本日の一曲 vol.76 バッハ ゴルトベルク変奏曲 (1741, cf. Wanda Landowska & Glenn Gould)
「バッハが音楽を手ほどきしたヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクが不眠症に悩むヘルマン・カール・フォン・カイザーリンク伯爵のためにこの曲を演奏したという逸話から『ゴルトベルク変奏曲』の俗称で知られている」(日本語版Wikipedia)という曲です。
この逸話の信憑性は疑われているようですが、確かに、この曲の冒頭のアリアをグレン・グールドさんが晩年の1981年の録音で弾いたように弾けば眠くなるかもしれません。しかし、変奏が進んでいくに連れ、目が覚めるような音型がつぎつぎと紡ぎ出されてくるので、とてもとても不眠症の人のために弾くような曲だとは思えません。
ただ、ピアノの時代になってからは、あまり演奏されなくなったようでしたが、1933年にチェンバリストだったワンダ・ランドフスカさんがチェンバロでこの曲を録音してから、また演奏されるようになったそうです。
そこへ、弱冠23歳だったグレン・グールドさんがデビュー・アルバムとして、レコード会社の反対を押し切って、ゴルトベルク変奏曲を前年の1955年6月に録音して、翌1956年1月にリリースし、これがクラシックのレコードしては大ヒットになったのでした。
グールドさんの昔の録音についても、CMRRチャンネルの方に音源があがっており、この1955年の録音といっしょに、1959年のライブ録音もいっしょになっています。こちらのライブ録音は、グールドさんの生前は公表されていなかったようなので、初めて聴く方もいらっしゃるかと思います。それぞれ、まさに才気煥発な演奏だと思います。
グールドさんは、亡くなる直前の1981年にもこの曲を録音しましたが、こちらの録音は、ジョナサン・デミ監督の映画「羊たちの沈黙」でアンソニー・ホプキンスさんが演じるレクター博士の愛聴盤として登場します。また、ラース・フォン・トリアー監督の「ハウス・ジャック・ビルト」でも使われていたと思いますが、こちらの録音は、サイコパスのテーマソングのようですね。
(by R)