中国の詩、「春晩(武陵春)」李清照

「春晩(武陵春)」李清照

風住尘香花已尽
日晩倦梳头
物是人非事事休
欲语泪先流
闻说双溪春尚好
也擬拟泛轻舟
只恐双溪舴艋舟
载不动许多愁


風住み 塵香りて 花すでにつき
日たかくして 倦みながら頭を梳く
物は是なるも 人は 非にして 事事休し
語らんと欲して 涙先に流る
聞くならく 双渓 春尚ほ好く
也た擬して 輕舟を泛ばすと
只だ恐る 双渓の小舟
載せて動かせず 許多の愁ひ


(私の不正確な訳)
風は止み、塵に香りが移り、花はすでに散ってしまった
日が高くなってから、ようやく始める身繕いは物憂いものだ
自然は変わらないけれど、人の世には変化があって私のすべては終わった
何か話そうと思うと、言葉より先に涙が出てしまう
噂では、双渓の春はなかなか良いらしい
小舟を浮かべて船遊びをしたいけれど
ただ恐いのは、双渓の小舟に乗せても、動かせないことだ
あまりにも大きなわたしの悲しみのせいで


(解説引用)
「武陵」は、戦乱を逃れた人が移り住んだ地。難を逃れた別世界の代名詞。
李清照が夫と死別し、二番目の夫とも別れた時期の作品。1135年。53歳。
国が滅び、家が没落し、文化的遺物が失われ、異国の地で貧しく孤独な暮らしをしていた。宋も北方の金と抗争しており、政情不安もあった。


解説には、韻を踏んでいる技術や美しさの説明がありました。そこはわたしにはわからないんだな…。

中国の本にも、日本のウェブサイトにも、複数の別の詩人の作品を引用し、それぞれの違いや、影響を与えたり与えられたりしている部分についての解説がありました。

わたしが好きなのは、「自然」と「人の世」の対比によって、個人的なことから普遍の真理を語っているところ。
「塵に香りが移る」という表現が持つ、感受性の豊かさです。

「春晩」というタイトルで添翼さんが歌っている詩です🎤

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