[地球一周117〜121日目]紀元前からの味
約140年の歴史があるローマ歌劇場にて行われていた「ジゼル」。悲劇ではあるが、詩的なバレエ。始まるまでの音合わせから高い技術力が伺える。
指揮者が出てきた時に大体のオーケストラの雰囲気は分かるように思う。コンサートが始まる時、観客とのファーストコンタクトは指揮者のお辞儀だ。丁寧に深く頭が下げられ、客席を見渡す。その後オーケストラへ向き合い、端々まで笑顔で目を合わせる。息を吸う音から指揮が始まり、プリンセスがお辞儀をする時のドレスのように幕は上がっていった。
物語の内容は全く知らなかったが、建物、森の風景など大切に使われている舞台セットだと感じる。本物の犬が出てきたり、重力が他の人より少ないんじゃないかと思うプリンシパル、またその周りを彩る華やかなダンサーたち。
音楽の存在すら忘れるほど物語の中に入り込む感覚は、3歳のときにディズニーランドで見た「ファンタズミック!」を思い出す。
私の中では今回の旅で見たどの演劇よりも、ここが一番だった。
ベネチア広場前のアルターレ・デッラ・パトリア。兵士たちが炎の祭壇の中央で何を守ってるのだろう、と調べたら「燃える火の祭壇または永遠の炎。イタリアの初代国王ヴィットリオ エマヌエル 2 世とローマの第一次世界大戦の兵士を称える祖国の祭壇」と訳されていた。常に燃え続ける火は沖縄の「平和の火」、広島の「平和の灯」、長崎の「誓いの火」と通じるものを感じる。壁に彫られたZARAという名前は第二次世界大戦で沈没したイタリア海軍の重巡洋艦のことだそうだ。
バチカン美術館からシスティーナ礼拝堂を抜けて、サン・ピエトロ大聖堂前の広場を横切る。イタリアの空気はどこにいても何となく、キリスト教の雰囲気が漂う。コロンナ宮殿には教皇関係の戦いで、約200年前のローマ侵攻の時にジャニコロの丘から放たれた砲弾が残っている。
ローマの休日に出てきたジェラートは「ジョリッティ」というお店のものらしい。ピッコロ(スモール)は3ユーロで500円にも満たないのに、2種類のアイスに生クリームトッピングまでついている。コーンに対しての比率が明らかにおかしい盛り具合に手はデロデロになったが、メソポタミア文明から食べられていた歴史はパンテオンと同じ迫力があった。
今日の音楽: アドルフ・アダン「ジゼル」
パンテオン 石畳染み ジェラート
ひとりの人間の真摯な仕事は おもいもかけない遠いところで 小さな小さな渦巻きをつくる 「小さな渦巻き」茨城のりこ