
では、また
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