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ロンウェル百合学園

7月某日――

わたしは家庭の事情で学校を転校しなければならなくなった。父の友人が新しい家の近くの学校の理事長と友人だということで、特別に無試験でこのロンウェル百合学園に通えることとなった。

ロンウェル百合学園は女子校で、世界トップレベルにかわいい女の子達が集まっているらしい。わたしの存在など吹けば消えてしまうかもしれない。うまく馴染めるだろうか…。

1話 ロンウェル

そんな不安とともにわたしは教室の中に入った。本来なら大きな声で「こんばんは!」と挨拶して入るべきなのだろうが、緊張のあまり声を出せない。そそくさと教卓に置かれている座席表を頼りに自分の席に座った。

見られている……。転校生はやはり珍しいのだろう。みんなが見ている。ど…どうしよう…。

???「こんばんは!転校生さん!」

「ひゃい!」

いきなり話をかけられて変な声が出てしまった。

ロンウェル「私はロンウェル。あなたの名前はなんていうの?」

「わたしは……」

生徒A「あー!陛下、また女の子をたぶらかしてる~!」
生徒B「転校生さん、陛下にプラベに誘われてもついていっちゃダメだよ~!」

ロンウェル「そ…そんなことしてないよー!あと陛下って言わないで~!」

ロンウェル……この学園の名前だ。そういえばこの学園の理事長の娘さんもこの学校に通っているらしい。この子がそうなのか。

ロンウェル「みんなふざけて陛下って言ってるだけだからね!ふつうにロンウェルって呼んでくれていいからね!」

「はい!ロンウェルさん、よろしくお願いします!ところで、なにか御用ですか?」

ロンウェル「転校生さん、すごく緊張してそうだったから話しかけてみたの。迷惑だったかな」

「いえ!わたしもこういうときどうしたらいいのかわからなかったので話しかけてくれて嬉しいです!ところでなんで陛下って呼ばれているんですか?」

ロンウェル「なんかみんながこの学校のことを『ロンウェル百合帝国』って呼んでて、私が皇帝らしい…」

「慕われているんですね」

ロンウェル「みんなふざけてばっかり!でもみんな優しいから適当にどんどん話しかけに行っていいと思うよ!あと、金曜日にみんなで集まってたりするから、そこにもおいで」

ロンウェルさんはとっても面倒見が良い。初対面のわたしにもなんのためらいもなく話しかけに来てくれて、コミュ力高い…。クラスの人気者って感じ。めちゃくちゃかわいいしすごい。

2話 アイドル

???「おはムク、こんムク、ムクニウム~💕」

生徒たち「おはよ~!ムクちゃん久しぶり!」

「ロンウェルさん、あちらのすごくピンクで輝いている方は誰ですか?」

ロンウェル「ムクさんのこと?私の古い友だちで、アイドル活動やってる子だよ」

ムク「あ、その子が噂の転校生?大丈夫?ロンウェルさんに口説かれなかった?」

ロンウェル「ムクさんまでそういうこと言うの!?」

「ムクさんって言うんですね。アイドル活動やってるってすごくないですか…」

ムク「うん、今はまだそこまで売れてないけど、CD出したりグッズ出したりしたいな~って思ってるんだ!」

「ムクさん……そういえばどこかで見た覚えがあります!動画がSNSで流れてきました!」

ムク「そう!最近そういうこと増えてきてて、初対面の人でも『どこかでみたことがある』って言われるようになったの!」

「でも学校通いながらアイドル活動って大変でしょう。この学校、アルバイトとか禁止じゃありませんでしたっけ?」

ムク「そこはロンウェル陛下のお力添えで…。理事長先生に交渉してもらって、定期テストで赤点とらなければアイドル活動認められているの」

「交渉って…さすが陛下…」

ロンウェル「だから陛下じゃないって!」

「ムクニウムってなんですか?」

ムク「ムクニウムは私の身体から放出されている物質で、摂取すると幸せになる効果があるらしいです。ロンウェルさんはムクニウムを使ってなにかしようとしているみたいだけど…」

???「ムクニウムの過剰摂取は禁物だぞ」

ロンウェル・ムク「アリス先生!」

アリス先生「ムクニウムは未知の物質だから、下手に扱うと大変なことになる。この前のロンウェルさんみたいに

ロンウェル「やめてぇぇぇぇ…!!!」

アリス先生「ムクニウムは用法用量を守って使うんだぞ」

一同「はーい」

3話 優等生

???「これをこうすると…眼鏡がパリーンって…」

「なにあれ!おもしろい!」

ロンウェル「ああ、しぐまるさんね。しぐまるさんは理系科目が得意でいろいろなものを作っては見せてくれるよ。このクラスの学級委員長もやってる」

しぐまる「あ、転校生さん、どうもしぐまるです」

しぐまるは首が骨折した状態で挨拶をした。

ロンウェル「しぐまるさん、挨拶代わりになにか見せてあげてよ」

しぐまる「それじゃあ、『どこでもアイドル』をお見せしましょう」

そういうと、しぐまるは光りに包まれ、足先から衣装が変わっていった。つい先程まで制服だったのに、今はアイドル衣装になっている…。これは発明では…?

「すごすぎる…」

ロンウェル「ムクさんもこれ作ってもらって、アイドル活動で使ってるみたいだよ」

「実用性高ッ!」

しぐまる「他にも空中にハートを出したりできます」

「かわいい!」

ロンウェル「アリス先生となんか技術的な話を良くしてるよ。わからないことがあったらしぐまるさんに聞いたらたいていのことは解決すると思う!」

「かわいくて秀才…すごい…」

しぐまる「いや~、エンジニアにとってここは最高の遊び場なので…」

「なにか困ったら相談させてもらいますね!」

1部・完

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