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[地球一周135〜141日目]たくましい強かさ


ペルー・リマのホルへチャベス空港の出口から、「タクシー、タクシー?」と大声とクラクションが聞こえる。NYのブロードウェイ前で待ってた自転車タクシーを思い出し、危機迫ってる気がして少し怖い。
夜中着だったため、すぐ近くの徒歩で行けるホテルで身体を休める。24時間稼働の空港は朝の4時頃以外は、クラクションと飛行機の音が絶えず鳴り響いている。

リマ(標高0m)からクスコのアレハンドロ・ベラスコ・アステテ空港 (3400m)へ。2500mを超えてくると高山病の症状が出てくるらしい。飛行機内でパルスオキシメーターとにらめっこしながら、酸素濃度が低くなれば深呼吸してコカキャンディーを舐める。人生で一番揺れた機内はタワー・オブ・テラーを超える恐怖を与えてくれた。
高山病の症状が出るまでに何時間かはかかる。車で約1時間半ほどの聖なる谷・オリャンタイタンボ(2800m)に向かいたくて、移動手段を考える。
目があったタクシー運転手に促されて乗ってみたが、値段交渉が必要だ。乗ってしまったが最後、相手の方が立場が上になってしまうのだと人質のような気持ちになり気づく。倍の値段をふっかけられてると分かるのだが、キャンセルしたいと伝えると「空港の入場料を払え」と10ドルを支払わされたのだった。
そうか、こんな感じかと配車アプリの「Cabify」を使う。これであれば最初から値段が決まっているしアプリ内で支払いが成立する。しかし乗った時に「とても遠い距離だからガソリン代が必要なんだ」と寂しい顔で伝えられたためアプリをキャンセルして、結局は倍の値段を現金で支払うことになった。
ドライバーのテクニックと愛嬌と途中で軽い観光ガイドをしてくれたからチップ代だと思おうと、高山病への不安に疲れた脳と身体は納得した。

このミニオンっぽいたくましさが眩しく見える。崖にあるホテルが見える場所にドライバーが少し停めてくれた時、5歳ぐらいの物売りの可愛らしい女の子がいた。最初は笑顔で近づいてきていたが、私が何も買わないのだと気づくとダメか〜とばかりに、あくびをしながら頭をかいていた。タクシーのドアを開けてくれて、手を振り返してくれたあの子も強かに生きていくのだろう。

オリャンタイタンボは、段々畑のような遺跡のある急峻な山に囲まれた風の谷だ。かつては、インカ帝国で全土に張り巡らされていた「インカ道」の中継地にある旅籠(タンボ)だった。皇帝の娘に恋をしたオリャンタイ将軍の名前がつく物語的な雰囲気は町全体に流れている。
タクシーと同じく値段のない商店のポテチや水やチョコレートは、全て砂のザラザラをまとっている。「クスコークスコー」と呼ぶ声や、犬や車や人の行き交う昼間。夕方は広場でディスコの爆音が聞こえる若さがみなぎっている。夜は満天の星空の下で静まり返り、夜明けを鳥の鳴き声や狼の遠吠えが告げる。

今日の音楽:ファレル・ウィリアムズ「HAPPY」
バナナさえ あれば幸せ ミニオンや

ひとりの人間の真摯な仕事は  おもいもかけない遠いところで  小さな小さな渦巻きをつくる           「小さな渦巻き」茨城のりこ