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[地球一周155〜164日目] 白夜〜White night〜


https://youtu.be/EeNw3vrkFro

https://youtu.be/6ccHmMP-_pY

https://youtu.be/weJs2KmYRmc

https://youtu.be/t7ODLmMzJbQ

稜線が南米はくっきり見える。南の果てから帰ってきて2日が経ち、やっと波に揺られる感覚から解放されて山から窓に吹きすさぶ風音を聞いている。

南極へはチリ・プンタアレナスから向かった。太平洋と大西洋を繋ぐ世界最悪の荒波といわれる「ドレーク海峡」を飛行機から見下ろす。ホテルの窓枠がきしむ程の風が作り出す無数の白波が踊り狂っている。
長袖と靴下を2枚着て、手袋とニット帽とゴムブーツを履いてパルカを羽織る。まるでホッキョクグマのような気分でキングジョージ島に降り立ち、大陸西部の南極半島へ船で向かう。

説明会を聞いていると、「外にクジラがいる」と多くの大人達が立ち上がり窓に集まりはじめた。学生時代をふと思い出して、筋肉痛が2日後に来るようになった身体だけが時を告げてくれる気がする。
見渡す限り青と白の世界。寒くて-2度、暖かくて7度という真夏。何十万年も前から降り積もった雪から出来た氷山がある。平均で氷の厚さは約2500mあるらしい。雪や氷は見たことがないほど澄んでいる。ペンギンは犬や猫のように歩き回っている。尿やフンの刺激臭が漂う中、ジェンツーペンギンはサクサクと白雪を一歩ずつ踏みしめていく。羽毛をむしりとるかのような突風から卵を守り温める姿を見つめる。
ヒゲペンギンはちょっとぶつかっただけで小突きあったり、雪に足を取られて滑ったりしている。ここに住んでるペンギン達でさえそうなのだから、尻餅をついてしまうのは当然か。

白夜で陽の落ちない日が続いていると、そして小さい頃から見てきた海の表情と何だか違うから何だか落ち着かない。友達になれるような身近な感じではなく、触れても何だか他人行儀だ。
少しずつ氷山から離れていって地肌が見える雪山が見えてきて、他の船が見えてきた頃に、いつもの海の色合いが感じられて安心する。
雪の地平線を最後のお土産にして、地元の沿岸線に似ているプンタアレナスに戻ると真夏のクリスマスツリーが飾られていた。
たまに波の音とそれに揺られる氷塊の音だけがそこにあった南極。ただ今、ここに生きているのだなと静かに思えた。

本日の音楽:上原ひろみ「Blackbird」
喉奥に 叫びをこめる ペンギンと

ひとりの人間の真摯な仕事は  おもいもかけない遠いところで  小さな小さな渦巻きをつくる           「小さな渦巻き」茨城のりこ