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[地球一周84〜86日目]雨音と


ドイツ・ベルリンに着いたけれど、列車をどこから乗ればよいか聞ける人がいない・・・。何となく観光客についていったがどうも違うようで、バスの運転手さんに最初にいた場所を指さされる。
どうやら巡回していたスタッフさんにホーム番号を教えてもらって、ようやく見つけた。
しかし切符を買おうにも、何だか操作がよく分からずこれもスタッフさんに教えてもらいながら。
隣の機械に切符を差し込んで、日付印を押すようだ。

そして列車に乗り込んだ途端、全部がドイツ語のアナウンス&掲示板。Hbfって何だよ・・・と思ってたら周りの乗客のおしゃべりで、どうやら行き先の中央駅だとのことで、そこで降りる。めちゃ高い列車の段差を鉛のような荷物と共に乗り越える。
着いた途端に、北海道?かと日本に帰ってきたかのような錯覚に。ゴミが落ちてない綺麗な道を路面電車が通り抜ける。今日は偶然公共交通機関が無料日だったので、来た電車に飛び乗った。

ベルリンの壁を見に来たくての一泊。鉄の棒があって何本も連続して並んでいる、これは何だろう・・・と思っていたら、これが昔の壁だったのだ。壁があった場所の道には線が引かれ、かつての地名が刻まれている。壁自体が残ってる場所を見て、監視台を見て、穴から向こう側の壁を覗く。たった数歩、数メートル、数秒の距離。この間で沢山の自由が命が奪われた歴史が確実に存在したのだ。
だいぶ気持ちが落ち込んでいたものの、ブランデンブルク門を見に行こうと歩き出す。地下鉄に向かうと、何だか暗い。そして改札がない。
路面電車に乗る時も思ったが、チケットは事前にアプリで買うか、車内の自動券売機で買うかでチェックをする人や機械がない。
調べてみると、2時間以内は乗り換えが自由で、時たま抜き打ち検査の人が来るらしい。面白いなぁ・・・。

ただ、地下鉄は地上の雰囲気と180度違う。もちろん乗客はいるのだが、テレビで見てきた怖いドイツの時代を私は思い出した。何だか逃げられなくなりそうな、もう出られなくなりそうな灰色の時間の5分に精神をひどく消耗した。
出口の太陽の明かりに安心しつつ、近くに見えるブランデンブルク門の方向に向かったが、あちらには行きたくないと心が拒否反応を示したので、観光を終えた。

その後はミュンヘンへ移動。4時間ほどの新幹線のような乗り物で移動だが、もちろんここもチケット確認はなかった。
ビール瓶のぶつかる音が車内では聞こえる。瓶を買って席に持ち帰る大人たちを何度も見かけた。

ツアーに参加するのは4カ国目になるのだが、今回は丁寧な説明がすさまじかった。車内で1時間、城に入るまでに30分。帰りのバスで30分。みっちりとこの地域とお城の歴史を教えてくれた。ただ、英語の理解が追いついてなかったけれど。
ノイシュヴァンシュタイン城は、その美しい見た目の裏にミステリーがある。ルートヴィヒ2世が王室の借金を重ねた上での建設を命じた理想の城。最終的に廃位となったため、実際にこの城に居住したのは約半年となるのだが、その後に湖で謎の死を遂げたのだという。
ツアースタッフはこの部分が説明で一番盛り上がっていたなぁ・・・。
霧がかった城を見ながら、確かに明るい雰囲気はしないなと思う。バスまで戻る道中、時たま馬車が通って、獣と糞の匂いを森の中で感じる。
久々に自然だ、と雨の音を聞きながら、馬の落とし物をよけながら歩いた。

今日の音楽:有坂美香「月迷風影」
灰色と 霧と緑に 包まれて


ひとりの人間の真摯な仕事は  おもいもかけない遠いところで  小さな小さな渦巻きをつくる           「小さな渦巻き」茨城のりこ